あらすじ
生物が知的であるとは、どういうことでしょうか?
単細胞生物の粘菌は、脳も神経系もないにも関わらず、迷路の最短経路を探し出したり、人間社会の交通網にそっくりのネットワークを作り上げてしまいます。
「遭遇する状況がどんなにややこしくて困難であっても、未来に向かって生き抜いていけそうな行動がとれる」
知性をこんなふうに捉えてみると、単細胞の粘菌でさえも、その場のややこしさに応じた知的と思えるような行動をとるのです。
このようなすぐれた行動が、単細胞の粘菌からどのように生み出されるのでしょうか?
私たち多細胞生物にもつながる「知的なるものの原型」を粘菌に探ります。
■内容
まえがき
第1章 単細胞の情報処理
第2章 粘菌とはどんな生きもの?
第3章 粘菌が迷路を解く
第4章 危険度を最小にする粘菌の解法
第5章 両立が難しい目的をバランスさせる粘菌の能力
第6章 時間記憶のからくり
第7章 迷い、選択、個性
第8章 粘菌の知性、ヒトの知性
あとがき
※本書は2010年5月に発刊されたPHP サイエンス・ワールド新書『粘菌 その驚くべき知性』を加筆修正のうえ、文庫化したものです。
■著者について
中垣 俊之(なかがき・としゆき)
1963年愛知県生まれ。北海道大学電子科学研究所教授。
粘菌をはじめ、単細胞生物の知性を研究する。
北海道大学薬学研究科修士課程修了後、製薬企業勤務を経て、名古屋大学人間情報学研究科博士課程修了。
理化学研究所基礎科学特別研究員、北海道大学電子科学研究所准教授、公立はこだて未来大学システム情報科学部教授を経て2013年より現職。
2017~2020年北海道大学電子科学研究所所長。
2008年、2010年にイグ・ノーベル賞を受賞。著書に『粘菌 偉大なる単細胞が人類を救う』(文春新書)、『かしこい単細胞 粘菌 』( たくさんのふしぎ傑作集) など。
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Posted by ブクログ
すごく面白かった!
カオスから生じる一種のリズム、そしてそれが予知とか意識とかとつながっていき「そう」な不思議なときめきを感じました。
生命に意識とか心とか感情とかが備わっていくのって、こういうところからなんじゃないだろうか…と思うと、人間も粘菌も根っこは同じなんだということがすんなり入ってきます。
意識には高等とか下等とかはなくて、ただただ生命ごとに違うものを持っているだけなんだろうな、と思うと、人間のルールだけで世界を仕切っている気になっている私たちはいつか痛いしっぺ返しを受けそう。そしてそれは甘んじて受けるべきなのかもしれない。
Posted by ブクログ
次の行動を選択するとはどういうことか、考える脳のない生物がどうやって行動を決めているのか、文章も読みやすく、大変興味深く読んだ。
自分で粘菌を飼って(?)いろいろ試してみたくなるけど、こちらは愛着を持っても粘菌に感情ってないんだろうなぁ、とかいろいろ。
Posted by ブクログ
粘菌は賢く動いているようにみえる。人間も賢く動いているようにみえるが、そうとも言えないらしい。生き物の知性とはなんだろうと考えるヒントになりそうな本。
粘菌は考えるのか。理系向きの内容で文系の自分には取っ付きにくい内容だった。粘菌が迷路を解いているようにみえるが、実はこれは単純な生体反応で機械的に動いているに過ぎない。タイトルは「考える粘菌」だが、考えないことを前提に説明しているように思う(粘菌に脳はないので当たり前だが)。粘菌の動きを簡単なモデル方程式に置き換えて解説することで、知性があるようにみえる動きの仕組みを一つ一つ解き明かしていく。人間にとっての知性と生き物にとっての知性は別物だと考えさせられた。
個人的に物足りなかったのは、研究室の中での実験に終始していることだ。ダーウィンのミミズの研究を読むと、ミミズが一年間にどれほど土を耕しているかを計算することで、地球全体の豊かな土壌をミミズがつくっていることがわかる。生物は自然の中で進化してきたのだから、自然から分けてしまうと、その魅力は分からないと思う。それでも研究室の世界に触れられたことは面白かった。
冒頭の手間暇かけて育てた粘菌よりゴミ箱の中の粘菌の方が活き活きしていたことや、あとがきの「intelligence」の東洋と西洋の考え方の違いは考えさせられる話だった。粘菌のような単純な生き物でも分からないことだらけなんだなぁ。