【感想・ネタバレ】秘密の花園のレビュー

あらすじ

日本小説の祖・曲亭馬琴、「八犬伝」を生んだ劇的人生!
200年の時を超え、作家の本分に迫る傑作長編!!

大名の家臣の家に生まれるも何一つままならず、彷徨い続けた青年時代。放浪の末、当代一の戯作者・山東京伝の門をたたき、蔦屋重三郎の店に奉公して戯作の道に踏み出す。葛飾北斎らとの交誼を経て、馬琴はやがて江戸随一の戯作者となりおおせるのだが……
妻は不安定、愛する息子は柔弱、『南総里見八犬伝』に着手するも板元とはトラブル続き。それでも馬琴は、武家である滝沢家再興の夢を捨てず、締切に追われながら家計簿をつけ、息子とともに庭の花園で草花を丹精する。
狷介で知られた馬琴の素顔、けなげな哀歓が鮮やかに蘇る。苦難の末、大戯作者が辿り着いた花園とは?

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ネタバレ

私の中の滝沢馬琴のイメージは小学生の頃読んだ山田風太郎の『八犬傳』に出てくる馬琴で固定されているため、他の作家が描く馬琴は「ふーん、こういう馬琴像もあるのか」という感想になることが多いのだが、今回のまかてさんの馬琴は山田風太郎の馬琴を更に豊かにした感じで、違和感がない。作中で馬琴と北斎のやりとりするシーンは「『八犬傳』には出てこなかったけどきっとこんな感じだったのだろうなぁ」と地続きで想像させるものがあり、なんだかとても嬉しかった。悪妻とされるお百さんの描かれ方も本作では救いがあっていいエンディングだったと思う。

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2024年09月08日

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ネタバレ

曲亭馬琴の一生、読み終えて「秘密の花園」という表題がふさわしいか疑問だが内容は多くの先行研究に基づき丁寧に事実を拾いつつも「人間馬琴」を描きつくす事に成功
歴史を楽しむポイントは人と人が意外なつながりがある事で、特に南総里見八犬伝が多くの人に読まれ愛好家が作家と交誼を結ぶ事も増えた
松前道広は馬琴の書を好み、息子の宗伯を医師として家臣となした、また宗伯は渡辺崋山とも友誼を結び肖像画まで残されている、この辺りの親交は小説の方が楽しめる

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2025年06月27日

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ネタバレ

同作者の作品は恐らく初めて。どうして本作を読もうと思ったのか思い出せないが、まあとにかく読みやすい。滝沢馬琴というビッグネームを主人公に、地の文多めで江戸の香りを延々垂れ流してくれる。筆によって成功することがわかっている人物なので安心して読めるのもうれしい。
流れに細切れ感があるのは冒頭の通り老人の回想だからこそのぶつ切りなのかと思えば、奥付で新聞連載だったと知って納得がいったようなそうでもないような。連載当時の読者は後から読み返せなくて困らなかったのだろうか?

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2024年09月12日

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ネタバレ

馬琴についての小説を読むのは、確かこれが初めてではない。だが、これほどドキュメンタリーに近いものは読んだ事がなかった。
滝沢興邦という名をもつ、武士の次男であった馬琴は、幼い頃から、武士の立場ゆえの、苦しみが絶えない人生を送ってきた。書に親しみ、俳号をもち、読み本作家として押しも押されぬ立場となっても、武士の誇りを捨て切れなかった馬琴。滝沢家の武士の矜持を現代の自分が思い計ることはできないが、馬琴にしてみれば当然、子も孫も、男子は武士として育てねばならなかったし、子女は武士に相応しいところへ嫁さねばならなかった。そのために、筆耕で稼いだ金が費やされた。

その生き方は、師である東山京伝と対比させて描かれる。京伝は町人で、金勘定は得意ではないが、それでもいくばくかの財産を残していた。遊女を身受けして女房にしているが、馬琴にはそんなことはとてもできない。でも京山の菊も後添いの百合も、百よりよほど気がよく、出来がいい女房なのは皮肉だ。

朝井まかてさんの女性はどの物語でも巧みに描かれるが、ここでは、女房のお百が白眉。馬琴にとって良い女房とは言えなかったかもしれないが、その強烈な個性が爆発する様は読み応えがある。長男の嫁の路(みち)についてはあまり詳細には描かれないが、馬琴との、口述筆記における信頼関係を築きあげるまでの、ちょっとしたエピソードが微笑ましかった。

蛇足
馬琴は鳥好きとしても知られていたが、これほどの規模でたくさんの小鳥を飼っていたとは!野鳥の他、金糸雀(カナリア)を飼っていたと言われている。江戸時代にオランダから輸入された小鳥で、馬琴はその歌声を楽しんだのだろう。それにしても、これほどたくさんの小鳥の声は相当の騒音だったと思う。家庭のストレスをここで慰めていたのだろう。初めに飼っていたのは猫だった。

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2024年02月22日

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ネタバレ

曲亭馬琴の一代記。

「八犬伝」はNHK人形劇で小学生の時にリアルタイムで見ていたので、おおよそのストーリーは知っていますし、
曲亭馬琴は山田風太郎の「八犬傳」を朝日新聞連載時にリアルタイムで読んでいたのである程度知ってるつもりでした。
本作は八犬伝がメインではなく、あくまで滝沢興邦(馬琴)の生涯を丁寧に描いていると思います。
これも新聞小説だったというのは何かの一致のようで不思議な感じです。
また、大河ドラマの後日譚的な要素もあって面白かったです。

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2025年10月18日

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ネタバレ

滝沢馬琴の一代記。
忠義を尽くした父親への権力者・藩からの不義理、主君に虐げられる日々への憤りを年少時代に経験し、自身で生きていく道や家名復興を目指す姿に江戸時代らしさを感じる。
強くあろうと生きてきた中で、老齢になってから、病弱な実子に告げる悔恨や弱さを吐露する場面が生々しい。
八犬伝を描き終えた後の、話の中では南総に理想の国を作りたかったんだという言葉が、馬琴の紆余曲折の人生と作家感を締めくくる言葉にふさわしい。

稗史小説の執筆法と楽しみ方を
「史実の種を見出し、文章を耕して種を蒔き、大いなる虚を育てる。」
(稗史を通じて人々に遥けき世界を見せる。)
と表しているが、著者(朝井まかてさん)の想いも載せているのか。

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2024年06月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

うーん、長く読み応えのある滝沢馬琴の一代記。戯作者として名を成しながらも武士の家名に拘り続ける妄執には呆れ果てながら、戯作者としても命を削るような態度には書かずにいられない業を感じた。
ただ「南総里見八犬伝」は面白いが、馬琴にはどうも心惹かれなかった。残念。

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2024年05月26日

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