あらすじ
熊本にある本屋兼喫茶店、橙書店の店主が描く本屋と「お客さん」の物語。石牟礼道子さんが逝った日「ただただ悼みたい」と訪れた人。“書くこと”を焚きつけた渡辺京二さんの言葉。縁あって催した“村上春樹朗読会”の夜。雑誌『アルテリ』に寄稿するハンセン病患者「関さん」と交わした握手――。文庫版のための書き下ろし・単行本未収録エッセイを増補する。
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Posted by ブクログ
熊本で本屋兼喫茶店を営む著者が、お店に訪れるお客さん、本業界の人、元従業員たちとの思い出を綴っている。
さまざまな人たちから母のように慕われていて、ご自身では無愛想であるような表現がされているが、愛情深い方なんだろうな、と。
『ゆうひとあさひ』の章が好き。ゆうひくんはいまおいくつなんだろう?
Posted by ブクログ
いつか行ってみたい本屋 橙書店。
読んだものと思い込んでいたが未読だった。
橙書店で紡がれる日々は、本のある場所での営みがとても自然でしっかりと続いている。
それは本と店、店と人、が無理なくあるからだろう。
読んでいてとても心落ち着く。
滝口悠生さんの解説でより輪郭がハッキリした思い。
解説を読む限り滝口さんは橙書店に行って事が無い。
それなのに。すごい。
Posted by ブクログ
「ほどほどに田舎の地方都市にある、橙書店という本屋兼喫茶店が舞台」の本。お客さんとのエピソード、不思議と広がるご縁、ふと訪れる悲しいお別れ。
おかえりと快く迎えてくれる親戚のお姉さんのお家のような、言葉少なに背中合わせに座っていてくれる親友のような。
Posted by ブクログ
もはや書店でもカフェでもなく、サロンのような。
著名な人もそうでない人も店主と語り、
時には語らずとも足を運びたくなる場所。
行かなくても、そこにあるということ。
Posted by ブクログ
著者は若い頃に読んで辛かった本を年を重ねてから読み返すと、辛い、悲しい、悔しいといった感情を内包しながらも、なんて面白い本なんだと驚いたとのことです。
私は昔読んだ本を読み直すことが今までほとんどありませんでしたが、もう一度読んで印象が変わることがあるのであれば、年月を経てまた読み直してみたいと思いました。
本書を読み終えて「コルシア書店の仲間たち」(須賀敦子著)を彷彿する本だと思いましたが、このレビューを書くにあたり、少し読み返してみると、「コルシア書店の仲間たち」を意識して書かれたと知り、私の見立ては間違っていなかったとわかりました。
Posted by ブクログ
地元熊本市ではじめ喫茶と雑貨のお店、その後2008年に小さな本屋さん「橙書店」も始めた著者。そんな場所に集まってくるお客さんやイベントのゲスト、スタッフといった人たちとの出会いや関わり、そして別れが優しい文章で綴られる。
熊本ということで、石牟礼道子や渡辺京二のような高名な人も出てくるが、多くは近所の人や立ち寄るお客、幾ばくかの期間勤めたスタッフとの日常のやり取りが描かれる。
書店の店主であり、また文芸誌『アルテリ』の編集も担当している著者であるので、もちろん本のことも取り上げられている。橙書店の棚に置かれているのは主に小さな声、かそこき声が聞こえてくる本たち。そうした本のことを語るところも印象に残る。
タイトル「橙書店にて」の「にて」のとおり、人と人、人と本とが出合う場所がとても大切なものであることを感じさせられた。