【感想・ネタバレ】澁澤龍彦 西欧文芸批評集成のレビュー

あらすじ

挫折と不遇に消え去る運命にありながら、俗物主義と楽天的な進歩思想に対して嫌悪と反感を抱き、神秘や驚異の反社会的幻想を作品にした過激な「小ロマン派」たちや「呪われた詩人」たちをはじめ、十九世紀フランスを中心に、幻想、暗黒、怪奇、悪魔、異端、エロスなど各分野を、もうひとつの文学系譜として紹介した珠玉のエッセイ集。

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Posted by ブクログ

今や西欧という言葉も文芸という言葉も死語でしょう。
加えて批評という言葉には昨今、「作品を創ることが出来ない人間の無責任な言動」という、悪い印象がついてしまった。
そんな死語と悪印象の単語を並べた1冊ですが、この本は今こそ読まれるべき1冊となっています。

西欧文芸の批評集成と題されていますが、澁澤さんの趣味通り、語られるのは文学の本流というより、幻想、暗黒、怪奇の文学と悪魔、異端、デカダン、黒いエロスについてです。

でもあらゆる芸術とは結局、「一つのスキャンダルであり裂け目であって、耐えがたい異常なものの現実世界への侵入である@ロジェ・カイヨウ」
ということです。
そこに感じるのは戦慄であり
「戦慄こそ人間の最も深い精神の部分だ。
いくら世間が戦慄を忘れさせ、人間を無感動な生き物にしようとも、
戦慄に打たれた人間こそ、途方もないものを深く感じとることができるのだ@ゲーテ著、ファウスト」ということなのです。

だからその芸術が先鋭化するほど社会とは対立する。
我々はそれを守らなければならない。
人をうわさする以外、なんの興味も持てないような退屈な規制好きの人間に、表現の沃野を荒らされてはならない。
そうなれば、虚構の中で奪われた闇が、やがて現実世界に滲んでくるからです。
人間をフラットに、明るい面だけの存在と規定し、暗黒面の一切の身ぐるみを剥がそうとした時、時代は常に惨劇が演じられる劇場となったのです。

ps
私はこの本を特に萌え系アニメのファンにおススメしたい。
近代文学における世紀末の魔女崇拝。
その開祖となったボードレールの人工物崇拝、冷感性の崇拝は、今の二次元萌えと密接な関係があるのではないか、と考えるからです。
「ピカビアのごときは、機械の部品の組み合わせによって、女のイメージを表現することに奇妙な熱中をしめした。
女はそのまま機械であり、エロティシズムはメカニズムに還元される。
逆に言えば、機械は女以上の女、自然の女よりはるかに優れた人工の女だということになる。ここから夢想を体現した未来のイヴという観念が生ずる」
とあります。
どうでしょう。
今の二次元萌えを予言していませんか?

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2011年12月14日

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