あらすじ
悠木葦人はある日、自宅の前で倒れていた少女を拾う。彼女の名は夜須礼ありす。おとなしいクラスメイトだった彼女は、同級生を殺害し、逃亡しているところだった。「大声を出したりしないって約束できるかしら?」「どのみちあなたは、今日のうちに死ぬしかないもの。」「運がなかったわね、悠木君。」目覚めたありすに凶器で脅され、葦人はありすを匿うことに。奇妙な同居生活のかたわら、彼女の殺人が信じられず、葦人は事件を調べはじめる。だが二転三転する事件の姿は、全ての出来事を一つの形に繋いでいく――。伊都工平が贈るボーイミーツガールミステリー、ここに開幕!
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Posted by ブクログ
“「アイツに気づかわれる理由なんてないと思うが」
「葦人の…………人殺しとかに真剣な興味があるのって、もう普通じゃないよ」
——なんか、地雷踏まれた。
「でも片理さんは葦人が破綻しかかってるのに気づいてて、だから——」
「あの、ごめん。やめてもらうわけにいかないか、その話」
何だかどうしようもなくて俺は、そんな言い方をしてしまった。
弱って、フォローしようと言葉を探しまくって、しかしうまく言えない。
「……頼む。俺、無理なんだ」
片理に甘えてるのなんて、自分でも分かってる。知っている。
しかしだからって俺には、どうしようもない。”[P.90]
視界が図形になるところ好き。
“「いや嘘だ。隠していることがある」
俺は頑なとして言い返した。
そしてありすは気がつき——思った通り、怒りの『表情』を浮かべた。
「……また私のことを読んだの?」
嫌悪感と、拒絶感と、憎悪と。
それら全てが混ざりあった巨大な怒りが、一瞬の内にありすの上で膨らんだ。
だが。
その感情の爆発は空気が抜けた風船のように、あっという間にしぼんでいき、消滅する。
あとには木椅子にちょこんと座った、『うにゅ……』って感じの困り顔のありすだけが残っていた。”[P.230]