あらすじ
キリスト教を中心とした西洋哲学がイスラームの世界ではどのように解釈されてきたのか、それがイスラームの哲学にどう影響を及ぼしてきたのかを、イスラーム法学者がわかりやすく解説。
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Posted by ブクログ
#2025年に読んだ本 11冊目
#2月に読んだ本 5冊目
イスラームに改宗した日本人の
頭の中が垣間見えるだけでも貴重な気がする
多様な知識をお持ちで
哲学で論じられてきた事柄について
イスラームでの考え方との
比較やら解釈やらがされています
わかりやすいと思うところと
わかりにくいと思うところが半々かなぁ
著者の主観による持論を展開するときに
ちょっと上から目線の語り口になるのが
気になるところ…
Posted by ブクログ
哲学と宗教の関係性に興味をもっていた。
西洋哲学にはキリスト教が下地にあるものも多いし仏教にしても哲学と境界が重なる部分があるが、では、イスラムはどう関与し、ムスリムはどう哲学するのか。著者の中田考は哲学博士でムスリムなので、恐らくそれを語るに相応しい。
ー イスラームには「義務」はあるが「権利」はない。イスラームでは社会契約論は原則ありません。そもそも、人権という概念がないのです。
西洋では人権概念は社会契約論のあたりから出てきます。自然法から自然権が出てくるわけです。
イスラームには人権概念がない、といっても、もちろん、イスラームにおいて、生命や財産の安全が保障されない、ということではありません。イスラームでは、「私には生きる権利がある」「財産を奪われない権利がある」とは考えません。そうではなく、神から「人を殺してはならない」「盗んではならない」と命じられているから、人を殺してはならない、盗んではならない、と考えます。その結果として、人間の生命と財産の安全が保障されるのです。法学用語では「義務の反射」と言います。
ー 動物も一度よみがえって審判を受け、不当ないじめを被った場合はその応報をすませて、そのまま消えてしまいます。天国に関しては、一人の遊牧民から「天国にはラクダがいますか。私はラクダが好きなのです」と尋ねられた預言者ムハンマドが「天国ではあなたが欲しいものが手に入ります」と答えられた、と伝えられており、動物が天国に入ることはあるようです。ただし、動物には責任能力がなく、懲罰もないので、天国と地獄の応報がない、というのが基本です。人間は最後の審判で裁かれます。審判を受けた上で罪を許される、ということはあります。子どもなど責任能力がない者には、審判はなく、天国に入ります。子どもは鳥の姿になって天国に入る、という伝承もあります。来世についてのイスラームの考え方は極めて法学的です。
ー イスラーム世界では、一般のイスラーム教徒は、イスラームを勉強した人のことを、自分の代わりに勉強してくれている、と考えます。だからマドラサで勉強しようという学生に寮を作り奨学金を出すのです。またイスラーム法は社会規範でもあるので、法学を専門的に学ぶと裁判官にもなれます。神学や法学の高等教育を受けた者は、大学教授や裁判官、法務大臣にもなれるのです。
だからマドラサの中で一番需要があるのは法学です。「これはハラール(合法)か?ハラーム(不法)か?」などという科目が一番需要があります。最近では食品のハラール証明、ハラール・ビジネスなどというものが日本にも入ってきているので、読者の皆さんも「ハラール」という言葉は聞いたことがあるかもしれません。イスラーム世界では人々の法学の理解度が非常に高いのです。逆に、西洋は法学に弱い。
哲学とは自らと折り合いをつけるための思索とも言えるような気がするが、法律は社会との折り合い、宗教は神との折り合いであり、最終的に自らの死生と、場合によっては死後の魂の範囲を含めて責任を取る。責任とは死後の空想世界としてのゲーム環境を輪廻や因果や楽園や地獄などで強いられる事になるという事を含む。つまりそれぞれの領域の違反性とその責任に対する心の持ちようである、という気がした。
無神論者は幼稚に見られるらしい。確かに、どんな合理主義者であっても神を考えずに世俗に囚われ思考を放棄するのは、幼いのかも知れない。思考の放棄は、幼いのだ。
Posted by ブクログ
非イスラム的観点からの著者の様な言説を山のように見聞きして暮らしてきているのでこれをもってイスラムとの関係が明快にとは思わない。
様々なイスラムが居るだろうし、原則を何処まで適用するかにもきっと議論があるだろう。
ただ、雰囲気は伝わってくる。
相違がある。前提も違う。
理解への第一歩にはなる。
また様々見聞した後で読み返してみたい。
Posted by ブクログ
プラトン 人間の本質は人間のイデア=「存在」
アリストテレス イデア=物質に内在するもの
存在の原因となる「不動の動者」=イスラムでは アッラー (ギリシャ:多神教)
教会:世界最古のかつ最大の官僚機構 皇帝/国家と教皇/教会の権力闘争
イギリス 経験論 憲法がない 社会契約=人権
西洋支配の二分法 キリスト教/異教徒
→三分法へ 西洋文明国/半文明国(オスマン/中/日)/植民地
イスラーム 国家という法人概念はない 義務はあるが権利はない
神=イラーフ 崇拝されるもの 人間は必ず何かに隷属、自由人は欲望の奴隷
無神論のマルクス(共産)主義 ↔ 資本主義
唯物論 精神も物の産物
イスラームとの共通点 1.偶像を否定 虚偽 国家と貨幣 2.終末論
イスラム経済の原理 アドル(正義) 疑わしいのもを受け取らない
利子の禁止 相互満足
イスラーム法
人間の内面に干渉しない フロイトのエロス 性から生へ
有益=善、有害=悪 相対主義、功利主義
スンナ派 神は全てを命じることがっできるが 神は善しか命じない
シーア派 哲学者 善悪は事物の客観的な本姓、神は善しか命じない
服従か不服従かが重要 善悪は二義的なもの
近代科学=アラビア科学の実験+ギリシャ科学の論証
Posted by ブクログ
イスラーム思想の歴史的推移を追いながら、西欧哲学思想を対置して紹介してゆくエッセイ。
もともとこちらにイスラーム思想自体の知識が少ないので、西欧哲学を対置してもそういうものなのか、という理解しかできないのだが、筆者のアピール(アジテーション?)によれば西欧的な人権・自由思想の究極として現れるニヒリズムを克服するのがイスラームであると説く。ニヒリズムの議論についても終章で足早に通り過ぎるのみであり、ニヒリズムに対してイスラームの優越性(超越性?)があるという議論についても十分な議論には到らず。また、たとえばタリバンに対する積極的評価もあるが、イスラーム原理主義などの位置づけについては言及されていない。まさかそれまですべて無価値であると断ずるものではなかろう。
企画と紙数の都合もあるだろうが、基礎的なイスラーム思想のアウトラインや哲学者・著作の紹介を行うか、後半における現代世界におけるイスラーム思想の価値を論じるかのいずれかに絞るか、あるいはそれぞれ独立した著作として読みたいものである。
以下気になるポイント
・イスラーム法哲学とケルゼンなどの近代法哲学の比較。p.194
・ロダンソン「イスラームと資本主義」(岩波書店)p.126
・バーキル・サドル「イスラーム経済論」(未知谷)p.143