あらすじ
この世界は破壊すべきである、○か×か? 過去の記憶がない怜王鳴門にある日届いた「きみの物語」。読者を挑発する究極のマルチバース小説! 第60回文藝賞優秀作。穂村弘驚嘆!
我々も現実世界に閉じ込められた登場人物だ。小説の枠組み自体が問題視され、登場人物が複数の階層を貫いて行動する本作を、もっとも推した。
――選考委員・穂村弘
「お前は、この世界を壊すのか」
「うん」「すべてを無へ帰す」
「なんのために」
「パパのために」
(本文より)
クイズ大会、国家転覆、そしてギターケース爆弾――。
型破りな展開と、移り変わる世界線が、物語と現実の境界を突破する、破格のデビュー作!
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
一気に読み切ったが逆にそうしなければ、途中で話の展開についていけなくなっていたかもしれない。そのぐらい複雑な話だった。
27才になった怜王鳴門は、なぜ自分が部屋を出たことがなく記憶がないのか不思議に思っていた。パパ上のノートパソコンに送られていたメールをこっそり覗き見たことによって、自分が何者かを知り、行動を開始する。
物語と現実の垣根がどこにあるのか非常に曖昧であり、読んでいて、今どの世界線にいるのか一瞬わからなくなったりする。登場人物の行動がハチャメチャであることはもちろんのこと、あの人はこの世界線ではどの人なのか、など思考が吹っ飛びそうになった。自分の拙い理解力では、誰しもが神の可能性もあれば人形の可能性もある、程度にしか捉えられなかった。色々な意味で難解な小説だった。
なるほど、と思ったのは「死角」という発想。自分からは見えないが、物事と物事の間にはきちんと流れがあって、それは自分からは死角になっているから見えないだけだという考え方は斬新だった。見えないと存在しないは違うのだが、それをこの言葉で端的に表せることに思わず「なるほど」と思った。