あらすじ
「米国の戦争に巻き込まれたくない」「軍事協力は最低限に留めたい」――こんな「日本だけの都合と願望」はもはや通用しない。同盟の抑止力を高め、平和を維持するには「日本的視点」を克服した「第三者的視点」を取り入れる必要がある。基地使用、事態対処から拡大抑止まで、意外な盲点から安全保障の課題を突く警鐘の書。
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Posted by ブクログ
働いて働いて働いてーと同じくらいの流行語は、「存立危機事態」だと思う。私の周りでは主に夫婦関係や組織に対して誤用される言葉。で、この「存立危機事態」だが、みんな実際正しく理解しているのだろうか。本書がこの点も含めて、日本の安全保障を詳しく解説していく。
…実際には高市発言前の本であり、存立危機事態解説本という事ではなく、「極東1905年体制」について論じたものであるが。
まず、日米同盟における軍(自衛隊)の発動基準として、有事をいくつかの「事態」に区分し、それぞれの事態ごとに対応を細かく分けるという方式がある。日本にとっての深刻度順に並べると、「国際平和共同対処事態」、「極東有事」、「重要影響事態」、「存立危機事態」、「武力攻撃事態」といった類型。
存立危機事態は上から2番目のヤバさ。
単なる極東有事であれば、日本はアメリカ軍に日本の基地の使用を許すにとどまる。さらに日本に対する直接の武力攻撃にいたるおそれがある場合「重要影響事態」が認定される。この場合、自衛隊がアメリカ軍などへの後方支援をおこなうことが可能。その後が「存立危機事態」。「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃」が発生し、これにより「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」。これが認定された場合、“集団的自衛権“の行使が容認される。
つまり、台湾有事に対し米国が反応すれば日本が集団的自衛権の範囲だ、と言っているわけ。で、集団的自衛権の発動は日本が決めるものの、それは米軍の軍事行為にぶら下がって必要性が生じるもの。米国からすれば、“俺がまだヤルって言ってないのに、オマエが後ろから「私、やるんだったらやりますからね!」とか言って煽ってるんじゃねーよ“と。米国から見たら、実際ちょっとウザい感じらしい(本書には書かれていない)。
本書の面白さは、存立危機事態だけではない。もっと本質的な日米安全保障条約とはなんぞ。米韓同盟との連鎖における矛盾点。例えば、日本が事前協議でアメリカ側の要請を拒否すればアメリカによる韓国防衛が成立しなくなるおそれがあり、それをクリアする密約の存在、などなど。
ホットな話題でもあり、読み応えたっぷりだ。尚、夫婦関係の存立危機事態にも、賢い選択は曖昧戦略なのかもしれない。