【感想・ネタバレ】「くぐり抜け」の哲学のレビュー

あらすじ

触れるでも、素通りするでもなく、「くぐり抜け」てみる。
共感とも感情移入とも違う――それは、「他者」を理解するための新しい方法論。

現象学から文学、社会学、生物学、人類学、リハビリテーション医療、舞踏、ゲーム・プレイ、男性性――
現代社会の諸相に向き合い続けることで浮かび上がる「弱さ」の正体。
個の強さが要請される今、他者とかかわり生き抜くための哲学的逍遥。


他者をくぐり抜けて理解するということは、その他者の周辺/環境情報を知るにとどまらず、その他者とのかかわりの中で自分自身を作り変えていくことなのだ。自分の身体に自分のものではない経験があって、それが動き始める局面をくぐり抜ける。(中略)その自分の変化に応じて、他者との距離が認知的にも、行為的にも変化する。そのような経験を積み重ねていくのだ。(本文より)



~~~「くぐり抜け」の哲学 目次~~~

はじめに ともに「くぐり抜ける」ために

1章 「くらげ」をくぐり抜ける――くらげの現象学
1.1 くらげの生にせまる
1.2 くぐり抜けの方法論:現象学というアプローチ
1.3 手を作ること
1.4 くらげの人文学史
1.5 踊るくらげと倦怠

2章 「現代社会」をくぐり抜ける――プレイとゲームの哲学
2.1 至高性のない世界へ
2.2 民主主義の他者をくぐり抜ける
2.3 傷つきしものはゲームを愛する
2.4 「人間のふるさと」へ向かって

3章 「男性性」をくぐり抜ける――新しい人間のふるさとへ
3.1 ゲームに傷つけられる
3.2 (再)プレイとゲームの哲学
3.3 共感できないものに近づく
3.4 マイクロ・カインドネスを信じる

おわりに くぐり抜けたその先へ
あとがき

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Posted by ブクログ

ネタバレ

くらげを取っ掛かりに、セクシャルティを分析することで効率化されゲーム化され、そして分断された現代のコミュニケートを再度構築する方法を探る本。途中まではあまり納得できず(特にくらげに女性性を見出している部分)読み進めづらかったが、終盤にかけての現在の男性性の問題点の考察は非常に鋭いなあと感じた。
男性の視点から男性性の問題点を考察した本は今の男性にこそ読まれるべき本。

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2025年10月14日

Posted by ブクログ

一つのストーリーを繋いでいくような感じではない。連載を取りまとめたからなのかな。
結論としてのマイクロカインドネスも、思想自体に納得感はあれど唐突で、「漫画の終盤で出てきた新キャラ」感があった。

しかし内容は刺激的で、PlayとGameの定義づけからのジェンダー的社会構成の変化や、「現代はラスボス後の消化試合」「『絶望』ではなく『取り残され』による孤独死」「ヒトは平等であればあるほど、恣意さな不平等に気付き、傷つく」など、ぼんやりと感じていたイメージを言語化してくれる妙味が多い。

Playの世界に堕ちきれない弱い人間が辿り着く、GAMEの世界→再殺部隊
弱いものによる弱いものへのからかい、Playの連鎖→TRAIN TRAIN

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2025年02月15日

Posted by ブクログ

「弱さ」をもった他者に「共感」するのでなく「くぐり抜け」という手法で近づきケアしようと試みる一作
くらげという他者から始めて現代社会に潜む「男性性の問題」に向けてくぐり抜けて社会に希望を見出していく壮大な本
「弱さ」を肯定できる社会をめざして

「弱さ」に苛まれて苦しむ人達に強く深く介入するのでも共感するのでもなく、その場その場での突発的・偶発的な「プレイ」によるマイクロ・カインドネスによって他者をくぐり抜けようと提案する、本書の主題である男性は勿論「弱さ」を抱えた人は押し並べて読むべき一冊

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2025年01月02日

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