【感想・ネタバレ】ダーウィンの呪いのレビュー

あらすじ

ダーウィンを祖とする進化学は、ゲノム科学の進歩と相まって、生物とその進化の理解に多大な貢献した。一方で、ダーウィンが提唱した「進化論」は自然科学に革命を起こすにとどまらず、政治・経済・文化・社会・思想に多大な影響をもたらした。そして、悲劇的なことに、進化論を曲解した彼の後継者たちが「優生思想」という怪物を生み出した。〈一流の進化学者〉たちによって権威づけられた優生学は、欧米の科学者や文化人、政治家を魅了し、ついにはナチスの反ユダヤ思想とつながり「ホロコースト」という悲劇を生み出すことになる。

第一線の進化学者の進化学の歴史に詳しい著者は、ダーウィンが独創した進化論は、期せずして3つの「呪い」を生み出したと分析する。「進歩せよ」を意味する〈進化せよ〉、「生き残りたければ、努力して闘いに勝て」を意味する〈生存闘争と適者生存〉、そして「この規範は人間社会も支配する自然の法則だから、不満を言ったり逆らったりしても無駄だ」を意味する、〈ダーウィンもそう言っている〉である。順に、「進化の呪い」「闘争の呪い」「ダーウィンの呪い」である。

本来、方向性がなく、中立的な進化が、なぜひたすら「進歩」が続くと信じられるようになったのか。ダーウィンとその理解者、そしてその志を継いだ後継者たちが、いかにして3つの呪いにかけられていったのか。稀代の書き手として注目される著者が、進化論が生み出した「迷宮」の謎に挑む。

第一章 進化と進歩
第二章 美しい推論と醜い
第三章 灰色人
第四章 強い者ではなく助け合う者
第五章 実験の進化学
第六章 われても末に
第七章 人類の輝かしい進歩
第八章 人間改良
第九章 やさしい科学
第十章 悪魔の目覚め
第十一章 自由と正義のパラドクス
第十二章 無限の姿

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Posted by ブクログ

ネタバレ

前半の進化論の歴史や対立の話は、面白いけどなかなか難しいな、学者ってすごいな、読むのは時間かかるなと思って読んでたら、優生学の話になったとたん、急に学者が不誠実で頭が悪くなるのがビックリしたし怖かった。ダーウィンの呪いでもあるし、人がもともと持つ危険性でもあるんじゃないかと思った。
後半は一気に読んだ。

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2024年10月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

めちゃくちゃ面白い!
「進化」を「進歩」と捉えたり,「最も強い者が生き残るのではない。最も賢いものが生き残るのでもない。唯一生き残るのは進化できる者である」という現代人が陥りやすい罠についての解説から始まる。
多くのページを割いているのは,ダーウィニズムから優生思想へとつながる過程と,その時代に生きる科学者の主張,また社会に漂う価値観。このあたりがとてもよく分かる。
特に,ヒトラーによる独裁政権下での暴虐が批判されることは,誰が見ても明らかであるが,「暴虐へと至る過程も分析しなければならないだろう」という姿勢はとても大切だなと思った。
「理由は何であれ、これだけははっきりしている。自由と正義に反する非人道的かつ差別的、強権的な制度は、強権国家でなくても、自由と平等を重んじる人々の手で、正義の名のもとに、民主的に実現しうるのである。」という筆者の警告は,胸に刻まなければならない。

そして,本書の結びにあるように,
「しかし同時に,善悪,正邪,矛盾入り乱れ,人それぞれに異なる心の混沌も,私には魅力的に映る。世界から悪が消えたら胸のすくようなヒーローの物語は二度と楽しめなくなるだろう。大切なのはむしろ,人それぞれに夢を持てること。それからもし置いたレンガの場所が誤りだったなら,その失敗を修正できることではないか。」という筆者の生命観、倫理観にとても好感がもてた。

一方で,遺伝的浮動,遺伝子プールなどの用語に対して注釈がないため,高校で生物を学んでいない方や,ベースとなる知識に不安がある人からすると,特に前半の内容は読みづらいかもしれない。
個人的には理系の高校生や大学生に強く薦めたい書籍であると感じた。

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2024年02月11日

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