あらすじ
大国ラファイアスの海軍を率いる王子であるオーリは、寄港地で小さくてガリガリに痩せた少年に出会う。娼館で下働きをするその少年――スーシャをなぜか放っておくことができず、オーリは彼を自分の船に連れていく。一方、海賊に攫われてしまったと誤解して怯えるスーシャは、オーリの船室に通されたことで、自分は彼に抱かれるのだと思い込んで……。
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Posted by ブクログ
回送先:町田市立忠生市民センター
本書の先発にあたる『海賊と囚われの王子』も本来ならばレビューしなくてはならないはずなのだが、これがイギュレーションを下回っているため評価することはない(BLの世界においての「当たり前」を踏襲するだけで真新しい議論や提案といったものがない)。
さて本書である。海賊ネタではおなじみとなった感さえある「拉致」(どのBLもそういわないが実態としてはそうだろう)を「される側」の眼差しではなく、「する側」の眼差しと葛藤の中で描いている。する側の根底的な問題としてあげられる口べたは、単純に口べた(と「Boys don't cry」の残滓)なだけであって、これをツンデレというのは愚の骨頂だ。そう言っている人ほど本書をきちんと読めたか疑わしいとみるべきであろう。
そして、なかなか強かに男性性を描いていることで、男性がついつい肩肘張ってしまうあの「男らしさの鎧(by伊藤公雄)」をさりげなく可視化していく。
ではそうなると受けは女の代用なのかという見方も浮かび上がる。これはおそらく異なるだろう。セックスワークとは異なるし単純な玉の輿とも異なるのだから。このホモソーシャルに担保されない対等関係、王子様ものではこれまで実はなかった見方なのではないだろうかと思いながら。