【感想・ネタバレ】生き延びるために芸術は必要かのレビュー

あらすじ

私は2019年から現在まで、某大学で毎年数回の講義を担当させてもらっている。美術家としての私がその時々に考えたこと、伝えたかったことをお話しするのだが、これまでの議論を振りかえってみると、「生き延びる」というテーマに関連した内容が意外に多かった。(「はじめに」より)セルフポートレイト作品で知られ、「私」の意味を追求してきた美術家が、「生き延びるとは何か」というテーマに取り組んだ人生論ノート。

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Posted by ブクログ

芸術家は、制作活動を続ける上で、権力者に一定の配慮をする必要があった。
かっての芸術活動は、王侯貴族などのパトロンがいてこそ継続できた。

例えば、王侯貴族の肖像画を描く際に、スポンサーが喜ぶように描くこと。

本書では一例として、19世紀のスペインの画家、ゴヤの作品、カルロス四世の家族、を挙げている。

当時は皇后が実権を握っていた。その皇后の肖像を中央に描く配慮はしたものの、美しく描かなかった。
当時の肖像画が、少し盛って美しく描くのが当たり前だった。

この作品を観た皇后は、怒りを覚えたかもしれないが、破棄せず残すことを選んだ。
その理由は、愛する我が子と中央に並んだ絵画、つまり次の王は誰かを示す絵画だったため、ともいわれている。

一流の画家は、ただ権力者に従うだけでなく、自分の想いを権力者の意向に反しても、作品に込めることができる者でもある。

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2025年11月21日

Posted by ブクログ

おもしろかった。
特にタイトルとなった第6話がよかった。

見出しの言葉が端的でそれだけでもはっとする言葉。(以外、見出し)
役に立つことと、生き延びることはおなじではない
生き延びたいとねがうのはだれか
「本になる人びと」がおしえてくれること
芸術家を支援するには鉄則がある
芸術とは、百年単位で作り上げる「普遍妥当性」である
無観客の展覧会とはなにか
「作品」と「商品」はなにがちがうのか
「あったらいいな」と「ありえへん」
美術館は、よくわからない
「芸術」と「芸能」と比較する
若い者の胸をあわだたせていた時代
「アイデンティティの空白」を批判される
生き延びるためには、勇ましくあってはならない
持続不可能性建築に託すもの

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2025年11月09日

Posted by ブクログ

第1話 生き延びるのはだれか
p.55 もちろん戦争や災害や差別や弾圧、そうしたくり返される人間の悲劇をまのあたりにすると、「人間が生き延びるために、私たちは何をするべきか」という問いがもつ切迫感によくさいなまれます。しかしそうした人間の、ある意味愚行の歴史をかえりみる方法としても、「私たち人間」という唯一無二であるかに思える主語(主役)と一度決別してみるべきだと提案してみたいんのです。

第6話 生き延びるために芸術は必要か
p.173 「商品」とは、「あったらいいな」の世界である。「作品」とは、「ありえへん」の世界である。

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2024年09月29日

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