あらすじ
「悪魔」の正体は局地風(ゴッホ《星月夜》)、描かれた雲から降水確率もわかる(フェルメール《デルフト眺望》)、天気の表現でわかる作家の出身地などなど、古今東西の名画やマンガを天気という視点で見直すと、意外な発見に満ちている。画家たちの観察眼は気象予報士よりも凄いかも!? さらに、同じ地域でも時代の異なる作品を比較することで、温暖化などの変化に気づくことだってできる。現役気象予報士による美大の人気講義を再現。
1章 低地・高緯度のオランダが育んだ「光の絵画」
2章 島国イギリスの気象が生んだ「風景画」
3章 温暖なフランスだからこそ印象派が花開く
4章 豊かな日本の雲と雨
補章 漫画、アニメで描かれる気象現象
気象用語解説
感情タグBEST3
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P23 『夜景』
実際は昼で、薄明光線(P211)を描いたもの
P38 『あさきゆめみし』
宇治十帖もあるのは画期的
P218 蜃気楼
この図はわからなかったのでした
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絵画とは、対象物を見、それを画家の感性でカンバスに置き直すもの。絵画の中に雲や霧があればもともとどんな雲だったのか?を追いかけることができる。その頃のその場所の天候から、「描かれている場面はこんな天気のときだったのでは」という推理を重ねていく。さすが気象予報士の書く本。
この本を知ったきっかけはyoutubeの山田吾郎氏の絵画動画でみたことから。
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天気×アートのコラボレーション。絵画の描かれた時代や場所、内容が分かれば、絵画をもっと楽しむことができます。フェルメールやモネ、葛飾北斎や歌川広重らが描いた作品を、天気に着目しながら読み解いていきます。絵画の見方や表現を知ることで、分野を超えて深く広い世界に触れることができる1冊です。
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名画に描かれた雲、太陽光、風などの気象現象から、モチーフとなった季節や時間帯、その土地の当時の気候などが考察された、面白い視点の本。
一例として、同じ晴天の空でも、地中海の乾燥したイタリアの絵画と、比較的湿度の高いフランスとでは、青みの度合いが全く違う。
このような見た目の違い以外にも、描かれた天気は当時のその地域の人々や画家本人の心情をも表していることもある。
描かれた天気に注目してみると、絵を見るときの考え方もまた1つ変わってきそうだと思いました。
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数日前の天声人語でこの本が紹介されていた。
読んでいる途中だったから驚いた。
本書は気象予報士として活躍する著者が、名画(西洋絵画と浮世絵)や漫画に描かれる気象現象を読み解いていくもの。
それぞれの絵から説かれるのは、雨、雪、雲、風、虹、霧や靄、雷や夕焼け空といったものたち。
たしかに、気象という観点から絵画を改めて見るのは、新しい発見があって、面白い。
描かれている空の様子が豊かな表現になっているイギリス絵画の魅力を改めて発見した。
面白く思ったのは、ゴッホ「星月夜」。
あの火の玉のような星、月の表現はミストラル(フランス南東部に吹く強烈な局地風)を形象化したものではないかという、ホイットニーという学者の説が紹介されていた。
だとすれば、雨だけでなく、風も、浮世的というか漫画的な表現をしていたということにもなるのでは?と思った。
巻末には「補説」として、漫画やアニメの表現に見られる気象の表現についての解説。
宮崎駿の風、「ワンピース」「金田一少年の事件簿」「鬼滅の刃」の中の霧の描き方の比較など、興味深かった。
そして、最後の最後には気象用語の解説もついている!
何と親切な。
欲を言えば、名画を全部カラーで見てみたかった…と思う。
でも、まあ、それは今時ネットでもきっと見られるだろう。
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絵画から気候の情報を読み解くという発想は面白い。もっとも、それが使えるのは、画家が気象情報を正確に写し取っているというのが前提になるので、使えるサンプルは少ない。なので、続編は期待できない。マンガ関係の話は、ファンの妄想という言う感じがする。
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天気という視点で読み解く、世界の名画+マンガ、アニメ。
絵が描かれた当時の、その地域の気象にも言及している。
・カラー口絵4ページ
・はじめに
第1章 低地・高緯度のオランダが育んだ「光の絵画」
第2章 島国イギリスの気象が生んだ「風景画」
第3章 温暖なフランスだからこそ印象派が花開く
第4章 豊かな日本の雲と雨
補章 マンガ、アニメで描かれる気象現象
・気象用語解説 ・おわりに ・参考文献有り。
14~19世紀前半までの「小氷期」の影響。
太陽の光を求める人々の渇望に応えた、フェルメールの青空。
気象学を絵画に反映した、コンスタブルの雲の描写。
フランスの記録的な大寒波。その解氷を記録した、モネ。
モネの、時間と天候の追求は《ルーアン大聖堂》連作を
ずらりと並べたのを観たくなりました。
クラカタウ火山の噴火での火山灰は世界に。ムンクの絵にも。
広重の多彩な雨の表現や夕焼け、蜃気楼。
北斎の描く季節の雲の、種類と風。ベロ藍の青空。
マンガ(特に「鬼滅の刃」)、アニメでの気象現象と、雷、霧。
雪の結晶の流行の話で猗窩座が人だった時期が分かるのが、
興味深かったです。『雪華図説』や『北越雪譜』の後なのね。
絵画の中の気象により、季節や時間が知れるのが面白かったです。
他の名画ではどうなのかも、知りたくなりました。
但し、口絵以外の画像がモノクロなため、
色味や表現がうまく伝わってこなかったことが、残念。
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気象予報士から見た名画の考察ということで違う視点から名画を知ることができて良かった。
それにしても長谷部さんの画と気象の造詣の深さに驚き。
参考文献の数も一気象予報士の書いた新書のレベルを超えてるしさすが大学教授って感じ。
そんじょそこらの気象予報士とは明らかに違うな。
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息子が東京造形大学を卒業したので、そこで講師をされている気象予報士を知っているか?と聞いたら、受講していたらしい。
というわけでその人の書かれた本を読んでみることにしました。
有名な画家の描いた風景画の中の雲の形、光の表現、風の形などからその季節や、地域、時刻などを想定して、その表現の正確さであったり、アートとしてのアレンジなどについて語る。
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山田五郎のYouTubeをきっかけに購入。中でも広重と北斎、江戸を代表すると言ってもいい二人の絵師の空に対するこだわりポイントが違うという話は面白かった。北斎はモノクロ絵本も沢山描いてるから、色より形にこだわったんだろうな。
最後の章は直接名画と天気を照合しているわけではない天気の話だが、純粋にへー!と面白い。最近都内で霧を見ない理由とか、夕焼けの色が黄色よりと赤よりで時により違うとか、セミといったらミンミンかジージーのどちらを思い浮かべるかで出身がわかるとか。あとは著者は漫画がお好きらしく、漫画に出てくる天気関連の話も詳しくて興味深い(天気の技を使うキャラといったら個人的にはワンピースのナミを思い浮かべたのですが、取り上げてもらった!)。今日は空を見て帰ろうか。
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夫が面白かったからと勧めてきた。
絵画が好きな人なら読み物としては面白いかな。
気象予報士が絵画を解説するとこうなるんだーって感じ。
ぜいたくかもだけど、絵画や写真はカラーにしてほしかった。
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楽しい!
そんな目で絵画鑑賞したことなかった。
そうだよね、写真がなかった時代
絵画が、その頃の空気を残す良い情報源。
オランダ、イギリス、フランスの絵画と
日本の浮世絵、さらに漫画を取り上げて
「ここから天候がわかる」と
解説してくれています。
『鬼滅の刃』に登場した柱の必殺技をみて
気象用語が語源になってるぅヽ(´▽`)/
とテンションが上がる著者。
本当にお天気のことが好きなんですねぇ。
Posted by ブクログ
新しい視点での名画解説で面白かった。
が、「天気でよみとく」というほど、絵、そのものの理解のためにお天気を解説していくのではなく、名画の中の空模様から、その時の状況や、描かれた時代、地域の気象条件を 読みとくもので、むしろ、「名画からよみとく」と言ったところだろうか。
いずれにせよ、フェルメールの絵に描かれた積雲から、その時の降水確率は10%くらいだとか、ちょっとした蘊蓄は面白い。
また、フリューゲルの『雪中の狩人』を例に、
「1550年から1849年の間はヨーロッパ全体が寒かったといい、絵画に雪景色が急に増えていった時期になった」
という考察は面白い。
もっとこうした古気象学的な考察も多いかと思ったが、そもそも、考古学的に気象を考察するには、「絵画」のほうが少ないか。
舞台を日本に移し、浮世絵から読み解く天気は、広重と北斎の比較だ。
広重が、比較的忠実に季節、地域に応じて空模様を描いていたのに対し、北斎は、むしろ作品のモチーフに合うように、自由にお天気を描いていた傾向にあるという分析も面白い。
北斎の有名な「赤富士」の絵も、背後に広がるいわし雲から、「赤富士が見られる時の条件と異なります」と喝破する。
北斎は、絵の主題に合うように「晩夏から秋の印象的な風景を合わせたのでしょう」と、著者は推測する。
また、北斎の絵に見る「風」の描き方は、現代アニメにも大きな影響を与えたという考察も面白い。
というか、浮世絵の時代から、脈々と日本の漫画、そしてアニメにはその技法が受け継がれているという証左か。