あらすじ
レジェンド調教師・角居勝彦氏絶賛!
「引退競走馬を取り巻く現状を丁寧に取材した一冊。片野さんの馬に対する強い愛情を感じます」
(元JRA調教師・一般財団法人 ホースコミュニティ代表理事)
引退競走馬支援活動歴25年以上の沼田恭子氏推薦!
「ここ数年で引退競走馬をめぐる状況が大きく変わりました。その現状と未来がこの本には書かれています」
(認定NPO法人引退馬協会代表理事)
レースで走る馬たちは、この後どこへ行くのだろう…?
競馬業界の未来と社会をつなぐプロジェクトが今、動き出す!
動物ノンフィクション作家が、競馬業界を歩いて目にした最新事情。抱いたのは“社会が変わる”大きな期待感だった。4年の歳月をかけて馬を愛してやまない人々の活動現場に迫った、渾身のルポルタージュ!
引退競走馬支援の存在を知ったときにまず感じたのは、この世界に注目することで“社会が良い方向へ変化する過程”をリアルタイムで追うことができるはず、という大きな期待だった。
この本は、二〇一九年から二〇二三年までの約四年間にわたり、馬の知識ゼロだった私が初めて馬の世界に足を踏み入れ、引退競走馬をめぐる世界の全貌を求めて各地を訪ね、様々な人に出会いながら、馬の魅力にグイグイと引き込まれていく旅の記録である。(「はじめに」より)
【目次】
はじめに
第一章 突然だが、馬主になった
第二章 馬と生きる新しい仕組み
第三章 知られざるリトレーニングの世界
第四章 馬と暮らした日本人
第五章 ある地方馬主のリアルと挑戦
第六章 ホースセラピーの力
第七章 旅して食べて馬を応援
第八章 社会が変わる交差点
おわりに
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Posted by ブクログ
<目次>
第1章 突然だが、馬主になった
第2章 馬と生きる新しい仕組み
第3章 知られざるリトレーニングの世界
第4章 馬と暮らした日本人
第5章 ある地方馬主のリアルと挑戦
第6章 ホースセラピーの力
第7章 旅して食べて馬を応援
第8章 社会が変わる交差点
<目次>
最近、テレビで競馬を見ることが増えた。決して賭けたりするわけでなく、走る馬が美しいことと、走っている最中の馬はなにを考えているのかを考えたりしているたからだ。この本で、そんなことの一端が知れたらと思ったが、それ以上の成果があった。著者は、動物系のノンフィクションを多く書いている人。前回は『平成犬バカ編集部』を読んだ。動物への優しい視点がよい。今回は、その競走馬のセカンドキャリア(引退後の世界)を追いかけた。有名な競走馬も「安楽死」の話をよく聞く。勝てない馬は引退後に屠殺されることも多いと聞いた。JRAなどが広報しないため、知らない人が多いのだ。この本に出てくる人たちは、そうさせずに、馬の余生(大体20~30歳まで生きるらしい)を幸せに過ごさせる努力をしているのだ。その振り幅は大きいが、近年アニマルセラピーの観点が広まり、競馬については、ゲームアプリ”馬娘”のおかげもあり、理解が深まっているようだ。馬は感性豊かで、人との共生も普通らしい。ただ体が大きい分、気をつけないと人に危害を加えてしまうわけだ。詳細は触れないが、もっと日常に馬がいる生活(江戸時代までは普通だった)が広がればいい。
Posted by ブクログ
ダ・ヴィンチで紹介されていたのをきっかけに。
競走馬のうち、引退後も種牡馬などとして競馬業界に残れるのは僅かで、多くは「行方不明」になっているという現状があった。このことは国際的にも問題となっており、近年、引退競走馬が活躍できるセカンドキャリアを整備していこうという活動が拡大してきている。確かに、最近はJRAのCMなどでも、競馬以外の色々な馬事文化を紹介しているのを見かける。
セカンドキャリアとして色々な道があり得るのだろうが、本書ではセラピーホースに重点を置いて紹介されている。支援が必要な子供などに、馬との触れ合いの機会を提供する事業。犬や猫などとは違う、馬ならではの効果があるという。
馬の飼育には多くのお金がかかるため、馬自らが稼げる仕組みを作らないといけないという。私は乗馬クラブのような場所がセカンドキャリアとして真っ先に浮かんだが、そこにも既に馬がいるので、既存の馬を追い出すような形になってしまい、あまりよい”転職先”ではないとのこと。
セラピーホースであれ乗馬クラブであれ、競走馬が転身するためには、そのためのトレーニングをし直さなければいけないらしい。どちらも人を乗せて歩く(走る)のだから同じようなものだと考えてしまうが、求められるものが全く異なるとのこと。F1レーシングカーを乗用車に改造するようなもの、という喩えが分かりやすかった。このリトレーニングも、ノウハウの蓄積段階にあるようだ。
日本の競馬業界に関する記載も良かった。日本の競馬は国際的にも類を見ないほど大規模らしく、経済的影響は競馬会のみならず日本の農業全体に波及しているとのこと。(たとえば農水省の予算の一部はJRA経由らしい。)馬の福祉を考えるうえで、そもそも競馬などやめてしまえばいいというのは一つの主張としてあり得るが、現状を見ると現実的ではないというようなことが書かれていた。
全体として非常に興味深く読んだが、不満な点が1つ…。引退競走馬の行く先を「行方不明」と書き、それ以上はあまり踏み込んでいないところが少しモヤモヤした。
勝手な想像だが、たぶん、引退競走馬の多数派は食肉になっているのではなかろうか。本書にも引退競走馬を食肉用に肥育する業者が登場するが、全体として競走馬が肉になっているという記載は「匂わせ」程度にとどまるし、量的な議論はされていない。このあたりのバッシングに関する記載もあったので繊細な話題ではあるのだろうが、しかし、真正面から書いてほしかったという気はする。競走馬を食肉に転用するということのそもそもの是非についてとか、議論のポイントは多くあるような気がする。
本書の中で、能登にある厩舎が紹介されていた。本書の刊行は2023年の年末。災害の影響はどうだったのだろうか・・・