あらすじ
ぼくたちが出会ったのは単なる偶然ではない。奇跡だ。小学校の同級生だったあなたと結婚して六十余年。アメリカでの新婚生活、京都での家造り、世界中への旅。自由気ままに勤務先を転々とするぼくに「好きなようにしたら。あたしついてくから」とニコニコ笑っていたあなた。つい昨日まであんなに仲良くしていたのに、もうあなたはどこにもいない――。老碩学が静かに綴る最後のラブレター。
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Posted by ブクログ
加藤秀俊さんの目線で妻との人生が終始書かれており、非常に読みやすかった。この本の感想を文字にすることに抵抗を感じる程に、とても素敵で優しい時間が綴られていた。大切な人の死は、決して「別れ」ではない。「死」の瞬間にその人との思い出が鮮明に蘇り、その人との「再会」を果たす。歳をとってもラブラブな夫婦に漠然とした憧れを抱いていたが、今は確実な理想の夫婦像を思い描くことができる。バイブルにしたい本の一冊となった。
Posted by ブクログ
互いに一途で美
「妻は夫をいたわりつ、夫は妻に慕いつつ」は、
変わりゆく時代の中でも覚えておきたい大事にしたいものになった。
奥さんの「いずれいいことがあるでしょ、好きなようにしたらいいわ、あたし、待ってるから」のマインドがすごく好き。
あと互いに難しそうな局面を楽しもうとするところ。
たまたま、小さな本屋で出会ったこの本を
私は死ぬまで大事にする。
Posted by ブクログ
あっという間に読めてしまう
筆者の奥様に語りかけるように、あなたと呼びながら昔を回顧していく文体に惹き込まれる
とても理想的なカップルだと感じた。もちろん思い出は美化されていくものだし、息子さんのあとがきにもあったように思い出に酔われたように書かれてるところもあると思う。それでも、奥様がまったく大袈裟ねと笑い飛ばしてる姿が想像されるくらいに詳細に2人の関係性が描かれていて素敵だった。
この作品が、亡くなられる直前90歳を超えた時に書かれていることも感動的だ。認知症が進んでいることを認められているのに、詳細に、当時の景色、季節感、会話、表情を書き記されていて、奥様と過ごされた時間の濃さと愛情を感じる。
何より奥様の人柄にすごく惹かれる。20代女の私にとって理想的な女性像に映った。好奇心が旺盛で、それを突き詰める忍耐力、そして何よりも環境を言い訳にしない行動力に感服する。アメリカでもハワイでも80歳になっても、あら面白そう学んでみたいわと言ってサッサと国を跨ぎ、団体や教室に申し込んで、自分の世界を押し広げていく。臆するより興味を優先されて、なんと深みのある女性だと思った。なかなかに身勝手な筆者だと思ったが、その人を旦那さんに選んだのは自分の選択という奥様の強い意志、そして我儘に付き合ってくれた奥様への感謝を忘れない筆者も魅力的だ。
隠居して、自室をそれぞれ持たれていたお二人。それでも毎日リビングで3時間デートを重ねていたという言い回しがとてもロマンチックだった。