【感想・ネタバレ】理工学の基礎「線形代数」に心震えるのレビュー

あらすじ

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【内容紹介】
大学受験で文系を選んだ人にとって、線形代数は学ぶ機会がなくなってしまいますが、理系の人は全員が1年次に「線形代数」を学びます。線形代数は理工学分野のコメ(基礎)であり、「知っておくべき学問」「あらゆる分野に応用できる道具」として位置付けられています。つまり、文系の人間が理工学を学ぶとき、まず最初に理解しておくべき基本であるわけです。
本書だけで、ベクトル、行列、線型空間、写像、線形変換、固有値などの線形代数の基本が文系の人間にもわかるように丁寧に解説します。
その特徴は以下のとおりです。
●リスキリング的な仕事のための学習とは異なり、自己研鑽する志学を応援します
●文系出身の編集者が理解できるよう、中身を噛み砕いて記述しています
●他の参考書は不要です。本書1冊だけで線形代数が理解できます
●数学、物理学、化学、工学、経済学、社会科学の基礎を身に付けることができます
●学びのなかで、数学の美しさが体感でき、心震える体験ができます

【目次】
はじめに

第1章 ベクトル
1.ベクトルとは
2.ベクトルの計算
3.ベクトルの成分
4.内積
第1章 解答

第2章 行列
1.行列とは
2.行列の加法・減法および実数倍
3.行列の乗法
4.単位行列
5.掛け算の不思議な性質
6.行列の除法
7.2元連立1次方程式
8.基本変形
第2章 解答

第3章 行列式
1.3元連立1次方程式の解
2.行列式とは
3.行列式の性質
4.逆行列
5.n元連立1次方程式のクラメルの公式
第3章 解答

第4章 線形空間と線形写像
1.平面ベクトルのつくる世界
2.空間ベクトルのつくる世界
3.線形空間
4.線形写像
5.平面から平面への線形写像
6.線形写像と行列
7.直線を線形写像でうつす
8.合成写像と行列式
9.空間から空間への線形写像
10.m次元線形空間からn次元線形空間への線形写像
第4章 解答

第5章 線形空間と線形写像
1.線形変換
2.固有値と固有ベクトル
3.楕円の標準化
4.3次正方行列の固有値
第5章 解答

第6章 データの分析
1.バラツキの度合い
2.関係の度合い
3.データの特徴を調べる
第6章 解答

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Posted by ブクログ

問題集というか参考書だ。
表紙のセンスが極めて良かったので惹かれたのだが、ページを開くと気分は受験生。

前もどこかで書いたが、数学は積み上げ式の学問。四則演算が分からなければ三角関数や微分積分は理解できない。公式が分からなければ、球の体積は求められない(公式を発明するなら別だが)。つまり、例えば、学校を休んだ時に何か必要なパーツを失い、それにより数学の落ちこぼれになるという可能性が大いにある。その点では、身体の強さと数学のテストの相関を見てみると面白いかもしれない。ある意味ではそうした補講の機能を果たす「塾通い」なんかは、世帯収入と学力(試験結果)の相関を示すという点で有力だ。

他方、受験というのはその年齢で人生の分岐を向かえるという点ではどうなのだろうか。勿論幾らでも取り返しは利くのだが、現実問題、自らの選択にその後も流されていく可能性が高く、修正は簡単な事ではない。その年齢ではまだ選挙権はない。だが、そこで人生を大きく左右する〈文系、理系〉という大きな選択を迫られる。しかも、その選択は、何かしらの偶発的な体験により「自分は数学が苦手だ」という意識を植え付けられた結果によるのだ。

たまたま休んだ日、たまたま合わなかった教師、たまたま恥をかいた黒板の前—— こうした些細な出来事が、不可逆的に進路選択に影響する。学校制度はそれを「能力差」や「向き不向き」として処理してしまう。結果、「数学が苦手」という自己物語が早期に内面化される。この点で、数学嫌いは認知の問題というより、履歴の問題だといえる。

さて、本書の話に戻るが、それを取り戻せるかのような「文系編集者がわかるまで書き直した」という書きぶり。だが、どうだろうか。がっつり数学の本だ。しかも、問題文のすぐ下に、その解答とは異なる証明があり、その後に例題が続くような流れがとても分かりにくい。問題の解答は章末にあるが、答えだけで説明は省略。普通に「問題の解説」をしていけば良かったのでは。

表紙を改めてよく見ると小さな文字で「読むからには、少しの覚悟は必要です」。
なんじゃそりゃ。

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2025年12月16日

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