あらすじ
マッサージ店で勤務する柳田譲、44歳、独身。傷つきやすく人付き合いが苦手な彼の心を迷惑な客や俗悪な同僚、老いた母や義父が削り取っていく。自分が暴発してしまうまえに自死することだけが希望となった柳田をさらに世界の図らざる悪意が翻弄する――。第39回太宰治賞受賞作。
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Posted by ブクログ
主人公の生活はとてもストイックで、とてもナイーブで共感できるところもあるが、究極の選択をしがちになってしまうのだろう。
現代社会や人間関係がもたらす、疲弊をみごとに描いている。
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第39回太宰治賞受賞作品です。
「小説版ジョーカーだな」が、読後の率直な
感想です。
自分は真っ当に生きているのに、なぜ世間は
こんなに自分勝手で、他人のことを考えない
人間があふれているのだ。
もう生きるのに疲れてしまった男は自殺願望
を抱えつつも、ちょっとだけ生きる喜びを時
々見つけて、明日へと立ち向かう勇気を得る
時もあります。
しかし世間の嫌な部分は、圧倒的に主人公を
攻撃してきます。
最後に行き着く先は破滅か、開き直りか。
よを達観する気持ちが湧き起こる不思議な一
冊です。
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評価は分かれるでしょう。
まるで自分のことのようで、誰かに読んで欲しい。
真面目に生きていると、周りの不真面目に振り回されておかしくなってしまう。
そんな様子がとてもしっくりきました。
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繊細さんが解脱を目指すも破綻する、という話だろうか。自己嫌悪と正義感でぐるぐるした挙句最後にキレる、というのは、芥川賞系の男性作家にはよくあるパターンで、読んでいて大抵気分が悪くなるのだが、この作品には珍しく共感できた。
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繊細さゆえに生きづらさを覚え、このままでは他人に危害を加えて理想とする自分ではいられなくなってしまうから死へ向かう準備をする男の話。男が他人に対してイライラや不快感を感じるところは全てわかるものばかりで、私が男みたいに人より繊細なのか、みんなも同じようにイライラしてるけど顔に出してないのかどっちなのかわからないけど、とりあえず他人の言動に鈍感な人が死ぬほど羨ましくそうなりたいなと思った。
他人に優しくしなきゃいけないと母の教えを堅実に守ってやってきたのに、みんな自分のことしか考えず生きているのよと母に言われ、これまでの人生の土台が全て覆る。幼少期の受けた親の言葉は呪いのようにずっと自分の頭にこびりついて離れないもので、それを頼りにやってきたのに真逆のことを今更、、、となると膝から崩れ落ちたくなるのも、わかる気がした。
家庭環境に若干の問題があったとはいえ、それは数ある要素の中の一つでしかなくて、どうしたら男が救われたんだろうって考えるが答えは出ない。嫌われる勇気、なんて言うけど、人からどう思われようが恐れず思ったこと、嫌だから辞めてほしいことを言っていれば我慢の連続にはならず爆発が防げたのか?
自分を否定された気になると「裏切られた」と急に被害者意識が高まって、人間関係を整理してしまいたくなること、良くある。この男みたいに「これは相手が悪かったから然るべき整理なんだ」と自分に言い聞かせて正当化して絆をひとつ切ってしまったことによる穴に気付かないフリをしながら生き続けるわけなんだけど、客観的にそういうことをする男を見たら、自分に都合のいい生ぬるい環境ばかりを求めて生きてきたから自分と違う他人というものへの免疫が大きく低下していて可哀想と思ってしまった。
色々書いたが、結局主人公の譲が自分のようで、自分を振り返る機会になった。コロナで余計にそうなってるかわからないが、この生きづらい世の中、なんとか自分を傷つけず苦しまず限られた時間の幸せを感じて生きたいと思った。
Posted by ブクログ
主人公の中にある他人を配慮しているという自負とナルシズム、異常な他責思考。自分を美化し、他人を敵か味方か、物事を善か悪かで判断する主人公、まさにこれがリアルな人間の末路では無いか。そのような「拗らせ」は第三者から見れば些細なボタンの掛け違いかもしれないが、本人はそのボタンを直すこともせず、ましてやそれが特別なものと勘違いしてしまう。本作では最低かつ良質な拗らせを味わうことができた。
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太宰治賞受賞作というだけあって、最初から最後まで、え、この主人公は私では?と思わざるを得ない作品だった。
ここまで思い詰めてしまっていると、こわいけど笑える。主人公の彼(私)は一貫して大真面目なのだから。
タイトルを見て衝動的に購入した後、取り憑かれるように一瞬で読み終わってしまった。
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淡々とした数日間の物語という感じ。自分の中にもある嫌な部分と嫌なやつになりきれない凡庸さみたいなのがすごく自然に書かれててあんまり本を読んでる感がない。最後の展開も加速していく感じも、最悪なことはこうして起きるのかなと体感できた。
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主人公の柳田が抱える小さな苛立ちや孤独は、誰の心にも潜んでいる感情の延長だと感じた。正義感や寂しさ、あるいは他者への攻撃性として姿を変えるその感情に既視感を覚える。だからこそ、ふとした瞬間に「これ、柳田と同じじゃないか」と思い返し、辞書のように本をめくってしまう。
人との関わりにおける無神経さや善意のすれ違いが、自分にどう響くか。その受け取り方次第で世界はまったく違う色を見せる。それが、この作品を繰り返し読み返したくなる理由だ。
Posted by ブクログ
文学あるいは小説とは、本来こういう作品のことを言うのではないか。人がどのように人生のレールから外れて行き、徐々に狂気をまとっていくのか。そして家族や恋人、信頼できる人たちとの関係性が、そのプロセス(もしくはスタート)にどう作用するのか。
なんて分析したくなるのは、この作品をまともに受けとめるのが辛すぎるからかも知れない。
破壊力と静謐さをあわせ持った強力な一作。
Posted by ブクログ
世の中には人に迷惑をかける人がいる。それを正そうとする人もいる。正すことが度を超えれば、正義感は濁ったものになり、加害者になる。
だから我慢して生きているけど、我慢にも限界がある。
主人公はそんな感情を常に持っているのだろう。
人の生死について、長生きしたいと思うことが当たり前のことではないと知らされる。
死生観を考えさせられる本だった。
Posted by ブクログ
日々の生活の中で、少しずつ溜まってゆく不満、鬱憤。それらを解消、いや折り合いをつけるために我慢をしてゆく…その日々の“ガマン”がいつか爆発してしまう…“隣の芝生”は本当に厄介だ…“青く”見えてしまうものを、何とか“水色”に変えようとしていく。そんな行程でさえ鬱憤は蓄積されてゆく…世の中、“自分が可愛い”奴らで満たされている。“他人のためになることが幸せ”なんて結局のところ幻想に過ぎないのでは…そんな思いに真正面からぶつかってくれた清々しい一冊。
Posted by ブクログ
現代の純文学っていうのかな。
主人公や取り巻く環境が、今の時代の苦悩を引き出しているのだろう。
これを社会的に解決すべきと読むのか、どう受け止めるべきか悩んでしまった。
Posted by ブクログ
母親に自死を否定されてから終わるまでの疾走感がすごかった。柳田さんが最後執拗にまで人にイライラしていたのはシンプルに断食していて、栄養不足なだけなのと、狭い世界に閉じこもっている、というか自ら選択していると、視界が狭くなって、無駄にイライラするのかなと思った。人の行動にイライラするのって、エネルギーの無駄だなぁとコロナ中も何となく思っていたけど、今作を読んで改めて感じた。「自分以外、全員他人」ってタイトルから、もっと自分よがりな生き方をしている人の話なのかと思ったら、その逆で気にしいな人だったのが意外で面白かった。
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真面目で繊細が故に、日々の些細なことでイライラと鬱憤を募らる主人公。
終始暗くてあまり共感もないんだけど、主人公のポリシーみたいなものに惹かれて行く末が気になった。
最後は、結局そうなっちゃうのかという感じ。
Posted by ブクログ
太宰治賞に納得。不本意ながらパチン、の瞬間が自分にも訪れたことがあるので目を背けながら読んだ。
彼の話はどうやら続刊がある?ようなのでそちらも読もう。
Posted by ブクログ
追記
中盤の鬱で退職した人が診断受けて、主人公がそんな症状は診断受けなくても自分もある、と言ってるけどその人の目線では本当にしんどいかもしれなくて、そこも含めて「自分以外全員他人」ならもう物語で救われないね、と今の自分は思ってしまう
自分がいつか迷惑をかけてしまう前に死にたい、と言っていて本当に最後暴力に出るとは思わなかった。鬱屈した私小説らしきものが続くと思ったらそこで一気に創作になっていった。最後、管理会社の迷惑フォルダに入ってたけど対処します、のメールで終わってるのも良かった。
やさしくしてくれる人までブロックするのに、母のこともそれなりに恨んでいるのに家族のために保険金を残して死にたい、というのがわからなかった。姪があまりにかわいいとか、まともに生きなければならない強迫観念(母にはそう教えられているが自ら崩されてもいる)があればまだ共感できたかもしれない。でもそれすら含めて「自分以外全員他人」なのだろう。他の受賞作と比べて文学的表現も薄く最初もエピソードより独白が続いてこの小説はタイトルが一番の成功だと思った。
人間失格があれだけうじうじしてても読めるのは表現もさることながら今と時代が違うからかもしれないと思った。入水心中などあまり今ないので。この作品は自分より恵まれてるところもあって、コロナこととかうじうじうるさいな、と思ってしまう。元恋人の夕子さんとか同僚の同じく死にたい人とか、回収されないまま終わる人達が私小説らしかった。
Posted by ブクログ
主人公の社会に対する視点、ぶつけることができない憤りを同じように感じているからこそ、自己投影ができた。
どこかにこの憤りをぶつけてもいいと暴走しかけた時、自分は歯止めが効くだろうかと考えさせられた。
真面目、誠実さだけを大切にしていたら、今の社会ではとても生きづらい。
良くも悪くも程々の図々しさを持つことが大事だと改めて感じさせてくれた。
Posted by ブクログ
マッサージ師として働く柳田はもうすぐ45歳、友人はおらす趣味もなく塞ぎ込みがちで些細なことにイライラしてしまったりする日々を送っています。そんな彼が気分転換のために自転車を購入、遠出を繰り返すうちに楽しみを見出しますが、今度は自転車のことで様々な苛立ちを感じるように。
賛否あると思いますが、一貫して陰鬱な印象。学びや成長ではなく破滅に向かっていこうとする主人公の様子にシニカルな印象を受けました。星3つとしました。
Posted by ブクログ
『了解。他に食べたい物があったらまたLINEして。』
どこの家庭もだいたいそうなのかもしれないが、母は私が家に行くとやたらと食べ物を出してきた。心もとない小さな生き物を、とにかく大きくさせることに心血を注いでいた頃の名残りなのだろうか。もう十分大きくなった。今さら食べても仕方ないのに。
ここだけは穏やかに読めた。
確かに…ですね笑笑
ラスト、急に感情を爆発させるのにはびっくり。登場人物にそういう人いるいるって思うし
分からなくもないけど、そこまでイライラしたりこき下ろしたりしなくてもと思ってしまった。
イライラするのにもエネルギーが必要だろうに…
無関心は最大の防御。
Posted by ブクログ
犯罪をおかしてしまう方の気持ち・生活ってこんな感じなのかなぁと思いました。つらいだろうなぁと。最後のように優しさはほんのそこまできているのだろうに、受け取れない。その壁になっているものはなんなのだろう。タイトルどおり自分以外は全員他人って感じるってとても過酷だろうな。
Posted by ブクログ
ちょ!?ちょちょちょちょっとーー
(読後すぐの感想)
生きづらさを敏感に感じる主人公柳田
常に死にたい、生きるのを辞めたいと考えながら生きている。
追い打ちをかけるのがコロナ。
コロナ禍になり、人々が益々自分中心になり、我先にと他人を思いやる気持ちがどんどん薄れていく。
他人のちょっとした言動や行動が、自分の意図しないことが気になり出すのは、ある意味他人への期待値が高いのだろうな...とも思う。
凄く人間臭くて共感できた。
死にたいがために不食を試み、どんどん痩せてはいるものの、自転車に乗ると気分爽快になっているところは救われる。
最後の数ページの勢いが強くて、まるでホラーでした笑
イライラは溜めない方がいい!
Posted by ブクログ
タイトルに共感して購入
しかし、このタイトルというのは主人公の周りの人間を表したものであり、当の本人は真逆の存在。加え、その言葉を母親から言われた主人公は、受け入れることができず、体が拒否反応を出してしまう。
前半は、共感する部分も多かったが、後半は主人公の暴走気味の行動に少し置いてけぼり感を感じてしまった。
Posted by ブクログ
第39回太宰治賞受賞作。
「自分以外全員他人」というタイトル、良い。
太宰治賞は大好きな作家の今村夏子さんが過去に受賞されている賞なので毎年チェックしている。
「自分以外全員他人」の西村亨さんは太宰治賞の受賞のコメントで、昔から生きづらさを抱え、早く死にたかったと答えていたのが衝撃的だった。気になって西村亨さんの他のインタビューを読んでみたら、死ぬ練習をしていたとか、遺書を冷蔵庫に入れているとか…色々と驚きが多かった。
この本はタイトルにも惹かれたし装丁も素敵で、だいぶ前から手元にあった。買ってすぐに少し読んだ時、主人公の柳田譲が著者の西村亨さんそのものに思え、読みたいのに読んでいいのだろうかというような感覚になってしまい、少し寝かせることにした。コメントやインタビューから受けた衝撃が少し強かったのかもしれない。でもいつか絶対読もうと、ずっと近くに置いていた。
その間、西村亨さんの2冊目「孤独への道は愛で敷き詰められている」が出版された。恋愛小説かなと思わせるタイトルと、前作とお揃いの素敵な装丁が、統一性があって個人的に好き。まだ「自分以外全員他人」も読み切れていないなかったのに、迷わず買った。
西村亨さんが2冊目の小説を出しているということが嬉しかった。1冊目を読み終えてしまっても次があるのだと安心したら、「自分以外全員他人」はあっという間に読み終えてしまった。
内容は終始暗く、主人公はどう考えても西村亨さんにしか思えないというほどの、私小説感。すごくリアルで、ドキュメンタリーを観ているような感覚だった。ある意味、西村亨さんが死ぬ気で書いた小説…とも言えるのかもしれない。だからなのか、読み終わってからもずっしりと心の中で残っていて、感想も、何と言っていいのか悩む。実際これを書いていても、私は多分柳田譲のことよりも、西村亨さんのことを考えてしまっている気がする。私小説の凄みを知ったような気がする。
いつ死んでもいいと思って生きている人は、最強なのではないかと思う。そしてそんなことを堂々と言ってしまえる人は、正直な人だなと思う。そんな人を応援したくなる。これからも西村亨さんの書く小説が読めるのを楽しみにしています。
Posted by ブクログ
その通りじゃん!なタイトルに惹かれて読みました。
自分は柳田さんの言っていること、分かってしまう側の人間です、たぶん。「分かる」なんて簡単に言ってはいけないのだろうけど…。私小説なのか不明だが、世の中にこういう人がいる(いてくれる)と思うと、ちょっと救われる。こんな考え方も、生き方もある。私はそれを知るために、小説や映画に触れるのだと思う。
ただ、周囲への不満が抑えきれなくなる後半は、分かるけど今の自分には共感できない領域まで主人公が到達してしまい、読んでいて複雑な気持ちになった。
自分以外全員他人だと理解しているはずなのに、いちいち傷ついたり憎んだり期待したり。自分ばかり、何故、と思うから余計イライラするのだろう。
悪く言えば子供のまま。自分にも他人にも、鈍感に生きれたらいいのにね。スルースキルを身につけろってか。
人生って、いかに折り合いをつけていけるかどうかなところがある。それが上手くできないと辛い。
他人は1%も分かってくれないし自分も知人のこと1%すら分かってないかも…というめちゃくちゃ当たり前の現実に初めて出会ったように毎度傷つく、そういうことを丁寧に書いている小説、好きなのだけど読んでいる最中こっちも負傷するから、でも好きだ。
Posted by ブクログ
「ただ、死ぬならなるべく人に迷惑をかけない形にしたいとは思いますけどね。取り込みとか飛び下りはもちろん、その姿が発見者にトラウマを与えるようなことにならないように。そうゆう配慮の無い自殺はみっともなくてダサいと僕は思います。」