あらすじ
アダルトチルドレンを提唱した、依存症治療の第一人者で50年以上の長きにわたって家族病理の問題に向き合い続けた孤高の精神科医・斎藤学。
1年半にわたる患者・施設取材を通してその不可解な人物像と魔術的な治療の核心に迫る渾身の医療ルポルタージュ!
「私がやっている仕事は、フロイトがやった仕事以降のことを引き受けている。その人がどうやって今後の生活をしていくかまでを考えることが、私の仕事と思っているわけです。言ってみれば一生。その人が嫌になるまで、お付き合いするのが私です。お付き合いであって、治療はしていません。治しているのは患者さんが自分で治しているんです」(本文より)
「賛否も毀誉褒貶も呑み込んで、「斎藤学の時代」は確かにあった。
本書はその爪痕をリアルに刻んだ、希有なる「時代の記録」である。」(精神科医・斎藤環)
スーツ姿で煙草を吸い、机の引き出しに常備させた甘い菓子類をポリポリと食べながら、性倒錯患者に「変態だったらすぐ来て」と興味を示し、万引きをした患者には「初めて主体的な行動を見せたね」と褒める。
そんなおよそ医者とは思えないエキセントリックな態度に衝撃を受けながら、斎藤のもとには痴漢、摂食障害、性倒錯、窃盗症、買い物依存症、引きこもりなど多様なアディクション患者が集まる。そして、斎藤の言葉を使った治療により、彼らは眠っていた能力を発揮していく。その中には、心理職として独立、指揮者や画家として活動、フルマラソンを完走するなど、傍から見ても治っているのではないかと思うほどエネルギッシュな人が多い。
彼ら、彼女らはなぜ斎藤学を必要とし、求め続けるのか。斎藤の謎めいた発言や行動、イリュージョンのような治療を患者・施設取材を通して浮かび上がらせる渾身の医療ルポルタージュ!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
当事者たちのお話がリアルで面白かったです。
え"…と思うことも、脚色されてない感じがいいなと思いました。
精神科医の斎藤学先生について、もっと知りたいと思いました。
Posted by ブクログ
5年後にどうなりたいかを見る
それに沿って助言する
一般的な精神科医とはかなり違うだろう
昔なら宗教家に近い存在か
出てくる患者たちも面白いし何よりも多くの患者とのやりとりを通して斎藤学がどういう医師なのか立ち現れてくるのも面白い
Posted by ブクログ
摩訶不思議な先生。神田橋先生とはまた違ったタイプの魔法使い。
人間とは『生命+言葉』。
副交感神経やEMDR、認知行動療法はお子様ランチ。斎藤先生の言葉は強烈だ。
Posted by ブクログ
斎藤学再発見の書。30年ほど前、依存症業界で脚光を浴び、ACや共依存の概念を広め、時の人となっていた。あらゆる書籍は出せばベルトセラー。それが学会では語られなくなり、書籍も出なくなり、そうした時期に出た斎藤学ルポと言ってもいい書。それも患者の回復過程(語り)から斎藤学を見つめなおす。信田さよ子氏は常々「斎藤学」とは何だったのかということを専門家は総括すべしと言っている。そうした中で出た書で、並行して斎藤氏の専門書が奇遇にも出版。斎藤学氏の「治療」(援助)は「語り」と「つながり」。時代が追いついてきたかもしれない。