あらすじ
「弱くなりたいと思うのって、そんなに悪いことですか?」
若い世代から厚い信頼を集める著者が、〈弱さ〉アピールのはびこる
現代のリアルを優しくあぶり出す会心の一作!
■あらすじ
ある日、知らない間に “チワワのピンバッジ” が付けられていたという
呟きがネットに溢れた。その数、なんと800人以上!
主人公・琴美の想い人も、被害者のひとりだった。
〈チワワテロ〉と呼ばれるこの奇妙な事件の直後、彼は姿を消してしまった。
「僕のことはもう信じないで」とメッセージを残して――。
どうして彼は姿を消したのか?
琴美は、親友で「全肯定インフルエンサー」のミアとともに、
彼の失踪とチワワテロの謎を追いはじめる。
炎上時代の本音に迫るリアルタイムストーリー!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
琴美は失踪した想い人の新太を親友のミアと一緒に探す。弱い琴美を可愛いと言い、琴美を守ろうとするミアは、弱い人に寄り添いありのままに全肯定してくれるインフルエンサーとして有名だ。失踪の直前、新太にはチワワのピンバッチがつけられていた。他にもチワワのピンバッチを知らないうちにつけられる「チワワテロ」が世間に起こり、そこからチワワがブームになっていく。新太を探すうちに、迷惑行為通報系YouTuberのMAIZUとチワワテロ、MAIZUが炎上するきっかけになった「チワワを救った少年」の事故との関連が浮かび上がってくる…
世の中の人はみんな弱くなりたい。強いものは責められるから、弱くなって、守られ、肯定されたい。そんなチワワシンドロームは、たしかにあるかもしれない。自分は被害者だ、傷を負っている、と自分で声高に言うことは、客観的にみるとなんかダサいな、って感じするけどまあ心理としてはあるかもな。その弱さを可愛いと言い、そんな君を愛しているよ、と全肯定して人気を得ていくミアは、弱さに寄り添っているように見えて実はすごく支配的で怖いんだけど、そんな彼女も悪なのではなくて、周りから期待される「ミア」から解放してくれる存在を求めている。世の中を善か悪かで二分して世間の評価は下されるし、善は同情を買い悪は炎上する、一方でこの小説に出てくる人には完全な悪はいない。多分MAIZUを半殺しにしたミアはこの後逮捕されて、世の中は人気インフルエンサーの逮捕で炎上するんだろうけど、ミアとて完全な悪とは描かれていない。世の中本当はそんなものなのに、みんなが善か悪かで物事を見ていて、だからこそみんなが確実に善であるところの弱さを求めるんだろう。生きづれえな。何はともあれ、かわいいチワワは絶対的善。
Posted by ブクログ
これだけたくさん「チワワ」と出てくる本を読んだのは初めてです。
チワワのピンバッジか、かわいい! と思いつつ読み進めたら、けっこう怖い話でした。
人の心を手玉にとるあの人が怖いです。
これはヒトコワミステリーですね。
弱さを出せば嫌われずにすむ。弱ければ可愛がられて守ってもらえる。確かになあ、と思いました。
Posted by ブクログ
不特定多数の人にチワワのピンバッジがつけられた。一体誰が、どんな目的で?
そしてそのバッジが話題になる頃、琴美と良い感じにお付き合いしていた男性が突如姿を消す。彼とチワワバッジは関係があるのか?
謎を追いかけていく過程で、更に世論の動きがあり、先が気になって一気読みした。
「弱くて誰かに守られる存在でいたい」
「誰かに心配されると安心する」
そんな風に考える人は、きっと多いと思う。
でも主人公の琴美は、そうして守ってくれる親友のリリに依存することに怖さを感じ始める。
人間は、守ってくれる存在や、励ましてくれる人に依存しがちである。もちろんその人たちに悪気はないし、心の支えがあることは大事。
けれども、弱いでも強いでもない、ありのままの自分でいることに揺らぎない自信を持つことも、同じくらい大事。
ありのままの自分が、誰かを支えたり、一緒に歩くこともできるのだから。
Posted by ブクログ
弱いもの,護られるものになりたいという心理がキーワード.チワワのバッジから派生していくミステリー.ユーチューバなどSNSによる配信と折り紙などの手作りアイテムでの仕掛けなど,バラエティに富んでいて楽しかった.
Posted by ブクログ
弱くなれば批判もされないし、たたかれなくて済む。だからみんな弱さを求める。弱さは恥でも何でもなく、生きていく術なんだとこの本を読んで強く感じた。一方で弱さを演出して周りから心配され自己肯定感を高めたり進んでポジション取りしようとする人もいる。なぜなら弱い事がメリットになるからだ。チワワシンドロームが社会を蔓延させたら一億総弱者の時代が到来すると思った。
"弱いもの勝ち"なんて言葉も生まれるだろう。
Posted by ブクログ
人の強さや弱さは何を持って判断するんだろう。
著者の既読作品『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』『きみだからさびしい』でも感じた孤独と生きづらさ。
本作でもSNSに翻弄され人との関係性に葛藤する人達が登場する。
主人公は大手人材サービス会社の人事部で働く田井中琴美。
尊敬する親友の穂波実杏は「ミア」の名で活躍するインフルエンサー。
親友とは言いながらも琴美はミアに庇護されているような存在だ。
チワワを弱く可愛いものの象徴と捉えたエモーショナルな作品だが、チワワだって時に牙を剥く。
読みながら自立の文字が何度も浮かんだ。