あらすじ
ノースカロライナ州の湿地で青年の遺体が見つかる。村の人々は「湿地の少女」カイアに疑いの目を向ける。6歳で家族に見捨てられ、人々に蔑まれながらたった一人湿地で生き抜いてきたカイアは果たして犯人なのか
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Posted by ブクログ
面白かった。カイアにあまりにも感情移入をしてしまい、家族が全員去っていったとき苦しくなり、テイトに恋をし、失望し…チェイスに関してはだめだー!だめだよカイアー!と思いながら結局こういう男にハマってしまうんだよ…という気持ちにもなり(カイアが私ではない誰かが彼を待ち望んでいるような気がする、みたいなことを言っていたけど孤独に晒され続け愛されたい少女だけが一人歩きしてしまったみたいですごく理解できて苦しかった)、ただ最後まで結末がわからずに読んでいたので虚を突かれた。
だが、性暴力をされ、鍵なんてない小屋のような家に暮らしている女の子が、これからも襲われるのかもしれないという恐怖に晒され続けたら生活ができたもんじゃないよな、と思う。しかもこんな閉じた街で、差別され、身寄りもなく、相手は身分的にも物理的にも間違いなく勝てない相手、しかも物証なんてほとんどない時代、命を奪う他ないのかもしれない。
野生と共に過ごしてきたカイアは、肉食動物の危険に晒され続けるくらいならばと、ホタルやカマキリやその他諸々の野生から受け取った知恵を使い、誘い込んで、相手を葬った。そして自身の安寧を手に入れた。そうでもしないと彼女は生きていけなかったんだ。
ある意味では、テイトも共謀者なのではないか、と思っている。
湿地の描写があまりにも美しく、壮大で、残酷で、ずっとこの湿地の鳥たちに囲まれていたい、と思った。
私の家の近くには、朝の早い時間に鷺が4羽固まって行動をする川がある。鷺は、それぞれ細く長い足でゆったりと優雅に歩き、かと思うと素早く嘴を水面に突き刺し、魚を食べる。そしてあの見た目からは考えられないくらい野太い嗄れた声で鳴く。一時期その鷺たちを観察するのにハマっていた時期があるのだが、それを思い出し、妙に親近感を覚えたのも、この物語にハマった理由の一つかもしれない。
また彼らを観に行こうかな。
Posted by ブクログ
カイアと言う一人の女性の人生譚、成長譚であり、湿地帯の美しさを描き、ミステリとしても上質。どこを切り取ってもハイレベルなすごい一冊だった。
社会からも家族からも見捨てられサバイバルさながらに独りで生きてきたカイアがチェイスを殺すと言う結末は、迫害され最底辺に位置するものによるその最上位に位置するものに対する下剋上であり、それを助けたのは唯一の味方であった自然とそれにまつわる知識であったと言う構図がとても良い。
しかし、テイトと幸せなその後を過ごしつつもそれを最期まで隠し続けたカイアの心情を思うと結局彼女は孤独であり続けたのではないかと、果たして幸せだったのか、報われたのかと勘繰ってしまう。
そして見逃せないのがチェイス。彼は作中では悪ではあるが、カイアに対する愛は本物で、名声もあり社会的に地位があるが故のジレンマの狭間で揺れ動いた結果がカイアに対する最後の仕打ちに繋がったのだと思う。
社会から見捨てられたからこその自由を持つカイアと社会から認められているために不自由なチェイス。どこへ行っても"チェイス"と言うレッテルが付き纏うなかで唯一個人として向き合ってくれたカイアが心の拠り所であったが、結局相反する二人が結ばれることはなく、望まぬ結婚をしてカイアと離れ、酒を飲み自暴自棄になった結果があの凶行だったんじゃないかと想像できる。
行いは許されるものではないが彼もまた社会に翻弄された一人で、カイアと形は違えど同じ孤独の渦中にあり続けた人生だったのではないかと同情してしまう。どこかで歯車が噛み合えば違った結末もあったのではないかと。
妄想や想像を含みつつもすごく奥行きのある物語でとても楽しめた。
余談だけど、直後に見た実写映画はディテールが削られた恋愛ものになっておりチェイスもただのクズに成り下がってて残念でした。小説は本当に傑作です。
Posted by ブクログ
ラストがなければ星4にしてたかもしれない。
“なぜ被害を受けた側が赦すことで前に進まなければならないのか”
許しを求められる立場にされることへの違和感や不条理を突くような一文が特に印象に残った。
孤立が弱さじゃなく生きる力に変わっていく過程が、物語の芯としてしっかりと響いた。しばらく余韻に浸る。
Posted by ブクログ
何度も泣いた。主人公がどうなってしまうのか気になり、ページを捲る手が止まらず1日で読んでしまった。感情が動かされっぱなしのお話。
テイトが戻ってこなかった時、チェイスの婚約を紙面で知った時、戻ってきたジョディをなかなか受け入れられなかった時、お母さんが亡くなってたと知った時、、他力の幸せに裏切られて、何度も何度も孤独を味合わせられてもなんとか気持ちをやりくりしてるのが可哀想で…カイアが自然の中でたくましく生き抜いているのでそちらに気が向いてしまうのだけど、守られるべき子供が孤独に生きているというのが切なくて、何度も涙が溢れてしまった。
チェイスに関して、貝殻をずっと付けていてくれたの、本当は本当にカイアを愛してたのでは、と思ったけど、、多分、周りの環境がそれを許さなかったから歪な形になってしまった愛なんだと思うんだけど、、守られるべき子供時代に、親に捨てられて自分には自分しかいないという絶対的な孤独から出発してるカイアにとって、カースト上位の男子から想われて…とか、貝殻をずっと付けてる意味…なんて想像してる余裕はないんだろうな。そういうのは、家族や集団の中の普通の地位など、他に守ってくれる人や環境がある場合に考えられることであって、自分には自分しかいないような場合、生存本能から彼を亡き者にして脅威を除くのは必要なことだったんだなと納得。彼女は自然そのものだ。
ただ、カイアが生涯貝殻をずっと隠してたのは何でなんだろうと思った。そこは、人間らしい矛盾なのかも。思い出をできているということか、それとも完璧な蒐集家のどうしようもない性質なのか。
Posted by ブクログ
自分が湿地に住む生き物になってカイアを見守り続けたかのような小説。
湿地のイメージが漠然としていたから、事前に「ノースカロライナ 湿地」を画像検索してから臨みました。(あとがきで「ディズマル湿地」がモデルになっていると知ったけど)
翻訳作品を読み慣れてなかったため序盤は時間がかかりしんどかったけど、翻訳であっても美しい表現や著者独特の言い回しは受け止められた気がします。翻訳家さんのご尽力にひたすら感謝です。けどやっぱり原文のまま読める方々羨ましい…
テイトやチェイスが登場してから先が気になって止まらなくなり、序盤のローペースが嘘みたいにするする読めた。
事件後とカイアの幼少期以降を行ったり来たりしながら進んでいくのがスリル満点。なぜチェイスは殺された?カイアが容疑者?真犯人は?っていうたくさんの???を抱えながら読み進めるドキドキが楽しかったし、カイアの過ごす日々と事件の日が少しずつ近付いて合流するのも面白かった。
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・カイアがお母さんが帰ってくると信じてるところがつらい。諦めながらも全然諦めてない。悲しい。幸せになってほしい。カイアの人生はすべてお母さんとの記憶なのに。
お母さんが出て行った理由は後の方で言及があってスッキリ。それでも親子で一緒にいられればよかったよね。6年間母さんと過ごした日々の記憶だけでその何倍もの年数を生き抜くことができるほどの存在なのに。
・テイト、大学生とはいえ約束全スルーはさすがにひどい。カイアがしばらく許さなかったのもわかる
・カイアが一目惚れ?するくらいの容姿と肉体を持つチェイス。典型的な遊び人なのに、カイアに対して辛抱強くアプローチしてたのは意外。街の女の子にはないものをカイアが持ってたのね
・カイアが自分の力で大金を稼いで生きていく展開は胸熱で、これまでの不遇な日々が報われたような気持ちになり嬉しかった。
・チェイスの無責任な将来の約束にカイアが前向きに反応してしまうのを見てるのが辛かった。家族や友達に紹介してもらえるのかな、と密かに思っているところとか。かなしい
・母さんが死んだことを知ったのも犯行を助長しただろうな。もう母さんに会えないとわかって自暴自棄のタイミングにチェイスの言動。
父さんに殴られ続けて出て行った母さんと自分を重ねて、あの日の母さんを救うためにチェイスを殺さなければっていう気持ちもあったのかも
・カイアは人ではなくもはや湿地という自然の一部なんだよな。だからこそ証拠を残さずに人を殺す方法をわかっていた。自然災害で人が死んでも自然を裁けないように、カイアがチェイスを殺しても裁けなかった。
・裁判はドキドキしながら文章を追えて面白かった。トム・ミルトンさんはすごい。カイアが無罪になった時は涙が出た。
・カイアが犯人とは思いたくなかった。けどテイトやジャンピンがカイアを救うために人殺しまでするとは思えないし。真犯人は意外な動機があるのかな、とか思ってたけど…。ホタルやカマキリの雌が雄を殺める描写がとりわけ印象的に描かれていたし、チェイスとの関係がどんどん悪化するから現実味が増していく…でも最後の詩を読んで、カイアにとって必然の行動だったんだと納得させられてしまった。
・テイトにも誰にも真相を話さずにしっかり寿命を全うしているあたり、罪悪感もほぼなかったのかな。カイアにとっては不幸な事故のような感じ?バークリー・コーヴに近付かなかったことがカイアなりの罪滅ぼしなのか…?
Posted by ブクログ
ザリガニの鳴くところ
茂みの奥深く、生き物たちが自然のままの姿で生きてる場所ってことさ。
愛もまた映ろうもの
いつかはそれも、生まれるまえの場所へと戻っていく。A.H.
Posted by ブクログ
読み終わった後どうして作者がミステリのような形式でこの作品を描いたのかわからなかった。繊細な心理描写と美しい情景描写でカイアとカイアが生きた湿地を見てきたのだから事件のこともカイアと共有したかった。チェイスの死にはあんまり興味が湧かなかったから、ミステリとしての醍醐味(誰が、いつ、どうやっての解明)も薄いと感じていた。
しかし、しばらく考えて私のカイアと事件を共有したかったという願望はカイアに対する仲間意識から来ており作者はミステリの形式で事件の真相を読者から秘匿することによってその仲間意識は間違ったものであることを示そうとしたのではないかと考えた。
カイアはテイトにもジャンピンにも自分がチェイスを殺害したと告白しなかった。これはカイアが2人と本当の仲間ではないことを表している。そして事件の様子を読者に共有しないことはカイアが読者とも仲間ではないことを示している。カイアの仲間は人間ではなく湿地なのだ。だからカイアはチェイスとの関係を誰かを頼るという人間の方法ではなく、雌のホタルのようにおびき寄せて害するという湿地の方法をとったのである。
Posted by ブクログ
カイア、一人でよく頑張ったねぇ…。みんなから尊敬される存在になったんだねぇ…!と感動していたら、最後の最後で、んんん!?となる記述が。
たしかに法廷の場面とかを思い返すと…。という部分もあるけども。
でも、アメフトやってるようなガタイの良い男性を、細身の女性一人でやれるもんなんだろうか。
この小説はミステリーなんだろうか?
だとしたら、結局真実ははっきり語られておらず、アリバイとトリックは、法廷の場と、テイトの想像でしか語られていない。
ミステリーというよりはカイアという女性の成長物語のような感じだったかな。
Posted by ブクログ
久しぶりの海外文学。
カタカナ苦手なので登場人物覚えられるか分からなかったけど、出てくる人数が少なくて理解できた!
ミステリーというより一人の少女が成長する話だった。幼少期はどうしようもないくらい切ないと感じてたけど、色々外との関わりが増えたりして話が膨らみ良かった。
最後が急いでまとめられただけに、テイトと結ばれるシーンなど心変わりした描写はしっかり描いてほしかったな、、でも全体的にはとても良い作品だった!
Posted by ブクログ
あらすじでサスペンスミステリーだと思ったら、カイアの人生・湿地の自然・アメリカ社会のドキュメンタリーだった。
あらゆる要素が絡み合ってカイアの無罪を信じたくなる。
カイアがチェイスから暴力を受けた時はウワ〜最悪!って思った。
カイアは孤独でも生きていけるけど、誰かから加害心を向けられた時に一人で生きるのはグンと難しくなる。
保安官に訴えても自分の立場ではどうせセカンドレイプされるだけ…というのがキツい。
社会が犯罪から守ってくれないのは困る。
あとアメリカの裁判こんな感じなんだ〜って見れてよかった。
弁護士が強かった。
検察側にも弁護士側にも決定的な証拠がなくて、弁護士の口先で勝ち取った無罪だった。
Posted by ブクログ
3.5くらいかな…
中盤までは湿地や自然の描写が浮かべなくて、それは多分鳥や草木をイメージ出来ない自分が居たからだと思います。だから読み進めるのダレました。
後半は色々と小説を読んでいて初めて法廷のシーンや弁護士や検察の主張のセリフや描写が本当に素晴らしくて感嘆しました。あのシーン面白かった。映像が頭にイメージ出来ました。
判決が出て、お兄さんに車で送られる中、カイアが兄に『あなたの中の荒地を見つめてほしい』みたいな独白とその下りがとても好きです。
無罪放免になって、テイトと結婚し、兄夫婦や甥や姪と『家族』っぽいやり直しの温かなシーンが出てきますが、なんか嘘くさくて、ラストを読むと、(あえてそう嘘臭い描写にしたのかなあ)って思いました。といってもカイアの心中は計り知れませんが、
小さな頃からの少女の孤独や不信はそう簡単に他人には満たせないんじゃないかと。
善悪は集団社会から疎外され一人で生きてきたカイアになにがルールで善悪かそこだけ従わせるのはズルいとは思います。でも、信じてくれてたジャンピンや奥さん、お兄さんや出版社の方やテイトの信頼や気持ちを裏切る行為は好きになれません。勿論彼女は性暴力や差別の被害者なのですが。
あとチェイスの結婚相手が法廷に出てこなかった(と思う)描写が無かったのもなんでだろうって。
ラストの貝の首飾りを捨てないで取っておいた理由もわからない。
監房でカイアの独白や煩悶、『なぜ私が!?』って描写が無かったのもやっぱりそうなんだな、って犯人分かって思いました。
残り数十ページの辺りで、本当にこれ話終わんの?って思いながら最後の方、読んでました。
事実を知らずに亡くなったジャンピン、好きになって、支えて、信じて、結婚して晩年を共に過ごし、彼女の死後、事実を知り、これからも生きなければならないテイト、それ考えるとちょっとつらいです。
あと、カイアの人間不信なトコ私そっくり。彼女の様な才能はありませんが。
アン・シャーリーみたいに、同性の女友だち最後まで出来なかったの、(あるいは作らなかった)可哀想。
あとルッキズムの話になりますが、カイアが男性に魅力的な外見をして無かったら物語が成立するのか、そして、研究や出版で社会的に有名、富も得ますが、その背後にはそれらをなし得ないで親や家族に捨てられ『ただ消えて行った』たくさんの数え切れないトラッシュのままのカイアたち、あるいは少年たちが居るのだと思います。
Posted by ブクログ
最後の最後までは世界観が細かく描かれており、それぞれの登場人物の心の移り変わりも読み取れて没入してしまいましたが、判決が下ってから終わりまでの書き方が好きではありませんでした。
結末の意外性を強めるための、読み取りにくい心情や今までの人物像とかけ離れた行動が多々気になりました。
カイアがジョディに怒りをぶつけるシーンや
あれだけ拒否していたテイトをあまりにも
唐突に受け入れるシーン。
繊細に描かれていた心情は一体なんだったんだ?
と思いました。
またあれだけ村人を毛嫌いしていたカイアが
地方紙に自分の詩を投稿していたっていうのも
全く行動として結びつかない…。
最後の数ページで一気に冷めてしまいました。
それまでが良かっただけに凄く残念……。