あらすじ
小市民を志す小鳩君はある日轢き逃げに遭い、病院に搬送された。目を覚ました彼は、朦朧としながら自分が右足の骨を折っていることを聞かされる。翌日、手術後に警察の聴取を受け、昏々と眠る小鳩君の枕元には、同じく小市民を志す小佐内さんからの「犯人をゆるさない」というメッセージが残されていた。小佐内さんは、どうやら犯人捜しをしているらしい……。冬の巻ついに刊行。/解説=松浦正人
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Posted by ブクログ
米澤穂信の文体はするする読める。高校卒業後もふたりの関係がきっと続いていく感じ、素敵だなあ。最初の頃の殺伐とした感じとはずいぶん違うよね。感情がある。
そしてどんどん事件が大きくなってきたけど、これはもう続編てないのかな。ここで終わりなのかな。さみしいけど、きれいな終わり方かなとも思ったり。
Posted by ブクログ
2025/07/04
p.239
車椅子のタイヤの固定が甘かったのだろうか。ぼくが座ろうとした瞬間、車椅子はわずかに後ろに下がった。
椅子に座るつもりで腰を下ろし、寸前で椅子を引かれれば、誰でもろくに受身も取れずに倒れ込む。声にならない悲鳴が、喉の奥でくぐもる。心拍数が跳ねあがる。
瞬間的な恐怖という尺度で言えば、車にはねられた時よりも怖かったかもしれない。けれど幸い、車椅子が動いたのはほんの少しだった。看護師さんがハンドルを握り、車椅子は止まって、ぼくは無事に座面に腰を下ろす。
2025/07/21
p.231
見つめていてもサンデーが復活したりはしないという現実を受け入れたのか、小佐内さんはサンデーグラスを少しテーブルの端に寄せる。
ここまでの話をまとめると、日坂くんは交際相手の岡橋さんではない誰かからお守りをもらった可能性が高い。
そして、自分が車に轢かれたとき一緒に歩いていた人のことを、隠そうとしている……。
考えられるパターンは、ざっと7つぐらいはある。そのうちのどれが真実なのか知るために今日できることは、もうなさそうだ。
初夏の日は長く、外はまだ夕暮れの気配さえもない。今日はいろいろあった。防犯カメラの映像を見て、堤防道路を歩き、学校まで戻ってきて牛尾くんの協力を取り付けた。
ぼくがいま思っているのと同じことを、小佐内さんが呟いた。
「あとは明日。今日は、おしまい」
2025/11/18
p.416
「小鳩くんは、どこの大学に行くつもりだったの?」
「名古屋だった、近いし。でも、志望校も練り直さないと」
「わたし、京都がいいと思う」
藪から棒だ。びっくりして、ほんの少しだけ眠気が引っ込んだ。
「なんで?」
「わたしが京都の大学を受けるから」
なんだ。ぼくはちょっと息をつく。
「そう。受かったら教えてよ。お祝いのメッセージぐらいは送るから」
「教えない」
ベッドの端に、小佐内さんの手が置かれる。
「小鳩くんはさっき、わたしをとんでもない陰謀家みたいに言ったでしょう。わたし、心が傷ついたの」
「……それはどうも」
「それに、なかなか意識が戻らなくて、わたしをとっても不安にさせた。だからその報いがいると思う。来年小鳩くんが来るまでの間に、京都に迷路を作ってあげる」
静かな夜に、小佐内さんはくすくすと笑う。ぼくはまぶたを開けているだけで精いっぱいだ。
「おししいお店も探しておく。だからきっと、わたしを捜してね。そうしたら……最後の一粒をあげるから」
小佐内さんがぼくの枕元から、最後に残されたボンボンショコラの一粒を取って口に運ぶ。ぼくはまた、抗いがたい眠気にとらわれる。薬のせいではない、自然な睡魔に。
「おやすみ小鳩くん。わたしの次善。あなたが生きていてよかった。お大事にね。そうしてどうぞ、よいお年を」
ぼくの目は閉じていく。
――夜の底から、鐘の音が聞こえてくる。
小市民シリーズ完結 残念です
今回は甘味成分がボンボンショコラだけで、他の話と比べるとスイーツ度が少ないけれど、密室の謎あり最後に犯人との対決ありと、このシリーズでは一番推理小説らしくて面白かった。これでシリーズ完結らしいけど、米澤作品のヒロインでは小山内ゆきチャンが一番好きなので、ちょっと残念です。京都を舞台に大学生編も読んでみたい気もするけど、蛇足かな?でも、マカロンみたいにこれまでの事件の間に起こった事を短編で出して欲しい気もします。
Posted by ブクログ
小市民シリーズの完結。
大好きなシリーズだったため完結は寂しいが、シリーズものを最後まで読むことがなかったので感慨深いものがある。
主人公が小市民を志すきっかけとなった事も明らかになったので、また春から読み直してみても面白いかと思った。
Posted by ブクログ
<目次>
略
<内容>
とりあえず小市民シリーズの最終巻。そして小鳩くんと小佐内さんのなれそめも語られる。小鳩くんは命のピンチ…。けっこう第10章でどんでん返しも…。
Posted by ブクログ
小市民シリーズ、読破しました。
もうこの二人の物語の続きに触れることができないのは寂しい限りです。
ミステリーにおいても、その読みやすさにおいても、米澤穂信らしさ(かぶりを振る、のことではなく)を多分に感じられて、古典部シリーズが好きな私としては読んでいてとても満足度が高いお話でした。
各作品に感想はありますが、これは冬季限定の評価感想欄なので、それにだけ触れるとするならば
小鳩くんが置かれた特殊な状況を、特殊であるからこそ推理の穴とする手法は、感心させられました。
評価はシリーズを通してということで、星4とさせていただきます。
Posted by ブクログ
小市民シリーズの最終巻。
今回は主人公の小鳩君が車に轢かれて入院するところから始まり、回想によって過去二人が小市民を目指すきっかけになった事件が語られます。
過去の失敗、そして現在の入院生活の物語なので過去のシリーズに比べると全体的に暗いです。これまでは全体を通しての事件や謎がありつつも日常の謎を解いていましたが、そういった軽い謎解きのようなものがなく雰囲気がだいぶ違います。
ただ、過去の2人が出会い小市民を目指すきっかけになった事件が語られ、その事件が現在の事件に関わってくるというシリーズの締めにふさわしい内容だったと思います。
Posted by ブクログ
ひき逃げにあった小鳩くんの経過と並行して、これまでの2人の何かあったなと思わせることがここでわかっていく。人には事情があって、良かれと思ってしたことでもかえって迷惑なこともある。生きててそういうことたくさんありますよね。小鳩くん、本当に危うい立場にいたものです。無事でいてくれてよかったです。小山内さんさすがだなあ。早く良くなって二人でスイーツ巡りに行って欲しいものです。これで終わりではなく大学に行った2人の活躍も見られたら嬉しいな。
Posted by ブクログ
小鳩くんが轢き逃げに遭い、3年前の日坂くんの轢き逃げ事件と重ね合わせ真実に近づく。小市民を目指す二人の序章から終焉までが鮮やかに繋がる。最後は春夏秋と回想。お互いを必要とする気持ちもよく伝わって◎。
Posted by ブクログ
シリーズものと知らずに最終巻の冬だけ
読んでしまったので、
これまでのを読んでいたらもっと
独特の言い回しとか伏線とかが理解できて
面白かったかもしれない。
3年前の事件と極似しているひき逃げ事件だが
犯人は全然違って、現在の方が現在進行形で怖いことになっていたのは予想外だった。
小山内さんと小鳩くんのこれからの関係が気になる終わり方だった。
Posted by ブクログ
季節は冬。
たい焼きを食べなる小佐内さんと並んで歩く小鳩くん。
微笑ましい空気だな〜とにやにやしながら読んでいたら、まさかの轢き逃げ……
入院生活を送る小鳩くんと、犯人を探す小佐内さん。
3年前の事件の回想を通して、ふたりの出会いと「小市民を目指す理由」が明かされる大事な幕で、読んでいて関わる人の気持ちに胸がぎゅっとなる場面も多かったです。
そして入院中のふたりの繋がり方――まさかあんな形とは。
ずっと小佐内さん推しだったけど、今回さらに好きが更新されました。あの異常さ込みで最高に魅力的。
看護師さんも「怪しいな」とは思っていたけど、真相にはさすがに驚き。
正直、そこは少し“出来すぎ感”もあったけど、それでもほどよいミステリー感で面白い。
「来年小鳩くんが来るまでの間に、京都に迷路を作ってあげる」
「わたしの次善」
これ、もう告白じゃない?
最高のラブコールでしかない。
シリーズの締めくくりとして大満足の一冊でした。
大学生編を出して欲しいな。