あらすじ
2016年10月、大峰山系弥山にて13日間遭難して生還した登山者が遭難に至る経過と遭難中の心境を克明に綴った手記、遭難した現場を6年ぶりに訪問した原因検証、2010年8月に奥秩父両神山で14日遭難した登山者との対談を掲載する。
また、2023年9月、北アルプス不帰ノ嶮で8日間遭難して生還した事例。
2017年8月、北アルプス祖母谷で7日間遭難して生還した事例。
2022年8月、熊本県国見岳で6日間遭難して生還した事例を掲載。
さらに、そのほかの長期遭難の事例を検証し、サバイバルの秘訣を探る。
■内容
1章 大峰・弥山――13日間
PART1 手記
PART2 検証
PART3 対談
2章 北アルプス・不帰ノ嶮――8日間
3章 北アルプス・祖母谷――7日間
4章 熊本県・国見岳――6日間
5章 長期遭難の事例から
あとがき
■著者について
羽根田 治(はねだ・おさむ)
1961年、埼玉県生まれ。
フリーライター、長野県山岳遭難防止アドバイザー、日本山岳会会員。
山岳遭難や登山技術の記事を、山岳雑誌や書籍で発表する一方、沖縄、自然、人物などをテーマに執筆活動を続けている。
主な著書に『ドキュメント生還――山岳遭難からの救出』『ドキュメント 気象遭難』『ドキュメント 滑落遭難』『ドキュメント 道迷い遭難』『ドキュメント 単独行遭難』『野外毒本』『これで死ぬ』(以上、山と溪谷社)、『山はおそろしい 必ず生きて帰る! 事故から学ぶ山岳遭難』(幻冬舎新書)など多数。
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Posted by ブクログ
他のもかなり怖かったんだけど、国見岳のがTwitterの捜索を見ていたので、詳しく知れて良かったのだけど、無事に戻れた今でもこれが幻覚だったらと考えてしまいそうで本当に怖かった。生きて戻れるかどうかって何が違うのかと考えるのも大事なのかも。でも怖い。
Posted by ブクログ
この手の本は、今までに何冊も読んできた。
いつか登山をしたい。
その日のために、まずは危険を知ることが大事だ。
山の中に入れば、滑落や道迷いは常に誰にでもあり得る。
どんなに準備をしていても、起こる時は起こる。
肝心なのは、それが起きた後の行動だと思う。
落ち着いて、その時の最善の行動ができるか。
今回は、生還した人の話ばかりだが、生還できなかった人もたくさんいるだろう。
その生死を分けるものの一つに、いろんな事例を知っているか、ということも含まれると思う。
登山をする人にとって、この本から学べることはたくさんある。
何日も食べなくても、水さえあればそこそこ生きていられる。
飲まず食わずでも、生き続けることがある。
体温が下がり、体が冬眠状態になることもある。
改めて、人間の生命力ってすごいなと思う。
Posted by ブクログ
この書籍では、
何らかのミスで遭難し、長期間のビバークののち生還した事故で、なにが生還に繋がったのか、を取材、考察しています。
山をやる人にとっては、遭難事故事例は自分事に受け止め、事故らないための予防線になりうるけど、山をやらない人にとっては、どちらかというと娯楽としてのノンフィクション事件になると思う。
この本を読んで1番驚いたのは、
人間って2週間水だけでも生きてるんだ。という生命力の偉大さ。とんでもないぜ。
とはいえそんな生活はごめんだけど。
そして最初の1章、事故者の手記だったとは、、驚きました。事故中に実際に書いてたメモとか、否応なく現実を突きつけてくる感じで緊迫感がありました。手記、現場検証、からの似たような事故者同士の対談と、くどいまでの考察。地図も掲載されてるので、かなり鮮明に状況が想像でき、事故の追体験ができます。
事前遭難してる山初心者の方にはぜひとも読んでから山に行ってもらいたい。
数々の事故の事例から考察されるのは、
どの事故も、
原因は道迷いからの遭難、滑落。早く下山しなきゃという焦りがある状況で、登り返すのがセオリーと知りつつも下山してしまった。という共通項。
ビバーク期間はさまざまだが、
精神力には結構差がある様子。長ければ長いほど辛い、というものでもないらしい。軽傷や短期間で病む人もいれば、重症で10日以上も冷静に記録を残してる人もいる。ということ。
事故はできるだけ防ぎたいけど起きる時は起きるもの。起きてしまったことはもうどうしようもないから、今からどうするかを考えるしかない。
結局、最後に決まる運命は運次第。
「ただ生死は運だとしても、絶対に生きて帰るんだと言う強い意思、最後まであきらめない精神力の強さが、その運を手繰り寄せる力になるであろう事は信じていたい。」
と著者も締めくくっている。
運は実力の内。
という言葉があるけど、運は偶然じゃなくてたくさん探して拾おうとしてる人の方が手に入るもの。
だから、
山に行ってる時はもちろん、行ってない時の行いも運という実力につながっている。
こういう事例を見ると、山、危ないなぁ。と思わなくはないけど、自分は大丈夫。という驕りは0にはできそうもないから(自分は大丈夫と信じる力も運に繋がると思うんだ)、自分にかかったバイアスには気付けるようにしておきたいと思います。
Posted by ブクログ
何かおかしい、いや、大丈夫だ、このまま進もう。やっぱり変だ。道に迷った。足を滑らせ、急斜面を転がり落ちる。何とか止まった。擦り傷、打撲、骨も折れてる。さて、どうしよう。動くべきか、留まるべきか。所持品を確認。食料はどのくらいあるだろう。何日もつだろうか。まず確保すべきは水。水源はどこかにないか。誰か気づいてくれるだろうか。救助はいつくるだろう。今日も来ない。また暗くなる。…4つの事例で合計34日。遭難から発見されるまでの日数。自分なら何日耐えられるだろう。貴重な体験談。身体とともに心も鍛えておかなければ。
Posted by ブクログ
「おかしい」と思っても「帰りの交通機関が気になる」「すぐ道に出るだろうと思う」「焦ってやみくもに動く」「判断力が弱まる」などなどの状態は、これまでの自分の山歩きの場面を思いおこしても容易に想像がつく。今でこそ単独行はしないが、若い時に一人で低山ハイキングをしたことなどを思い出し、恐ろしくなった。
この本で紹介されている方々は、中には重傷を負いながらも脅威の精神力と知恵とで助け出されているが、自分なら絶対に無理。山に出かける時の準備を再度見直さなければと反省した。また、このような書籍から遭難の状況を学ぶことの大切さも感じた。
助け出されるまでの夜、深い山中に一人閉じ込められた不安はいかばかりか。安全な場所で心地よく寝られることのありがたさを噛み締めながら、床についた。