あらすじ
2007年から2021年まで、全国で起きた雪崩事故を検証、最新の事例ごとに時系列で展開したノンフィクション読みもの。
事故の当事者たちから直接取材し、詳しく話を聞いた、いわば「遭難者の証言」である。
3件の事故に関しては、降雪結晶による雪崩事故、湿雪パウダーによる雪崩事故、しもざらめ雪による雪崩事故の分析を挿入し、雪氷学の専門家が科学的見地から解説している。
■内容
はじめに なくならない雪崩事故
1・「十勝連峰・上ホロ下降ルンゼの雪崩事故」〈2007年11月13日〉コンパニオン・レスキューの成功例。
2・「十勝連峰・上ホロ化物岩の雪崩事故」〈2007年11月23日〉雪崩トランシーバーの携行の有無が生死を分けた事例。
3・「大山・別山沢の雪崩事故」〈2016年3月6日〉油断から雪崩を誘発、自力脱出した事例。
4・「北アルプス・立山浄土山の雪崩事故」〈2016年11月29日〉大学WV部の学生が雪崩を誘発、遭難した事例。
5・「尾瀬・燧ヶ岳の雪崩事故」〈2019年3月9日〉「ココヘリ」を持った単独スキーヤーが雪崩に埋没、死亡した事例。
6・「北アルプス・白馬乗鞍岳裏天狗の雪崩事故」〈2020年2月28日〉スノーボーダが雪崩埋没、3時間1分後に無地救出された事例。
7・「大雪山・上川岳の雪崩事故」(2021年2月28日)コンパニオン・レスキューの成功例。低体温症への保温と加温。
おわりに 積丹岳雪崩事故と雪氷災害調査チーム
■著者について
阿部 幹雄(あべ・みきお)
1953年、愛媛県松山市生まれ。北海道大学工学部卒。
中国の高峰で8人が滑落死する遭難(1981)で生き残り、長年にわたり遺体の捜索収容を行なってきた。
新潮社の写真週刊誌『FOCUS』の契約記者としてソ連崩壊や自然を題材にした連載を掲載。
2003年から北海道テレビ放送HTBの契約記者。
第49、50、51次南極観測隊隊員(2007~2010)。
山岳地帯でテント生活をする地学調査隊のフィールドアシスタントとして研究者を支え、安全管理を担当した。
仕事のかたわら、雪崩教育や山岳救助に関するボランティア活動を行なっている。
雪崩事故防止研究会代表、日本雪氷学会雪氷災害調査チーム前代表。
主な著書は『生と死のミニャ・コンガ』『ドキュメント雪崩遭難』『那須雪崩事故の真相』(いずれも山と溪谷社)など多数。
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Posted by ブクログ
2007年から2021年に起きた雪崩遭難事故を検証し、注意喚起啓蒙する本。大学生(特に北海道)の遭難事故死がこんなに多いとは驚きだった。雪崩のメカニズムや雪質と特徴などの研究についても、科学的な視点で監修されているけど、その部分はなかなか難しくて理解しづらかった。本の中でも言ってるが、多くの人に雪崩に関する知識や関心はほとんどないように思える。少なくともウインタースポーツを楽しむ人は、基礎知識を身につけるべきだし、必要な装備を整えておくべきだと思う。雪崩遭難事故がなくなりますように。
Posted by ブクログ
雪崩遭難。那須での高校生の雪崩事故が思い起こされるが、自分も高校では山岳部だったため、他人事ではないと思っていた。そんな雪崩遭難の事例を紹介した『証言雪崩遭難』。本書では7つの雪崩事故の事例を詳細に紹介している(ただし那須の事例はない)。雪崩に埋まった場合、1時間経つと生存率が20%に下がる中で、3時間を超えて救出された事例もある。何が生と死を分けたのか。「コンパニオン・レスキュー」を行った同行者の冷静な判断や決断力、知識、訓練、装備などの当然とも言える教訓が提示されている。