あらすじ
俳優・長井短、初の小説集! 私たちは何度も同じ夜をなぞり続ける──。変わりたくないというピュアな願いが行き着く生への恐怖を描いた表題作に加え、アップグレードする時代についていけない女子高生を描く「万引きの国」、短編「犬山くん」を収録。
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Posted by ブクログ
三作品からなる短編集
その中でも私は題名にもなってる"私は元気がありません"が好きだった。もう心に沁みた沁みた。
この主人公雪と似たものが多かったし
年齢も同じというところが余計に感情移入しやすかった。
3人組で仲が良くて、でも突然その中の1人が亡くなる。そこから残った2人は遊ぶたびに台本通りのように変化を恐れる遊び方をするんだけど
そこが私と母のようで痛いほど共感した。
そんな遊びが続いてる中、写真をきっかけに雪と付き合ってるごろうが揉める。ごろう…とにかく良い。変化を恐れる人にとって、変化が怖いことじゃないと教えてくれる存在って向き合ってくれる人ってすごく貴重。
そして自分が元気じゃないことを認めさせてくれる、そのシーン泣けた。
誰かのせいとかこれがきっかけとか何かのせいでこうなったと自分に思わせがちだけどそうじゃないんだよな〜
元気がなくたっていいじゃない、元気がない時は元気がないなりに過ごせばいいんだって。
りっちゃんとも向き合うところもすごくよかったし、最後まさかのごろうが好きな人ができて別れるシーンも、人は変化し続けていくことを身をもって体験させられた。でもそれが全然悪くない終わり方で良かった。
犬山の章も男女の友情を変化を恐れながら
一方が変わる事を嫌悪してて、それもなんとなく分かって面白かったし、最後の章も友だちに良いと思われたいから自分の気持ちを押し殺して合わせてて、自分の心の変化を見てない素ぶりをする。これもこの高校生という狭い世界に閉じ込められると自分を殺して合わせていかないといけない苦しさがあって、でもそれを経験することによって本来の自分に気付けることもあるんだよなぁと。この章は好きになる相手がぶっ飛んでて面白かった