あらすじ
1989年,ルーマニア.独裁が続くこの街で,高校生のクリスティアンは密告者になった.自由を夢見る17歳は,東欧諸国の民主化を伝える海外ラジオに耳をすませ,任務を逆手にとって,世界に真実を知らせようとする――抑圧された人々の祈りが,ついに国を動かすとき.革命の希望と痛みを描く,渾身の歴史フィクション.
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Posted by ブクログ
1989年ルーマニア
1989 ペレストロイカ、
ブルガリア、ポーランド、チェコスロバキアと社会主義体制が崩れて、
ベルリンの壁が崩壊して、
なのにルーマニアではチャウシェスク大統領の独裁が続いている、
国が混乱しているときって、ほんとに苦しい。
勇気を持って行動した人もたくさん亡くなっていく・・・
そうした人の犠牲の上に新しい世界が広がっていく。
けれど、それも一概にいいものとは限らない。
世界はそうして動いていくのだろう。
願わくば、良い方向に、幸せになれる世界を!
Posted by ブクログ
恐ろしい。身の毛もよだつとはこのことか。
国家規模で行われた洗脳と支配。
孤立させ、暴力と恐怖でお互いを監視させて、疑心暗鬼にさせる。日本でも何件か事件(北九州や尼崎など)があったが、あれを国家規模で。
これは、主義や思想などでは決してなく、ただの犯罪だと思う。
戦時中の日本もこのような感じだったのだろうか?
そして、今現在の隣の国も。
これはノンフィクションではないが、それゆえか、主人公の心情がこちらに迫ってきて、苦しくなった。
最後が、きれいに終わってないところも作者の意図らしいが、この革命はまだ終わっていないと感じた。
平易な文で書かれているので、中学生にもすすめたい。(小学生には刺激が強いかもしれない。)
Posted by ブクログ
1989年のルーマニア革命までの、社会主義国家が舞台の話。
とにかく読んでいて辛い。本当にこんな状況の国が、私が生まれてからもあり続けたのかと思うとゾッとする。周りを盗聴されながら生活する。周りの人間が、家族でさえも密告者ではないかと疑いながら日々を生きる。お粗末なインフラ。毎日店に並んでやっとパン1個買えるかどうか。比べるのはよくないけど、太平洋戦争時の日本より悲惨なのでは…と考えてしまう。でもルーマニアの場所すら覚えてなかったので、この歴史を知ったことはよかった。
Posted by ブクログ
ルーマニアと聞いて、人々は何を思い浮かべるだろう?
15世紀、吸血鬼ドラキュラのモデルになったワラキアの梟雄ヴラド・ツェペシュが活躍した。第二次大戦後には”社会主義国家”となったものの、“独裁者”チャウシェスクが君臨し、彼もまた、吸血鬼と言われた。本編は二人目の吸血鬼の時代である。
1989年のルーマニア、ブカレスト。17歳のクリスティアンは、物おじせず自分の意見を言う祖父と、働く母と三人暮らしだ。ある時、秘密警察に目をつけられ、米大使館員の息子から家庭の情報を得るように迫られる。体調の悪い祖父の薬と交換条件に任務を引き受けるが、家族や親友にも話せず、誰も信じられず過酷な精神状態に追い込まれる。一方で、気になっていたリリアナと付き合い始めるが。
チャウシェスク政権の崩壊のニュースは覚えているが、あくまでも他国の出来事という感覚だった。常に監視され、自由に音楽を聴くことも、発言もできなかった。自由のない時代‐直近の香港が近いだろうか。青春時代など、色とりどりであるはずなのに、邦題タイトルでは、街の色はモノクロだ。自我に目覚め、将来に希望を持った若者たちにとって、政府からの抑圧が、どれだけ毎日を蝕んでいたのか、受けていた心の傷がいかほどのものだったのかが察せられる。言論等圧の波は、いつ起こるかわからない。
やはり本書における衝撃は、クリスティアンが疑っていた、自分をスパイしていた相手の正体だ。本当に、誰の事も信用できない。そうさせてしまったのは、国民を守るはずの国家である。
Posted by ブクログ
社会主義・全体主義政権のもとで抑圧されていた、革命前夜のルーマニアを舞台とした小説です。
それまで「嘘」だと信じていた西側諸国の豊かな生活が本当に存在することや、ベルリンの壁崩壊を中心に周囲の社会主義国家が続々と自由化してゆくことを知り、自分たちだけが取り残されていることに言いようのない不安を感じます。
また、密告が横行する社会の中で、友人・恋人はもとより家族のことさえも信じられない状況や、「周囲の目・耳があるために事情を離せない」ことで生じた誤解によるすれ違いや仲違いは見ていて辛くなります。
たしかにこの作品は「フィクション」ですが、当時のルーマニアでは本当にあった生活がリアルに描かれているのだと思います。そういった意味で、これまで知られていなかった歴史を明らかにし、またルーマニアという国や社会主義という制度に関心を持たせるきっかけとなる作品だと思います。
決して読んでいて「楽しい」物語ではありませんが、読みながら現在の日本のように好き勝手に発言することができる(そうして流れてゆく情報が正確かどうかはまた別問題ですが)という環境のありがたさも感じます。
日本は社会主義国家だったことはありませんが、太平洋戦争中には「特高」がいて思想・言論の自由は制限されていました。そのような状況を変えようと決意して立ち上がった本作の主人公たちを尊敬しますし、自由に考えたり発言したりすることができることが「当たり前」にあることのありがたさを考え、この環境が変わってしまうことがないように気をつけないといけない、と感じます。