あらすじ
本邦初のシギント入門書!! シギントを知らずして、国際情勢は語れない!
※シギント(SIGINT: signals intelligence)とは、通信、電磁波、信号等など傍受を利用した諜報・諜報活動。
盗聴、ハッキング、国益を賭けた戦いの世界【インテリジェンス・ウォー】
繰り返す、これは架空【フィクション】ではない!
<救国シンクタンク「国家防衛分析プロジェクト」企画>
ヒューミント、シギント、イミントの三分野を現場で体験した元警察官僚、元内閣衛星情報センター次長 茂田忠良。
麗澤大学客員教授。情報史学研究家。2023年フジサンケイグループ第39回正論大賞受賞 江崎道朗。
今、最も日本に欠けているインテリジェンス能力を徹底討論。
◆スノーデン漏洩資料の徹底分析!見習うべきはアメリカのシステム
◆インテリジェンス能力がなければまともな反撃など不可能
◆「世界最強のシギント機構」UKUSA(ファイブ・アイズ)
◆インテリジェンスの世界で「専守防衛」は通用しない
◆まともに戦えるようになるために日本版CSSも創設すべき
◆シギント機関の関与なくして“本当のサイバー・セキュリティ”はできない
◆「シギントを進めるヒューミント、ヒューミントを進めるシギント」
◆「シギント・フレンドリー」なホテルなら部屋の中の会話も筒抜け?
◆いずれ日本もNSAのような組織の必要性に気付く
◆アメリカは外国人のメールを見放題
◆インテリジェンスの世界で「専守防衛」は通用しない
◆イギリスの首相は「生」のインテリジェンス情報に触れている?
◆シギントはもはや「インテリジェンスの皇帝」
◆法律になくても対外諜報は「やるのが当たり前」
◆今こそ国家シギント機関創設に向けた第一歩を
【著者プロフィール】
江崎道朗(えざき・みちお)
麗澤大学客員教授。情報史学研究家。1962年(昭和37年)東京都生まれ。
九州大学卒業後、国会議員政策スタッフなどを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究に従事。2016年夏から本格的に言論活動を開始。
産経新聞「正論」欄執筆メンバー。
日本戦略研究フォーラム(JFSS)政策提言委員、歴史認識問題研究会副会長、救国シンクタンク理事、国家基本問題研究所企画委員。
オンラインサロン「江崎塾」主宰。
2023年フジサンケイグループ第39回正論大賞受賞。
主な著書に、『知りたくないではすまされない』(KADOKAWA)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(第27回山本七平賞最終候補作)、『日本の占領と「敗戦革命」の危機』、『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』、『緒方竹虎と日本のインテリジェンス』(いずれもPHP研究所)、『日本は誰と戦ったのか』(第1回アパ日本再興大賞受賞作、小社刊)ほか多数。
公式サイト: https://ezakimichio.info/
茂田忠良(しげた・ただよし)
1951年(昭和26年)茨城県生れ。1975年東京大学法学部(公法科)卒業。1980年米国・デューク大学大学院(政治学)卒業(修士)。
1975年警察庁に入庁し主として警備・国際部門で勤務したほか、群馬県警察本部長、埼玉県警察本部長、四国管区警察局長を歴任。
警察外では、在イスラエル日本大使館一等書記官、防衛庁陸幕調査部調査別室長・情報本部電波部長、内閣衛星情報センター次長を歴任。
2008年退官後にインテリジェンスの学問的研究を始め、2014年から2022年まで日本大学危機管理学部教授としてインテリジェンスを講義。現在インテリジェンス研究に従事中。
主な論文に、「サイバーセキュリティとシギント機関」(情報セキュリティ総合科学)、「米国国家安全保障庁の実態研究」、「テロ対策に見る我が国の課題」「『クリプト社』とNSA~世紀の暗号攻略大作戦」「ウクナイナ戦争の教訓~我が国インテリジェンス強化の方向性」(以上、警察政策学会)、「オサマ・ビンラディンを追え―テロ対策におけるシギントの役割」(啓正社)など多数。
現在、月刊誌『正論』『軍事研究』『治安フォーラム』などに寄稿。月刊誌『警察公論』に「インテリジェンスこぼれ話」を連載中。
趣味は「日本を楽しみ、日本を学ぶ」で、特に歌舞伎、文楽、能狂言、講談、浪曲、落語などの古典芸能を楽しんでいます。
茂田忠良インテリジェンス研究室: https://shigetatadayoshi.com
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Posted by ブクログ
オープンソースで語れる範囲でシギントについて読める日本語の本ではかなり優良なのではないかと思う。インテリジェンスの実務に関わり今は研究者である2人の対談形式。2013年にスノーデンが暴露してくれたおかげで、実務に携わっている人間が守秘義務に違反せずに語れる内容が増えたのはありがたいことだ。
個人的には日本も反撃能力を持つとなって、ターゲティングをどうするかという必要性が生まれたので、今後もインテリジェンス、特にシギントの分野については関心を高めていくのではないかと漠然と期待しているが、まずはアメリカのインテリジェンスシステムを活用すべしと。NSAのSはSecurityとなっているが、実は米軍ではSIGINTを意味している。シギントの情報プロダクトはシングルソースインテリジェンスで、オールソースの素材情報ではなく、速報性に優れた情報があったり、秘密区分もヒューミントやイミントが極秘(SECRET)なのにシギントは機密(TOP SECRET)であったり。
この本で新しく知ったのはマシント(Measurement and Signature Intelligence)で、計測・痕跡情報と呼ばれるもので、対象が発するもの全てという。例として海自の対潜哨戒機による情報収集を挙げているが、だったらシギントってこれのサブカテゴリなんじゃないの?と疑問に思う。防衛省情報本部はバトルサポートをするための機関ではない。さらに陸海空の統合組織ができているのか怪しい。シギントは専門性が著しく高く、人事管理で特段の考慮が必要。
ファイブアイズは通称でUKUSA(ユクサ)が正式。アメリカにとってのメリットは情報収集の拠点を世界中に確保できること。米英の特別な関係とはインテリジェンス同盟によって結ばれた利害関係。多くのインテリジェンスを共有しているから国際情勢への認識が似てくる。軍の情報ニーズと国家の情報ニーズが異なるため、NSAは国防総省内に置かれているが統合参謀本部議長の指揮命令系統からは外れている。911などインテリジェンスの失敗が明確になると徹底的に原因究明して国会議員主導で大胆な組織改革ができるアメリカ。
北朝鮮による拉致は、日本の各省庁の横串が通っていたら被害が拡大しなかった。日本もアメリカのインテリジェンス体制を真似るべきで、日本だけがやっていないことが多々ある。違法じゃないのかとか考えるのは日本人だけで、インテリジェンスは法的根拠云々関係なく何でもありでやるのが当たり前。今はシギントの黄金時代で各国もここから宝を掘り出そうとしているが一方で日本はという懸念。
イギリスの首相がサミットで動きの予定を変更して大使館に寄るようにしていたのは、自分が生に近いインテリジェンスに触れていてそのエグさを理解しているからという説明。オンラインでもポルノサイトによる誘導などのハニートラップがある。
アメリカは北朝鮮のハッキング部隊解明に取り組み始めた時に韓国をハッキングし、韓国がアメリカにハッキングを試みていることもわかって韓国への関心を高めたとか。
シギントがインテリジェンスの皇帝となっている現代において、日本がシギント能力を高めていくための提言として、アメリカやイギリスから学んで国家シギント機関を作ること、幹部の人事権は首相が握ること、その下の技術者集団は高い専門性を有していること、内閣情報官が予算を計上すること、内閣情報官が任務付与と情報配布の権限を握ることを挙げている。
Posted by ブクログ
インテリジェンスに対する、世界の常識と日本の非常識が理解できる一冊。
シギントはコミント(暗号解読、通信状況分析)、エリント(レーダー波分析)、フィシントなどに分類され、有事に備えて反撃対象の選定や行動予測に活用できる重要なインテリジェンスの一つ。
ヒューミントの対象者の通信状況など、ヒューミント支援としてもシギントは活用されている。
サイバー戦またはインターネット空間を介した積極工作では、シギント機関の調査情報や技術を活用している。
一方で、日本にはそもそも国家シギント機関がない。(自衛隊には軍の範囲でのシギント能力はある)
予算規模は別として、基本の組織編成、体制、思想などはアメリカをお手本とすると、
そもそもシギントを積極的に活用するという国家レベルの姿勢と仕組みづくりが足りない。
情報戦は少数の天才などでなんとかなるものではなく、情報収集インフラも含めて整備が必要。
アメリカではアメリカ又は協力国を通過する通信基幹回線からの情報取得をしている。
マイクロソフト、ヤフー、グーグルなどの民間企業と協力してそれら企業が保有するメールその他の情報を合法的に分析している。(プリズム計画)
国家諜報機関のトップ(CIA兼DCIトップ)はCIA、国防総省、各軍、司法省、財務省等のインテリジェンス機関を統括している。
一般的にDIMEが認識され、安保三文書でサイバーセキュリティ強化の記載がある一方で、
いずれの強化にも必要なシギントの強化や国家シギント機関設立の気配は感じられない日本。
余談かつ、単なる感想として、
警察官僚OBである茂田氏だが、対国内インテリジェンスだけでなく、軍、対外的インテリジェンスに知見があり、
日本での国家シギント機関設立の提言では、機関トップには軍(自衛隊)出身の専門家を立てるべきと言っており、
警察の担当するインテリジェンスの範囲を超えて国益を考えたインテリジェンスを提言できている。