あらすじ
事件記者になりたい一心で産経新聞に入社した著者は、現場での同業者たちに違和感を抱くようになる。なぜ彼らは特定の勢力や団体に甘いのか。左派メディアは、事実よりもイデオロギーを優先していないか。ある時は警察と大喧嘩をし、ある時は誤報に冷や汗をかき、ある時は記者クラブで顰蹙を買い、そしてある時は「産経は右翼」という偏見と闘い……現場を這いずり回った一人の記者の可笑しくも生々しい受難の記録。
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Posted by ブクログ
「オールドメディア=マスゴミ」という言葉が叫ばれるようになってから久しい現代。テレビや新聞といった旧来のメディアは、しばしば中立性や正確性を欠き、特定の思想や勢力、国に偏っていると見なされます。こうした偏向報道が繰り返される背景には、一体何があるのでしょうか。
この根深い問題の核心に迫るため、私は**三枝玄太郎氏の著書『メディアはなぜ左傾化するのか 産経記者受難記』**を手に取りました。
メディアの左傾化はなぜ起きる?
メディアの偏向には、外国資本の流入や外国人従業員の増加、メディア監査機関の機能不全など、さまざまな原因が指摘されます。しかし、それらは表面的な問題に過ぎないのかもしれません。本書は、長年メディア業界の最前線で取材を続けてきた著者が、その内部から見た「左傾化」の実態と構造的な問題を深く掘り下げています。
本書を読んで私が特に強く感じた、メディア左傾化の大きな原因は以下の2点です。
1. 慢性的な「人員不足」が生む負の連鎖
まず挙げられるのが、メディア業界全体に広がる**「記者の人員不足」**です。
読者や視聴者の減少に伴い、各社は人員を削減せざるを得ません。その結果、記者は十分な時間をかけて取材を行うことが難しくなり、質の低下を招いています。そして、取材が不十分なまま、特定の団体(いわゆる「プロ市民」と呼ばれるような活動家)からの情報や、当局の発表内容をそのまま報じるという構造が生まれているのです。これでは、客観的で正確な報道など望むべくもありません。
2. 「真実の追求」よりも「他社との競争」が優先される風潮
次に、多くの報道関係者が**「正しい情報を伝える」という本来の目的よりも、「他社に負けないこと」や「自社の思想、業界の慣例を守ること」を優先している**という点です。
もちろん、全ての記者がそうだというわけではありません。本書は、地道な裏取り取材を行い、真実を捉え、悪を糾弾し、被害者に寄り添うジャーナリストも確かに存在することを教えてくれます。しかし、一部の報道関係者が内向きな論理に囚われている現状は、メディアに対する信頼を大きく損なう原因となっているでしょう。
違和感の正体を知る一冊
『メディアはなぜ左傾化するのか』は、日本のメディアに対して漠然とした違和感を抱いている方々に、ぜひ読んでいただきたい一冊です。この本を通して、報道の裏側で何が起きているのか、そしてなぜ私たちが目にしている情報が偏っているのか、その構造的な背景を深く理解することができます。
日本のメディアが健全化し、真実を伝える本来の姿を取り戻すことを願ってやみません。