【感想・ネタバレ】王墓の謎のレビュー

あらすじ

「王墓はなぜ築かれたのか?」
本書のテーマは、この素朴な疑問である。
エジプトのファラオが築いたピラミッド、中国の皇帝たちが造った山稜など、
人類史には王の埋葬のためのモニュメントが数多くある。
それらは、王が自らの権力を誇示するために築造したと考えられている。
したがって、王墓の大きさは権力の大きさに比例する、
王墓は王の権力の象徴にほかならない、という理解が常識とされており、
教科書にもそう書かれている。
しかし、本書ではこの定説に真っ向から反論し、
新たな視野から王墓を理解することを目的とする。

本書では、王墓にまつわる次のような謎に挑む。
・「王墓=権力の象徴」説は、いかにして定説になったのか
・王墓は、権力者が命じた強制労働の産物なのか
・墓造りのエネルギーを、なぜ農地の拡大や都市整備に投下しなかったのか
・葬られたのは「強い王」か「弱い王」か
・高価な品々が、なぜ一緒に埋められたのか
・なぜ人類は、世界各地で王墓を築いたのか?
・「大洪水伝説」が残る地域と、王墓の誕生した地域が重なるのはなぜか
・王墓は、危機に瀕した社会が生き残るための最終手段か
・王が神格化され強大な権力を持つと、王墓が衰退するのはなぜか

この本は、「王墓=権力の象徴」というステレオタイプな理解で停止してしまっている
私たちの思考を根本から問い直すものである。

王墓は、王自らの権力欲のためのものではなく、
人々が自ら進んで社会の存続を王に託した時に、はじめて誕生する。

王墓は、王を神へ捧げるための舞台であり、
権力や富の集中を防ぐために、人類が発明した優れた機構なのだ!

古代史ミステリーの「定説」を覆す、必読の書!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

「王墓の大きさ=権力の大きさ」という通説を疑ってかかり、比較考古学という視点から王墓の成り立ちや変遷、衰退などの考察を行った一冊。
全部が全部丸っと飲み込めはしなかったが、少なくとも通説よりは説得力のある面が多かったように思う。
特に循環的時間の観念から直線的時間の観念に置き換わったという精神面にも言及があったのが個人的には目新しかった。
時には定説を疑ってかかるという視点も大事だなと感じた。

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2025年05月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

王墓とは何か、王墓はなぜ衰退したのか、王墓が与える現代への影響などを考察します。神格化された王が、時代の変遷や他との競争の中で王墓を華麗にした。その中で複合的施設王墓が生まれた。次第に王は専制君主となり、王墓の造営に当たらせる余裕が無くなり、生贄もなくなった。市民の王墓への意識も弱まった。しかし王墓は現代に歴史の流れを教えてくれる。教養が増えました。

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2025年07月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ピラミッドや始皇帝陵、そして日本の古墳といった巨大な王墓はなぜ誕生したのか。一昔前のステレオタイプな考え方では、絶大な権力者であった専制君主が亡くなった際に、その栄光を永久に示し続けるためのモニュメントとして、奴隷的な労働と何十年にもわたる歳月をかけて造られたという説が主流だった。

近年になって(グレーバーの『万物の黎明』等)、王という存在が決して専制的に権力を保持していたわけではなく、洪水や戦争といった災難に対して自己犠牲的に神への祈りを捧げ、その祭壇としての王墓が災害が激甚化するにしたがって巨大化していった説が出てきている。

また王墓に副葬品として埋められる貴金属などの装飾具についても専制君主の経済力を示すというよりも、むしろ権力の集中を防ぐためにインフレ対策として財産を没収していたという新たな見解が示されている。

筆者は長く国立博物館の学芸員を勤め、とくに奈良の古墳などに詳しい立場にある。日本の古墳時代にいきなり巨大な王墓が出現し、それが衰退していった理由を長年追い求めてきた中で、従来の学説を翻すのは勇気の要ることなのかもしれない。

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2024年07月02日

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