あらすじ
32歳のピアノ講師・田口琴音は、さいきん仕事も恋人との関係もうまく行っていない。そんな中、ひさびさに連絡をとった友人との再会から、事態は思わず方向へと転がっていく――。静かな日常の中にひそむ「静かな崖っぷち」を描き、心ゆすぶる表題作(第170回芥川賞候補作)。
選考委員の絶賛を浴びた文學界新人賞受賞作「アキちゃん」を併録。「すべての結果としてこの作品は、新人離れした堂々たる手腕を示すことになった」(川上未映子氏の選評より)
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Posted by ブクログ
表題作の「アイスネルワイゼン」はヒューマンドラマ、もう一つあった短編の「アキちゃん」は青春ヒューマンドラマというジャンルに分けたいと思います。
「アイスネルワイゼン」の主人公は「田口琴音」32歳のピアノの先生です。しかし独立でピアノの先生をしているのでフリーです。
田口琴音には周りに知り合いや友人が何人かいました。その中での琴音の立ち位置を書いていたのですが、読み進めていくうちに琴音の人格が徐々に壊れていくような気がして、読み終わった後、いや~な気持ちになりました。しかし話の内容は面白かったです。
この「アイスネルワイゼン」という話は、単なる小説としてではなく、自己啓発本としても参考になりました。読者の自分にも問われているような気がして、「この環境下であなたはどう動きますか?」って聞かれているようでした。田口琴音の周りの人たちが特徴ある人ばかりで、「小林由香」の電話からすべてが始まっていくけれど、「よし子」のピアノ伴奏をお願いされたり、「赤井優」の自分の子供にピアノを教えて欲しいとか、周りから影響を受け続けて自分というものが何なのかわからなくなっていく所が面白かったです。
また、琴音自身もプライドが高くて、自分の才能を信じてピアノ教室をしているし、琴音は恋人はいるがまだ結婚はしていない、周りの人は結婚している、その環境に反抗したかったのではないかと思いました。田口琴音の「静かな崖っぷち」の意味もだんだん分かってきました。
短編の「アキちゃん」も読みました。自分は途中までこの「アキちゃん」を女性だと思い込んでました。後々になって男性の言葉遣いをするから変だなぁ~とは思っていたんですけど。
男性であるにしろ女性であるにしろ、自分はこの短編を読み終えてこの「アキちゃん」がムカついてくるような感じでした。でも話は面白かったです。後味は悪くなるかもしれませんが、自分はこの本に出会えて良かったです。一番高い星5つの評価をさせていただきました。
Posted by ブクログ
仕事先で理不尽な要求されたり、馬鹿にされたりする不条理な話だと思ってたのに、端々に主人公の毒を吐き出すシーンが出てきて、ラストには暴れちちらかして元に戻るのが不可能な所まで突っ走る爽快な終わり。
どんどん面白くなっていくあんまり感じたことのないワクワクを体験出来た、主人公が1番狂っている人だということははじめ分からないので徐々に本性を表してからがめっちゃ面白いです。
もうひとつ短編が付いてますがこっちは普通かな。
Posted by ブクログ
アイスネルワイゼン⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
初めは彼女に同情させられていたものの、物語が進むにつれ何かがおかしいと感じていく。彼女が見ている世界を認識させられ、共感したくないのに共感してしまう。
登場人物の性格の悪さが際立つ中で、琴音の性格の悪さが群を抜いている。読んでいても、なんでそんなこと言うんだ。なぜそんな行動を?と言いたくなるような行動しかせず、琴音から目が離せない。
琴音に同情するのなら、幼少期から自分が本当に欲しいものではなく、母から託された夢を抱えて生きてきたが故、自分の手元に残る物が何もかも重く感じる。だからこそ自分にまとわりつく重たい物を全てを捨てたのに、追い打ちをかける最後の台詞。こんなに軽い物なのに何を重たがってるの?と言われているのと同じ。自分がこれでいいと信じてきた道を本当に名前も知らない女性に崩されるのは絶望と言える。
精神状態も経済状態も常にギリギリで生きていく琴音。彼女がこれから何を求め、何を手にしながら生きていくのかを想像したい。
アキちゃん⭐︎⭐︎⭐︎
皆が物事について多くの事象を知らない段階で人物相関が形成される、小学校という舞台設定であるからこそ、アキちゃんの秘密を読者に隠し通せたのかな。秘密が明かされた場面にて初読で「なるほど」とならず、再読して理解できた。
ただ、わたしがアキちゃんの好きな人を知った後にがっかりした理由がイマイチ納得できない。「アマ」という表現がミスリードになっていたと思うけれど、わたしは「アマ」という言葉をアキちゃんに対して使っていたということは、少なくともアキちゃんを女性として見ていたということだと思う。
わたしはアキちゃんを女性として扱っていたけれど心のうちでは男性であって欲しかった?
だから、アキちゃんの好きな人が男性であることにがっかりしたし、最後の場面でアキちゃんの中学時代を聞き、男性であるということを皆から嫌でも解らされるアキちゃんを想像していたのか?
だからアキちゃんが身も心も男性であった時の姿を想像するために、アキちゃんの兄のところへ通っていたのか?アキちゃんの兄の低く重みのある大人の男性の声を聞いてドキドキしていたのか?
色々なことを考えられるのも小学校という舞台であるからだと思う。大きな叙述トリックがある小説を読むと、どうしても「ズルい!」っていう感想が出てきちゃうな。面白かった。
Posted by ブクログ
「アイスネルワイゼン」
主人公の思考や行動が予測不能で面白かった。常に静かな悪態をついてて、色々と限界なんだけどパワーがある感じ。
「アキちゃん」
小学生の頃を鮮明に思い出した。アキちゃんほどワガママで横暴な子はいなかったけど、相手のものを相手以上に自分のもののようにして振る舞う小学生いるよなぁと思った。女の子だと思って読んでいたから、まさか男の子だったとは思わなくてびっくりした。
Posted by ブクログ
アイスネルワイゼンとアキちゃんの二本立て。
アイスネルワイゼンは心情ゼロ。会話ベース。
いろいろ心無いこと言われて、最後は立つことさえできなくなってしまう。会話だけで、その人の考え、心だとは思わないようにしないと。
アキちゃん
いじめられたことがある人は共感できそう。普通に女子みたいなイメージで読んでたけど、男の子に産まれた心は女の子の話。でもそれにしたってイジメは最悪だよ。
憎しみについて詳しく書かれていておもしろい。憎しみにもパワーがいるんだよね。カルマとか宗教的なことも書かれていたんだけど、これってアレのことかな?と思ってしまった。
Posted by ブクログ
浅井リョウさんが、おすすめしていて読んでみた。確かに会話がずっと続いて、、、主人公の気持ちが一切書かれていないことに、歯痒さ、気持ち悪さを感じる。どうなの?どう思ってるの?と思わせる様な、災難や、相手との会話が淡々と綴られて最後、立っていられなくなるくらい泣くと言う終わりかたに、あぁ、やっぱりそうだったんだ。と自分ながらに、主人公の気持ちを汲み取って終わった。うーん、、、まだ続きがあるなら読みたい感じ。
二本立てのアキちゃん。
これは、素晴らしい!!自分も同じ様な経験した事のある!一喜一憂に、同調してしまうくらい、気持ちの再現、表現の仕方が素晴らしい!
小学校の苦い思い出を彷彿とさせる様に、憎しみを心で消化する所の文面が
きっと女の人にしかわからない感情なのだろう。
アキちゃんのみなら、⭐︎5つですね。
Posted by ブクログ
芥川賞候補とあるから、こういうのが純文学なのだろうか。
普段読まないジャンルの本だが、出版区の本ツイで朝井リョウがおすすめしていて気になった本。
朝井リョウ曰く「めっちゃ嫌な話」。
「主人公の心情が一切書かれない。濃淡なく出来事が描かれ、最後の最後で歩けなくなる瞬間が見られる。」
めっちゃ嫌な話なのに推すなんて気になる!と思い読んでみたら、比喩ではなく文字通り"歩けなくなる"話だった。
主人公の言動が裏表ありまくりな上、気持ちの起伏が激しく態度がコロコロ変わるので、なんか怖い、不気味だな…と思いながら読んだが、最後まで不安定さが落ち着くことなく、急に話が終わってびっくり。
何も解決してなくて怖い。
私には、嫌な話、というより現実に存在していたら怖い話だと思えた。
一方『アキちゃん』ではひたすら憎しみについて描かれている。
主人公とアキちゃんの関係がどうなっていくのか?また、それぞれに意味ありげな同級生達とのやりとりも気になり、ストーリーに引き込まれた。
小学5年生でこんな人間関係怖い…と思う一方で、小学生の独特な視野で見るとこういう世界になってしまうのかも、みたいな。
さくっと読めたし、2作それぞれの面白さ(不気味さ?)があり、自分では選ばない本だったけど、こういう読書も楽しいなと思えた。
他にも朝井リョウがオススメしていた本があったので、順に読んでいこうと思う。
Posted by ブクログ
仕事では不得手なことを任され悔しい思いをして、好意でプレゼントすればかぶるし、妊娠かもって不安を煽られるし、恋人とはうまくいかないし、発表会にゆあなちゃんを出させようとするお母さんにマンガ教室をすすめるのは、こじれた小林に再度連絡とりたくないからだし、亡くなった加藤美咲との思い出にビッグマックを買おうとすれば販売してないし、あれもこれもうまくいかずなかば自暴自棄になって人生が追いつめられていく感じで読んでてツラかった。
ラスト。
キャリーケースの中身を空っぽにして髪形も変えて心機一転やり直そうと決意したとき、
そこで不意にアイスネルワイゼンのメロディが鼻歌になって出てきた。
もう亡くなったかっちゃんに弾いてもらうことができないことを痛切に実感し、助けてほしいのに素直に助けを求められない自分自身のままならなさ、不安定な将来とか。
そういった感情に押し潰されるように、人生を生きる重みに耐えられなくなって涙あふれて立てなくなる。
そんな主人公の琴音は、職場の知り合いとか友達の友達にいてもおかしくないようなリアルな女性だった。
優が話す遺伝性の視力の病気からだと思うけれど、映画のダンサー・イン・ザ・ダークの雰囲気を思い出しました。