【感想・ネタバレ】まだまだ仕事を引退できない人のための50代からのキャリア戦略 “バブル入社組”のリアルな声から導き出した3つの答えのレビュー

あらすじ

名刺も肩書も金にならない時代の「バブル世代」の生き残り戦略!

給料は下がり、肩書を失い、年金も満足にもらえず……
引く手あまただった夢のような就活から30数年、苦悩する“バブル入社組”はどこへ行く――

今のままで本当に65歳まで働きながら明るく楽しく生きていくことができますか?
会社から離れても、肩書がなくなっても明るく楽しく生きるために今から備えておくべきこととは?

会社に残る? 転職? 起業? 学び直し?
コンサルタントやアドバイザーの理想論ではなく、取材をした一人ひとりのリアルな人生戦略から学んだ「これからの働き方」の正解!
明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科教授、リクルートワークス研究所特任研究顧問の野田稔教授による「バブル時代の総括」と「バブル世代のこれから働き方」の解説・指南付き

「バブル世代に向けたセカンドキャリアの指南書」がついに完成!

【目次】
第1章 10社以上から内定通知! バブル時代の就職活動
第2章 バブルの悲劇はなぜ起こったのか?~50代会社員の今~
第3章 50代会社員、転職の「リアル」
第4章 会社員の生き方を変えた5つの決断
第5章 バブル組、就活の決算と新しい働き方~時代が変わっても生き残る方法~

※本電子書籍は同名出版物を底本として作成しました。記載内容は印刷出版当時のものです。
※印刷出版再現のため電子書籍としては不要な情報を含んでいる場合があります。
※印刷出版とは異なる表記・表現の場合があります。予めご了承ください。
※プレビューにてお手持ちの電子端末での表示状態をご確認の上、商品をお買い求めください。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

「引退できない」現実を受け止めるところから始まる

本書は、タイトルのとおり「まだまだ仕事を引退できない人」──特に“バブル入社組”と呼ばれる世代を主な読者層としている。著者の元永知宏氏は、リクルートでの豊富な人事・キャリア開発経験をもとに、50代以降のキャリアについて冷静かつ具体的に提案している。

まず本書が示すのは、「もうすぐ引退できる」という幻想を捨てることの重要性である。年金支給年齢の引き上げ、物価の上昇、家族への経済的支援──そうした現実を直視せざるを得ない状況下、50代からの戦略的なキャリア設計は“選択肢”ではなく“必須課題”となっている。

読者に突きつけられるのは、自分の「市場価値」を冷静に把握せよという現実である。経験が豊富だからといって需要があるわけではない。むしろ、古い経験や過去の栄光にすがっていては淘汰されるという厳しさを著者は繰り返し指摘する。


“バブル入社組”のリアルな声が突き刺さる

本書の最大の特徴は、著者自身が直接ヒアリングした“バブル入社組”の生の声に基づいている点である。

「役職定年後、急に“ただの人”になった」
「若手の部下から“古い”と煙たがられる」
「定年後に備えて資格を取ったが、まったく役に立たなかった」

これらの声は決して他人事ではなく、多くの50代が直面し得る現実である。その一方で、そこには共通する“諦め”や“虚無”だけでなく、新たな挑戦に踏み出した例も紹介されている。たとえば、フリーランスとして業務委託で働く形へ転身した事例もある。

本書は単なる“キャリア論”ではなく、“現場のリアル”から抽出された具体策を提示している点において、非常に説得力がある。


3つの答え──50代が今すぐ始めるべきこと

タイトルにもあるように、本書では“バブル入社組”の声から導き出した「3つの答え」が提示されている。

1. 市場価値の再確認とアップデート
過去の職歴や肩書ではなく、今現在の自分がどのようなスキルを持ち、どのような価値を提供できるのか──その“市場価値”を客観的に見直す必要がある。その上で、必要であればスキルの再習得やリスキリングを行うべきである。

本書では、リスキリングは難解なIT技術の習得だけでなく、営業力やファシリテーション能力、プレゼン能力など“人間力”を含むものであると述べている。この広い定義が、本書の読者層には非常に有効である。

2. 会社外のネットワーク構築
会社に依存しすぎないためには、「社外の人脈」を意識的に構築していくことが不可欠である。著者は、たとえ小さな関わりでも社外のプロジェクトや勉強会に参加することで、将来への道が開けると説く。

これは“人的資本”という観点で見ても、極めて理にかなっている。会社という枠を超えて、どのように“社会に接続しているか”が、50代以降の生き方を大きく左右する。

3. 心の持ちようと生活の再設計
キャリアとは、単なる仕事の話ではない。生き方そのものの再設計でもある。特に50代という年齢は、親の介護や子どもの独立、健康への不安など、ライフステージの変化が大きく影響する時期である。

本書では、「ライフキャリア」という視点を取り入れ、仕事だけでなく生活全体を見直す重要性を説く。つまり、「何のために働くのか」という根源的な問いに立ち返ることが、これからの戦略において最も重要となるのである。


「キャリアの棚卸し」は誰にとっても必要

本書の中で繰り返されるのは「キャリアの棚卸し」の重要性である。どんなに立派な経歴があっても、それを“相手に伝わる形”に再構成できなければ意味がない。

また、“再就職”だけが道ではないという点も強調されている。独立・副業・地域活動・学び直し──選択肢は多様化しており、自らの価値観やライフスタイルに合った働き方を模索すべきである。

そうした提案は、50代に限らず、30代・40代にも響くものであり、将来のキャリア設計を前倒しで考えるきっかけとなるだろう。


まとめ

『まだまだ仕事を引退できない人のための 50代からのキャリア戦略』は、単なる自己啓発本ではなく、50代以降の働き方と生き方を現実的に見直すための実用書である。

“バブル入社組”という一つの世代に焦点を当てているものの、そこで描かれている課題と提案は、今の時代を生きるすべての世代に共通する教訓を含んでいる。

引退できないという現実を前に、どう生きるか──その答えを模索するすべての人にとって、本書は有力なナビゲーターとなる一冊である。

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2025年05月30日

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