あらすじ
原題:Yerba Buena
その香りが、その空間が、そのひとときが、わたしを癒してくれる。
傷ついても、過去に囚われても────
サラは衝撃的な別れをきっかけに、16歳で家から逃げ出した。
向かった先はロサンゼルス。懸命に自立を目指し、数年後に人気のバーテンダーとなった。
エミリーは将来のプランが定まらず、自信が持てない大学生。
フラワーアレンジメントの仕事で訪れたレストラン<イエルバブエナ>で、バーテンダーたちにカクテルの作り方を教えていたサラと出会う。
ふたりは惹かれ合うが、トラウマや家族のしがらみ、喪失の記憶に囚われてしまう。
心の傷と向き合い、前に進むために必要なものは何か。
もがきながら自分の道を見つけるふたりの女性のラブストーリー。
【レビュー】
作り込まれたカクテルのように、さまざまな香りがじわじわと花ひらく……あらゆる感覚に訴えかける、細部まで色鮮やかなごちそうだ。・・・・・・ラクールの技がまぶしい・・・・・・ほろ苦さ、しょっぱさ、甘さが一気に押し寄せる。
――ニューヨークタイムズ・ブックレビュー
『イエルバブエナ』は、現代の複雑な愛についての考察である……サラとエミリーを苦しめるトラウマ、そして彼女たちの希望と回復が、穏やかで優しさに満ちた目で観察され、静かな散文に見事に表現されている……登場人物が魅力的な美しいフィクションだ。完璧なカクテルのように、飲み終わった後もずっと、記憶に残るだろう。
――サンフランシスコ・クロニクル
『イエルバブエナ』はご褒美のようで慎ましく、親密なのにとらえどころがない、これらが完璧に調和し素敵な香りが漂います。ミステリアスで魅力的なだれかがミックスした、見事なカクテルのよう。大切な作品です。
――ケイシー・マクイストン
ニューヨーク・タイムズ・ベストセラー小説『One Last Stop』、『赤と白とロイヤルブルー』著者
あなたの心が抱える真実と、あなた自身を守るための嘘。あなたを築いた道と、あなた自身が築く道。立ち止まることと、修復すること。本書はこれらのことが描かれた、極上の物語です。ニナ・ラクールは、彼女にしかできないやり方で、心を満足させ、感動的で、ずっと記憶に残るラブレターを書いたのです。人生のあらゆる“はじまり”へのラブレター。ほんとうに美しい。
――コートニー・サマーズ
ニューヨークタイムズ・ベストセラー小説『Sadie』、『ローンガール・ハードボイルド』著者
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
全く知らない、それでいて素晴らしい本との出会いがあるから、書店通いはやめられない。とても大好きな作品になった。今年出会えてよかった1冊。
家族にも自分自身にも様々な問題やトラウマを抱えた2人の女性が、それぞれに自分のやりたい事や生きていく道を模索しながら愛し合う、ラブストーリーであり成長譚でもある本作。2人が歩んできたこれまでの人生は決して明るく穏やかなものではないけれど、物語全体に漂う空気感はどこか静謐で、ハーブの爽やかで透明な香りが漂っていて、それでいて相手を求める渇きともいえる愛情を携えていて。読んでいて心が洗われていくような、不思議な感覚があった。
愛の前では人はいくらでも間違う。きれいごとだけじゃないところも好き。
同性間の恋愛を描いていることをわざわざ述べるまでもないくらい自然で、舞台装置として扱われていないことへの心地良さに感動してしまった。本当は、感動するまでもなく当たり前に感じることの出来る私でありたいし、すべての物語がそうであってほしいと思うけれど。
祖父の遺した手紙を余命僅かな祖母に読んであげるシーンと、失ってしまった家族の時間を姉妹ふたりで作る料理で取り戻すシーンが特に好き。
描写がどれも丁寧で美しくて、特に誰かが誰かのことを想ってかける言葉の言葉選びが本当に素晴らしかった。
澄んだミントの香りのするカクテルが飲みたい。私もサラのこと好きになっちゃうだろうな。
Posted by ブクログ
親密さと澱みの雰囲気が常に流れている作品だった。傷ついて、傷を見ないふりして、癒やそうとして、その最中にまた傷ついて、そしてだんだん傷を受け入れてゆく、そんな過程を見させてもらったように思う。