あらすじ
口さけ女はいなかった。恐怖の大王は来なかった。噂はぜんぶデマだった。一方で大災害が町を破壊し、疫病が流行し、今も戦争が起き続けている。何でもいいから何かを信じないと、今日をやり過ごすことが出来ないよ――。飛馬と不三子、縁もゆかりもなかった二人の昭和平成コロナ禍を描き、「信じる」ことの意味を問いかける傑作長篇。
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Posted by ブクログ
1967年生まれの飛馬、1950年(代くらい?)生まれの不三子、物語が始まった時は何の関係もない2人の人生を、順番に描いていく。
昭和中期以降、平成、そして令和。こっくりさん、口裂け女、ノストラダムス、Y2K…様々なデマが飛び、その度に大騒ぎするがデマは現実にならない。
一方で予想もしなかった現実の事件事故が発生する、大きな台風に洪水、大地震、オウムのサリン事件、原発メルトダウン。
根拠のない噂に振り回され、予想もしない現実に翻弄される2人は、子ども食堂のボランティア活動を通じて交差するのだが、それはもう物語の後半、そしてコロナ。
デマに翻弄される側だったはずが、デマを振りまく側に立っていた2人の姿を誰が笑えようか?
一国の総理大臣が自分の地位のために、SNSを通じて世論を操作する、これが都市伝説ではなくてどうやら現実であり、世界一の経済大国の大統領がSNSを駆使して気違いじみた戯言を発信する時代。
東北地震被災地が復興途上なのに人が来れないオリンピックに建築業者を割く国、能登地震の復興が全く進んでないのに万博に建築業者を割く国
愚かな姿な主人公たちは俺たちである。この小説はほろ苦い上に結末はハッピーでもバッドでもなく、ただただ愚かを続けていくしかない俺たちの薄暮の未来をまざまざとみせつける。
Posted by ブクログ
柳原飛馬と望月不三子の人生を昭和、平成、令和までそれぞれ交互に追っていく。
年代も違い、読み始めはこの二人がどう繋がっていくのか全くわからなかったが、後半にやっとつながりお互いに影響する。
どちらも全く違う人生なのに、親の影響を強く受け、方や反面教師のように母のようにはなりたくないと思いながら生きていき、方や父にずっと言われ続けてきたことが頭から離れず、自分はそう生きねばならないと思い込んで生きていた。
この本を読んでいて、親の子どもに与える影響の大きさに改めてにも引き締まる思いがする。
一方で、どんなに自分で考えて選んだ道でも間違うこともあるし、どうにもならないこともある。ギリシャ神話の方舟になぞらえてタイトルにある通り、神さまが選んだ人だけが生き残りほかの人類は死んでしまう。海に沈むという噂を信じるのか信じないのか。みんなが信じる方を自分は信じるのか、信じずに生き残ろうとするのか。
確かにこの時代は、ノストラダムスの大予言があって、オウムがあって、コロナがあって、大変な時だった。
今読み返しても、混乱が続いて異常だったし、急に決まったことに対して、議論の余地も考えるゆとりもなかった。
そういったことを本で読み返すのって、本当に大事だと思う。
SNS 等で繋がっているようで、自分から動かないと繋がれない時代。不三子は子ども食堂に行かなかったら、きっと孫や亮に不満を抱きながらくすぶっていたんだろうと思う。自分を活かす道があってよかった。飛馬も父の呪縛?から放たれて、自分の本当にやりたいことをやれそうでよかったと思う。今までもいいと思っていたことかもしれないが、自分の生き方や方向を考え直すいいきっかけになると思う。
Posted by ブクログ
2026年最初の一冊、
自分が正しいと思うことは時代と共に変わっていく。
物語は、大きな起承転結がなく淡々と時代が変化していく中で、主人公の飛馬と不二子の人生が交互に綴られている。飛馬は母の死の原因が自分の勘違いによること、祖父が災害を予言し町の住民を救ったことがあるかもしれないという出来事をずっと心の奥底に引きずっていた。
一方、不三子は結婚してから出会った一人の女性の「健康は全て食事から」の教えを忠実に守リ家庭をひたすら支えてきた。しかし娘は「自分の不妊の原因は、初めて打ったワクチンが原因である」と思っている。これを聞いたときの不三子の混乱はいかばかりかと思う。
昭和平成令和にあったさまざまな出来事は、懐かくもあり、あの頃はそうだったよな、と自分の人生を懐古しながら2人の生き方を辿っていく。
時代が変化していくこの世に正解なんて存在するのだろうか。現在は、AIがさらに発展を遂げ目に見えるものが真実とは限らない時代だ。
そして、自分が信じるものは、時に世論のイデオロギーと相反するものであるかも知れない。時代に流されることとなく真実を見極める力をつけるには、どうすればいいのか。
多くの人が信じるものが正解とは限らないし、周りに嘲笑されても己が信じたものが、未来で正解になることもある。
作者が伝えたいことが余りにも大きく、深く考えさせられた。
角田光代のメッセージに気迫が感じられた一冊だった。
Posted by ブクログ
なんと抑揚のない………
でも凄くリアルな話だった
最初に母が亡くなってウルっときて、途中に不三子が他人からご飯の事で頼られ嬉しがれたときウルっときた。母親って凄いよな。
不三子はちょっとやり過ぎだけど。
あとコロナワクチンね。
あの頃はきつかったなー、私が打ってないと知ると、「え?うそやろ?」みたいな反応で。いやいやそれはこっちのセリフ!って言葉を飲み込んだ。今後も自分で意志で決めよう。とにかく、抑揚はあまりないけどリアルな二人の人生の話だった。飛馬の考えも凄くよくわかる、無意識に人との予防線ができるように自分でいいように解釈したり、そういうところが人を遠ざけてしまっている。身に覚えがあるから落ち込む。
Posted by ブクログ
どの情報を信じるのか。
その情報は真実なのか。
病院でおばさんの会話を鵜呑みにした飛馬、マクロビオティック料理を信じた不三子。
そのせいで2人共、大切なモノを無くしてしまう。代償が大き過ぎた。
情報に振り回されるのは昭和も平成も令和も変わっていない。戦時思想も口裂け女も反ワクもある意味、同じなのかもしれない。(ノストラダムスの大予言も信じてたなぁ。)
自分が信じて行って来た事は果たして良かった事なのか。家族が離れてしまって自問自答する不三子に、胸が苦しくなった。
情報が氾濫する今日、真実の見極めはより難しくなっている。冷静に考えて行動しないといけない、と感じた。
Posted by ブクログ
第59回吉川英治文学賞受賞作品。
1950年代生まれの女性と1960年代後半生まれの男性が、噂や信仰に翻弄されて昭和、平成、令和という怒涛の時代を生きていく話。
というと大河ドラマみたいですが、等身大の私小説で年代や感性が自分と近くて共感しました。
ノストラダムスの大予言、口裂け女に始まって最後はフェイク映像と、世間を騒がせた似非情報に右往左往しつつも、本当の災厄といえる自然災害や人災などは対岸の火事っぽい距離感があるのがリアルでした。
別々の世代の二人が、人を助ける「こども食堂」で出会い、それぞれ正しい事とは、人助けとは何かを考えていくのも普通の人っぽいです。
地に足がついている小説だと思いました。
Posted by ブクログ
ながい!でも読みやすい。
ちょっと母親が自然食とか重なるところがあってすごいわかるわかる!ってことちゃんに感情移入したり…
過去から今まで、結局人は人が生み出した曖昧で確証がない、だけどどこか真実味があるものに突き動かされてしまうんだなって思った。
ツールと速度が違うだけで昭和も令和も変わらない。
結局正解なんてわかんないんだよなぁ、、、
Posted by ブクログ
2000年問題、地球滅亡、コロナのワクチン問題など我々はどの時代も情報に踊らされる。そして、それら情報に絶対はない。しかし、そんなわけないこともない。
「絶対そうだ」や「そんなわけない」と情報の表面だけをみてすぐに信じたり切り捨てるのではなく、そうかもしれないと情報の中身に目を向ける必要がある。
我々はどんなことでも物語や経緯がないと動くことができない。人に人の物語があり、あらゆることに物語を作ろうとする。そして、自分で作った物語を盲目的に信じようとする。しかし、他人の物語にはつい切り捨てがちで信じしようとしない。
物語は合っていることもあれば間違っていることもある。
だからこそ、自分で作った物語に固執してはいけないし、他人の物語を真っ向から批判するのもいけない。
そうかもしれないという白黒ついていない状態に慣れる必要があり、世の中そんな状態がほとんどであることを理解する必要がある。