【感想・ネタバレ】但馬日記 演劇は町を変えたかのレビュー

あらすじ

生まれ育った東京を離れ,家族で兵庫県北の小さな町に移り住んだ理由は「転勤」!演劇と観光の学べる専門職大学の開学,国際演劇祭の開催….新たな共同体をつくる試みは,コロナ禍や市長選の対立構造に翻弄されていく.芸術や文化による地域の再生は可能か?町に新しい風は吹いたのか?濃密に語られる三年半の記録!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

・便利になれば幸せになるとは限らない。
いや、たしかに、便利さが人を幸せにした時代はあった。かつて自動炊飯器が日本の家庭に普及しはじめた頃、日本の主婦の睡眠時間が一時間長くなった。一時間長く眠れることは、誰にとっても幸せだ。
しかし平成の30年、地方は便利さを故に疲弊してきたのではあるまいか。便利さ競争だけでは大都会に勝てるわけがないのだから、私は科学の進歩を否定するほど石頭ではないが、しかし、何のために便利にするのか、何のために効率を高めるのかという理念がなければ、科学はただ暴走を続けるだけになる。
豊岡演劇祭の理念は単純だ。アートのために便利にするのだ。トヨタの標語は「Mobillity for All」だが、豊岡演劇祭の理念は、「Mobillity fo Arts」である。
豊岡市はコウノトリを再生させ、そのために無農薬、減農薬の田んぼを増やし、そこで育った米を「コウノトリ育むお米」としてブランド化させた。これを彼らは「環境と経済の両立」と呼んできた。次に目指すのは、「芸術と経済の両立」だこう書くと顔をしかめる人もいるだろうから、念のため、注釈を付けておく。それは、「芸術と地域経済の両立」だ。豊岡演劇祭は、まだ日本のどの自治体も分け入ったことのない荒野に、足を踏み入れようとしている。

・感性を磨くことは重要です。それはとても重要です。
しかし、感性だけでは、矛盾に満ちた世界と戦うことはできない。
皆さんの感性。たとえば皆さんが差別を憎む正しい心が折れそうになるとき、本学で培った理性がかろうじてそれを支えてくれることを願います。芸術を愛する美しい心、世界中からの観光客をもてなしたいと思う優しい気持ちがくじけそうになるとき、本学で学んだ知性がそれをかろうじて救ってくれることを願います。

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2025年11月17日

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