あらすじ
「人間荘」に越してきた私が押入れの奥から見つけた1冊のノート。そこには歴代の住人たちの哀しくも恐ろしい人生の記録が記されていた──。(「誰にも出来る殺人」)彼女のため殺人まで犯すほど恋い続けた女性を失った。絶望した男は、残された金で半年ごとに異なる6人の女との情事を愉しみ、死のうと決めるが……。(「棺の中の悦楽」)人間の欲望を見事にえぐり出したノワール・ミステリの傑作!
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Posted by ブクログ
「棺の中の悦楽」目当てで購入。「誰にも出来る殺人」はすでに読んでおり、これが山田風太郎得意の書簡体小説だが、「棺」はそうではない。「棺」の方が後に書かれたせいか、初期のミステリ作品に比べ、人物や場面の描き方が丁寧になっているように感じた。もしくは、これまで読んできた作品が、語り手の独白が中心のものが多かったから、そうではなく三人称で描かれることによって、そう感じたのかもしれない。個人的には、第三の花嫁に手を出せずに躊躇するところ、第四の花嫁をいたぶり、それをただ見ている無力の夫に自分を投影する箇所が面白かった。
自分としては過去最高級に面白かったが、読書会で発表したところ、受けは微妙であった・・
あらためて考えればやはり山田風太郎は娯楽小説の域を出ないのだろうか?いや、そうでないと思う。主人公は決して特異な人物として描かれてはいない。むしろどこにでもいる、「誰にも出来る」、「誰にも起こりうる」こととして描かれている(こんなに破天荒な内容に思われても)。「誰にも出来る殺人」にあったように、人は殺し合い犯しあい歴史をつくってきた存在で、人間とは生まれながらに愚かなのだ、教育では如何ともし難いのだ、と山田風太郎じしん、わかっていながら、やはり愛すべきものとして人間を描いているのだと私は考える。
Posted by ブクログ
※誰にも〜は廣済堂版で先日すでに読んだので、ここには、評判をきいて手にとった、同時収録の棺のなかの〜の感想を書きます。
すごく面白かった!
主人公が特殊な状況にいるのに、わりと普通の感覚を失わないので、そこに好感が持てた。
期日までに大金を使い切る、というテーマはインド映画にもあったなぁ。人間の夢だよね。
この場合は破滅的な理由から始まるので、主人公は鬼気迫る想いなんだけど、3年の期日はけっこう長くて、そのあいだに、感情が動く様子も面白い。
自棄になって、けっこうすぐに本心を明かしてしまったりする。
6人の花嫁たち、そのドラマ。どの女たちも一種の理想だし、みんな最後にはあっぱれの覚悟を見せてくれる。
主人公よりよほど男前なわけ。
速水の顛末は想像がついたけど、最後の台詞のどんでん返しは最高だな!
山田風太郎のストーリーテラーとしての力をこれでもかと見せてくれた本作、むちゃくちゃ気に入りました。
面白い設定だなーー。
この1500万は、今で言えば億単位なんだろうね。
男のロマンであるところの幻想的な、女と金と時間。
この世は淡い夢のようなものだ。
ラストで現実に叩き落されるさまは痛快でもあるし悲哀でもある。
オチの書き方も素晴らしかった。大満足。
Posted by ブクログ
女って怖いgkbr。読んでる間ずっと薄ら寒さを感じました。
男を手玉に取る女達の恐ろしさやエロティシズム、業をまざまざと描写した中篇2編を収めています。
最初の「誰にでもできる殺人」は、とあるアパートの一室に越してきた男が、押入れの隙間に隠された一冊のノートを見つけることから始まります。
そのノートにはその部屋にこれまで入居してきた人々が綴る奇妙な体験談が綴られており、彼等の話の中心にはいつも1人の女性がいて・・・っていう、何とも分かりやすいオムニバス形式のサスペンス・ホラー(?)。
奇妙な住人、奇妙な事件、奇妙な符号。
真実に限りなく近い印象を持つ読者のもどかしい気持ちを高めながら、次々と悲劇的な結末を迎える住人達の数奇な人生が、視点を次々と変えながら語られていくのが面白い^^そしてあのラスト^^
あんまり意味を成さない見取り図があるのもご愛嬌ですね^^
二編目の「棺の中の悦楽」は、初恋破れた男が、曰く付きの大金を使って女達を弄ぶ話なんですが、最後に意外な展開があったり、意外な人物が男の人生を破滅にまで追い込むっていうラスト数ページの件^^主人公ドンマイ
あれ・・・今回ただ内容要約してるだけじゃん・・・