あらすじ
私は2019年から現在まで、某大学で毎年数回の講義を担当させてもらっている。美術家としての私がその時々に考えたこと、伝えたかったことをお話しするのだが、これまでの議論を振りかえってみると、「生き延びる」というテーマに関連した内容が意外に多かった。(「はじめに」より)セルフポートレイト作品で知られ、「私」の意味を追求してきた美術家が、「生き延びるとは何か」というテーマに取り組んだ人生論ノート。
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Posted by ブクログ
芸術家は、制作活動を続ける上で、権力者に一定の配慮をする必要があった。
かっての芸術活動は、王侯貴族などのパトロンがいてこそ継続できた。
例えば、王侯貴族の肖像画を描く際に、スポンサーが喜ぶように描くこと。
本書では一例として、19世紀のスペインの画家、ゴヤの作品、カルロス四世の家族、を挙げている。
当時は皇后が実権を握っていた。その皇后の肖像を中央に描く配慮はしたものの、美しく描かなかった。
当時の肖像画が、少し盛って美しく描くのが当たり前だった。
この作品を観た皇后は、怒りを覚えたかもしれないが、破棄せず残すことを選んだ。
その理由は、愛する我が子と中央に並んだ絵画、つまり次の王は誰かを示す絵画だったため、ともいわれている。
一流の画家は、ただ権力者に従うだけでなく、自分の想いを権力者の意向に反しても、作品に込めることができる者でもある。
Posted by ブクログ
おもしろかった。
特にタイトルとなった第6話がよかった。
見出しの言葉が端的でそれだけでもはっとする言葉。(以外、見出し)
役に立つことと、生き延びることはおなじではない
生き延びたいとねがうのはだれか
「本になる人びと」がおしえてくれること
芸術家を支援するには鉄則がある
芸術とは、百年単位で作り上げる「普遍妥当性」である
無観客の展覧会とはなにか
「作品」と「商品」はなにがちがうのか
「あったらいいな」と「ありえへん」
美術館は、よくわからない
「芸術」と「芸能」と比較する
若い者の胸をあわだたせていた時代
「アイデンティティの空白」を批判される
生き延びるためには、勇ましくあってはならない
持続不可能性建築に託すもの