あらすじ
【電子版巻末にはTamaki先生によるカバー用イラストをそのまま収録!】
文芸編集者の柴桜丞(しば・おうすけ)には、どうしても原稿を書いてほしい作家がいる。
その名は鈴代凪(すずしろ・なぎ)。彼は、幼い頃の柴に「物語の愉しさ」を教えてくれた恩人だ。
幼い柴に凪が語ったのは、昔話の「ハッピーエンドアレンジ」。
たとえば『マッチ売りの少女』。最後のシーンがつらくて読み進められない柴に、
凪はふんわりと幸せな要素をちりばめた、でたらめなラストを語って聞かせ――。
……そして大人になった柴は、マイペースな執筆活動(ほぼ消息不明扱い)を貫く凪に、
彼の作風とは違うが売れ筋の「泣ける小説」を書いてもらうため、彼の開く「古書店兼小料理屋」へ今日も通い詰める。
しかし、柴が凪にそれを書いてもらいたい理由は、本当は別にあって――。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
奈良の一角にあるお店の話。途中からストーリーが見えてくるのに涙が止まらない。心が疲れてる人に読んでもらいたい優しい物語。いつか忘れてしまうような日常に優しさを込めて生きたいと思った。
Posted by ブクログ
「泣ける話」を書いて欲しい編集者の“柴”と、柴の子どものころからの恩人でもある作家の“凪”。どこまでも温かい凪とまっすぐな柴の取り合わせに、読んでいてこちらまで温かい気持ちになれた。
物語の終盤に徐々に明らかになっていった凪の秘密。ちょっと驚いた。
心に・記憶にいつまでも生き続けられる存在やお話、人と人との関わりがあることは幸せなことだと思う。
柴の上司である編集長が、柴に語った言葉。
「…人は往々にして、居心地の良さや温かさよりも、痛みや悲しみの方を強く記憶する。幸福や愛情は辛苦の上にあってこそ輝くのであって、痛みを伴わないただの温かさは、次第に普通になり、やがて忘れ去られていく。それが、本当はとても得難く、尊いものであったとしても」(p.146)
自分の人生にも確かにあったであろう、温かさを忘れないでいたい。
また、随所に出てくる奈良の風景に、「この場所はここだな」「ここは、どこだろう」と考えて読むのが、奈良生まれ奈良育ちとしては楽しかった。