あらすじ
《「#生涯子供なし」…なぜ日本は無子化・少子化のトップランナーとなったのか。SNS上で大きな反響を呼んだ特報を起点にその背景へ迫る。》
・無子化=少子化とは言い切れない?
・そもそもセックスしたくない?
・ハッシュタグ「#生涯子供なし」にあふれた声とは?
・高齢者の4人に1人が賃貸住宅入居を拒否される?
・「子供を望まない」3割の無子志向集団
・出産すれば退職……産めなかった時代の働き方
〇「生涯子供なし、日本突出 50歳の女性の27%」
経済協力開発機構(OECD)が発表したデータベースによれば、1970年に生まれた女性の50歳時点の無子率を比べると、日本は27%と先進国で最も高い。このことを報道した日本経済新聞の記事はSNS上で大きな反響を呼び、ハッシュタグ「#生涯無子」「#生涯子供なし」を添えてさまざまな声があふれ出した。
○本書ではこの記事を起点にし、日本に未曽有の「無子化」「少子化」が到来した複雑な社会背景について、女性と子どもをとりまく歴史的経緯、さらに海外での「独身税」をはじめとした最新のデータや議論などにも触れ、私たちが今後どのような社会を構築していくべきかを検討していく。
〇本書の特筆すべき点のひとつとして、「無子化」「少子化」を語る際にとりこぼされがちな個々人の視点を丁寧に汲み取ることも試みていることが挙げられる。無子化を「問題」として扱うことも慎重に問い直しながら、「問題」として取り組むことをしなければ、子供を持たない人の増加の背景にある社会的な構造を見落とす可能性があると筆者は警鐘を鳴らす。
子供の有無にかかわらず、現代の少子化問題に疑問を持つ方々に読んでいただきたい1冊。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
30代ですが、独身、子なしなので読んでみた。経済的環境から不安に苛まれていたことがわかった。しかし無理して結婚したいとも子供が欲しいとも思わない。差別や偏見もまだまだあるんだなと感じました。身元保障や、住宅関係の話はまさに難しくて苦労したから国も交えて真剣に対策して欲しいと思った。
Posted by ブクログ
独身未婚中年男性の自分が読んでみました。
男性に関する記述もちょろっとありました。
女性にとって子どもを持つことがリスクであるとすると、それを背負っても余りあるような男とでないと結婚しませんよ、ということなんじゃないですかね。
昭和は、基本的にどんな仕事でも男性は妻子を養える給料がもらえたし、女性の賃金は低く抑えられていたから、経済的に結婚した人も多かった。
今は男性にそれは望めなくなったけど、かといって男性も稼得能力から逃れられないし、結婚が恋愛の延長上にあることを考えると、恋愛強者3割ぐらいしか結婚できないのは至極当然なのかもしれません。
自分は「男にとっての幸せは妻子を持つこと」という昭和の価値観を強烈に内面化してしまったので、今の人生で幸福感を持つことは難しいなと思いました。
もっとも、自分が女性だったら自分のような人間(低所得・コミュ障)と結婚したいかといえばやはりノーなので、仕方ないと諦めるしかないかなとも思っています。
結婚は、特に男性に関しては、女性に選ばれたというステータスになってきたと感じます。最近、若い男性で結婚指輪をしている人が多いような気がするのは、未婚男性に対してマウントが取れるからなのではないでしょうか(自分のひがみかもしれませんが、苦笑)。
現代は体力おばけでないと子育てできない時代でもあります。
コミュ力おばけと体力おばけの男女がいっぱい子どもを生み育ててくれて、そういう「能力高い人」ばかりになれば、よい世の中にもなりそうな気もしますが、それって、人為に依らない優勢思想的でもあるような気がして、若干怖いなとも思いました。
過去にも独身だったり子どもがいなかったりした人はたくさんいたわけで、決して世の中の役に立っていないわけではない。とでも思わないと、やってられないわ、もう・・・。
Posted by ブクログ
普通に子供がいないと言う事は、個人の自由もあり、他人があれこれ言えるものではないと思っていましたが、国の将来の事などを考えるとどうなるのかと考えてしまいます。その反面、子供を持たないと言う選択もわかる気がいたします。
Posted by ブクログ
自分も「生涯無子」になる可能性が高い当事者として興味深く読んだ。子どもを持ちたくない理由としてアンケートに寄せられた、「生きていることが辛い時代なので、同じ思いをするかもしれない人間を産み出したくない」「自分のことでいっぱいいっぱいで、自分が育てることに自信が持てない」などの声には共感するばかりだ。子どもを持つことが当たり前ではなくなった現代にあって、安心して子どもを持ちたいと思える社会になっていないことが、日本が未曾有の無子化・少子化の道を突き進んでいる一番の要因であろう。
古代ギリシャ・ローマの時代から少子化対策は行われているが、大きな成果は出ていないという。公権力が出生率を上げることに介入するのではなく、ジェンダー不平等を是正し、男女とも家庭生活と両立できるような働き方を実現した上で、そのうれしい副産物として結果的に出生率が上がるのが望ましいという溝口由己教授の提言に、ごもっともと膝を打った。
女性より男性の方が「結婚したい・子どもを持ちたい」という願望を持っている率が高いというデータは、意外なようでもあり、実際に子を持つことがリスクになるのは女性のほうだもんね、という冷めた気持ちも起こさせる。女性のほうが子を持つことによりシビアであるという側面はありつつも、自発的無子か非自発的無子かの区別は非常に難しいという指摘もある。子どもを持ちたいかどうかという気持ちは年齢によっても変化するもので、確固たる意志を持って子どもを持たない人は1割未満だというから、社会が変われば子どもを持っても良いと思う人も中にはたくさんいるのだと思う。子を持ちたい人が持てなかったり、タイミングを逸してしまうようなことは減らしていくほうが良い。
我が家の場合は、夫も子どもを強く望んでいないため、現状子どもを持とうとしておらず、このまま行くと生涯無子になる可能性が高いが、自分たちが子どもを持たないとしても、安心して子どもを産み育てていける社会をつくることには貢献していきたいと考えている。それは、身寄りのない高齢者となる我々が安心して死んでいける社会をつくることにもつながっていくはずだからだ。