あらすじ
昭和を代表する女優・高峰秀子。2024年は生誕100年。
女優・高峰秀子は、いかにして生まれたか――複雑な家庭環境、義母との確執、映画デビュー、養父・東海林太郎との別れ、青年・黒澤明との初恋など、波瀾の半生を常に明るく前向きに生きた著者が、ユーモアあふれる筆で綴った、日本エッセイスト・クラブ賞受賞の傑作自叙エッセイ!
上巻は北海道での誕生から、太平洋戦争期までを収録。
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Posted by ブクログ
朝日新聞社、1976年
文春文庫、1998年3月
新潮文庫、2012年1月
文春文庫で読んだ。
以前から高峰秀子の養母との確執については、ウェブでぼんやり知っていたが、本人の筆でここまで書かれると、これは凄いものを読んでしまった……。
壮絶、凄絶、修羅道……。
最初のほうに、中上健次もかくやと思われるほど込み入った家系図が記されている、が、戦前ってそんなものだったのかもしれん。
そして、平山志げは、若いころに名乗っていた高峰秀子という芸名の、下の名前をつけた、姪を引き取って、子役にする。働かせる。稼がせる。吸い上げる。
所謂ステージママという呼び方もあるが、高峰秀子の養母の場合はもっと強烈。
最終章に、「私という人間のドラマの主人公は、私ではなく実は私の母その人であった」とあるくらい、本の最初から最後まで常に母の個性が「悪魔爆発」している。
この本、読む人によっては自身の毒親体験がフラッシュバックする劇薬なのでは。
その上、養母だけでなく、親族、悪い大人たちに囲まれて、巨大な金が消えていく。その軌跡も強烈。
が、ペシミズムに浸された本では決してなく、よい人間関係に恵まれ、所謂有名人の人名録でもある。
以下、目次に●で追記してみた。
でも、高峰秀子にとって救いになった人だって、各々の家族に対しては修羅だったりするので、うーん人って……。
と、数分くらい遥かな気持ちになってしまう。
にしても1976年刊行で、この数年後に養母亡くなり(デブ死す)、女優からエッセイストに転身するわけだが、その後のエッセイ群の先駆けでもありネタ元でもある、最重要のゴツい本だと思った。
しかも戦前戦中戦後の歴史でもあり映画史でもあるので、個人史にしてメディア史にもなっている、まあ凄い本。
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上巻
文庫版まえがき ●朝日新聞社の扇谷正造
1 雪ふる町 ●養母平山志げなど家族、
2 旅のはじまり
3 猿まわしの猿 ●川田芳子
4 土びんのふた ●岡田嘉子
5 つながったタクワン ●林長二郎、坂東好太郎
6 父・東海林太郎 ●東海林太郎、藤田まさと、五所平之助
7 母三人・父三人 ●東海林夫人
8 ふたつの別れ ●実兄の実
9 お尻がやぶれた ●初潮
10 鎌倉山の女王 ●田中絹代
11 一匹の虫 ●水谷八重子、川口松太郎
12 八十三歳の光源氏 ●藤本真澄、広辞苑の新村出
13 神サマのいたずら ●谷崎潤一郎
14 紺のセーラー服 ●山本嘉次郎、原節子
15 血染めのブロマイド
16 鬼千匹 ●綴方教室原作の豊田正子、田中絹代
17 ビエロの素顔 ●榎本健一、古川緑波、宮城道雄
18 兄は馬賊だった
19 にくい奴 ●大河内伝次郎、灰田勝彦、杉村春子
20 ふたりの私
21 馬 ●黒澤明、三船敏郎、山本嘉次郎
22 青年・黒澤明
23 恋ごころ
24 鶴の化身 ●入江たか子
25 神風特別攻撃隊
26 同期の桜
下
1 黄色いアメリカ人
2 赤いスタジオ
3 十人の旗 ●太宰治、笠置シヅ子、服部良一
4 ハワイの花 ●昭和天皇、灰田勝彦
5 お荷物
6 キッチリ山の吉五郎 ●小津安二郎、笠智衆
7 鯛の目玉 ●志賀直哉、谷崎潤一郎、松子夫人、梅原龍三郎
8 「空・寂」
9 ウソ泣き ●芥川比呂志
10 ダイヤモンド ●藤山愛一郎、宮田重雄
11 色と欲 ●金指英一、平尾プロデューサー、青柳プロデューサー、木下惠介
12 木下恵介との出会い
13 カルメン故郷に帰る
14 遁送曲
15 勲章 ●床山の小林重雄
16 続・勲章 ●松山善三、梅原龍三郎
17 愛の人
18 パリへ ●木暮実千代、渡辺一夫
19 ZOO
20 夕日のパリへ
21 再び戦場へ
22 二十四の瞳 ●壺井栄、松山善三
23 ラスト・ダンス ●川口松太郎、木下惠介
24 イジワルジイサン ●成瀬巳喜男、森雅之、林芙美子
25 バズーカお佐和 ●有吉佐和子
26 骨と皮 ●松山善三
解説 沢木耕太郎
Posted by ブクログ
5歳でデビューし瞬く間に人気子役に。華やかな活躍の裏で苦しんだ義母との確執、彼女一人の肩にかかる経済的負担、叶わなかった学校生活、そして若き日の黒澤明との初恋と別れ。複雑な環境で思春期を過ごしながらも横道に逸れなかったのは彼女の中に子供ながらも何か一本、筋の通った強い意志があったからだろう。
Posted by ブクログ
「高峰秀子」のエッセイ『わたしの渡世日記〈上〉〈下〉』を読みました。
第24回日本エッセイスト・クラブ賞受賞作品です。
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〈上〉
昭和を代表する大女優が波瀾万丈の人生を綴った第一級の自伝。
「お前なんか人間じゃない、血塊だ」――養母に投げつけられた身も凍るような言葉。
五歳で子役デビューし、昭和を代表する大女優となった「高峰秀子」には、華やかな銀幕世界の裏で肉親との壮絶な葛藤があった。
函館での誕生から戦時下での撮影まで、邦画全盛期を彩った監督・俳優らの逸話と共に綴られた、文筆家「高峰秀子」の代表作ともいうべき半生記。
日本エッセイスト・クラブ賞受賞作。
〈下〉
戦後を彩る大ヒット映画の数々と共に綴られる女優の偉大なる足跡。
本邦初の総天然色長編映画『カルメン故郷に帰る』、『名もなく貧しく美しく」、『二十四の瞳』、『恍惚の人』……戦後を彩る数々の大ヒット映画の製作裏話と共に、女優「高峰秀子」が綴った半生記。
養母とのしがらみに苦しむ一方で、「谷崎潤一郎」や「梅原龍三郎」らとの交流を成長の糧とし、「松山善三」との結婚で初めて安息を得たことにより、「ひとりぼっちの渡世」に終止符を打つまでを描く。
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昭和を代表する俳優の中で大好きな女優ひとり「高峰秀子」、、、
1975年の5月から1976年の5月まで「週刊朝日」に連載された自伝的エッセイを上下二巻にまとめた作品です。
〈上〉
■雪ふる町
■旅のはじまり
■猿まわしの猿
■土びんのふた
■つながったタクワン
■父・東海林太郎
■母三人・父三人
■ふたつの別れ
■お尻がやぶれた
■鎌倉山の女王
■一匹の虫
■八十三歳の光源氏
■神サマのいたずら
■紺のセーラー服
■血染めのブロマイド
■鬼千匹
■ピエロの素顔
■兄は馬賊だった
■にくい奴
■ふたりの私
■馬
■青年・黒澤明
■恋ごころ
■鶴の化身
■神風特別攻撃隊
■同期の桜
〈下〉
■黄色いアメリカ人
■赤いスタジオ
■十人の旗
■ハワイの花
■お荷物
■キッチリ山の吉五郎
■鯛の目玉
■「空・寂」
■ウソ泣き
■ダイヤモンド
■色と欲
■木下恵介との出会い
■カルメン故郷に帰る
■遁送曲
■勲章
■続・勲章
■愛の人
■パリへ
■ZOO
■夕陽のパリ
■再び戦場へ
■二十四の瞳
■ラスト・ダンス
■イジワルジイサン
■バズーカお佐和
■骨と皮
■解説 沢木耕太郎
「高峰秀子」って、大物女優として華々しい生活をしていたんだろうなぁ… というステレオタイプ的な先入観があったのですが、本書を読んで、その考えが180度覆りました。
その理由は幾つかありますが、具体的には、
複雑な家庭環境から叔母「志げ」の養女として育てられ、
叔母「志げ」の強く見当違いで狂気的とも言える愛情(愛憎?)に葛藤し、戸惑いながら、
経済的に困窮していたことから5歳から家族の大黒柱として俳優として働かざるを得ず、
養父養母だけでなく、実父や義母、兄弟等、親族の生活まで金銭的に援助し、
俳優業が忙しく学校(義務教育含め)にはほとんど通うことができず、
等々、現代では考えられない人生を歩んでいるんですよねぇ… 本当に驚きましたね。
そして、もう次に驚いたのは、文章の巧みさ、、、
義務教育をほとんど受けることができず、俳優業に専念していた人が書いたとは思えない… ユーモアを交えながら、自分のことを冷めた目で冷静に描いているところや、他者を的確に描いているところ等、エッセイストとしても十分な素養を備えていると感じました。
苦しいことや、悲しいことがあっても、人生を肯定しつつ、力強く前向きに生きていく姿に共感しましたね。
著名人との交流も幅広く、、、
映画界では、有名女優「田中絹代」との交流、映画監督「黒澤明」との淡い恋、私の好きな日本映画界の巨匠「小津安二郎」、「木下恵介」、「成瀬巳喜男」との交流等々… を興味深く読ませてもらったし、
映画界を飛び越えた幅広い人脈として、作家「谷崎潤一郎」や画家「梅原龍三郎」、歌手「東海林太郎」との交流等々… これには驚きました。
「高峰秀子」って、元々好きな俳優さんなのですが、本書を読んで、一層、強い魅力を感じるようになりましたね。
愉しく読めるエッセイ… というか、素晴らしい自伝でした。
写真が盛りだくさん使ってあるのも嬉しかったですね。
Posted by ブクログ
昭和の名女優の初エッセイは自伝的内容。子役からスター女優。この独自の感性があったからこその活躍だったのだと本書を読んでつくづく思う。
昭和の映画史に欠かすことのできない名女優の一人、高峰秀子。本作が初エッセイでその後多くの作品を残している。
子役からその後もずっと活躍する役者は少ないというのが定説。それを覆す存在の筆頭が本書の高峰秀子だろう。ここ最近再評価されている。本作も別の出版社でも何度か刊行されている。
べらんめえ調のような独自のテンポの語り口が面白い。子役からそのままずっと映画界。学校教育をほぼ受けられず独学のようにこっそり読書。育ての母との葛藤ゆスターではない苦しい生活、台所事情など赤裸々な内容。
女優さんというと単なる表現者かと思っていたが、その前提となる受け身の部分、感性が実は重要であることを本書は教えてくれる。例えば最近で言えば名子役だった芦田愛菜ちゃんの何とも高度な読書歴などインテリなご活躍ぶりは、同様な感性のなせるワザであろうかと思う。
日本映画は好きで当然高峰秀子作品も多く見ているが、本書には良い意味で裏切られる。屈指の表現者として人間高峰秀子の魅力のトリコになりました。
Posted by ブクログ
掛け値なしの名著。高峰秀子は人生の達人だ。
司馬遼太郎が高峰秀子を「どのような教育を受けたらこのような人間ができるのだろうか」と評したというが、子役でデビューして小学校もろくに行っていない高峰は、学校教育をほとんど受けていない。では、どうしたのか。彼女が自分自身を教育したのだ。本書を読んだ今なら自信をもってそう言える。
自分の意思や力ではどうにもならないことは、決して悩まないし、振り返らない。周囲に対しては期待しないし、求めない。世の自己啓発書に出てきそうなことを、彼女は自己教育で見事に体得し、実践している。養母との関係など並の人間なら投げ出すか、もしくはキレるところ。でも、高峰は至って冷静。自分を客観視しているもう一人の自分がいるかの様だ。
そして、この感覚、どこかで読んだ覚えがあった…美輪明宏の『紫の履歴書』だ。美輪も同じだ。悩まず、振り返らず、期待せず、求めず。この奇妙な一致は何なのだろう。美男子・美少女として子どもの頃から芸の世界に身を置いていると、自分を客観視できる人生の達人になれるのか。それとも、この二人が持って生まれた才覚なのか。
Posted by ブクログ
なんだこれは、べらぼうに面白いな!
この面白さはなんなのだろう?書いてある内容をかいつまんで説明しても、この本の魅力はまったく伝わらないだろう。むむむ。
そこんとこの考察はおいておいて、備忘メモ。
上巻は、
・養母しげのおいたち
・秀子のおいたち
・子役デビューのきっかけ
・人気子役として、そして一族郎党の稼ぎ頭としての生活
・学校生活への憧れ、無学コンプレックス
・松竹から東宝への移籍
・たくさんの映画人、文化人との交流あれこれ、特に黒澤明
・戦時下の女優業
といったところか。
Posted by ブクログ
ほとんど学校教育を受けられなかった女史がこれだけの文才を揮えるのは、各界の巨匠と呼ばれる方から様々なことを貪欲に吸収したことと彼女の仕事の合間を縫っての独学によるところが大きいのでしょう。掲載されている写真は、子供から少女へそしてうら若き乙女へと変貌を遂げる姿をしっかりととらえています。その容姿のなんと美しいことか!最近の女優には感じられない美しさが感じられます。
Posted by ブクログ
5歳で子役に抜擢されて以降、晩年まで女優として生き抜いた高峰秀子さんが50歳ごろに書いた、自叙伝。2011年に亡くなったそうで、リアルタイムで彼女の演技を観た記憶がないが、もう少し上の世代にはなじみがある女優のようだ。数えきれないほどの映画に出演していたので、子どもの頃からの写真がたくさん載せてあって興味深い。
華やかな世界に身を置いているが故に、家族・親戚や知り合いからも経済的に頼られ何人も養わなければならず、自分は学校にも行く暇もなく働きづめだったと書いてある。そして人生で一番輝く時期であるはずの10代後半に太平洋戦争があり、青春時代を楽しむことができなかった。普通の日本人とは全く違う人生を送ってきたようだ。文章から、比較的楽観的でおっとりした性格であることがわかる。学問が無いのがコンプレックスということが書いてあるが、時世をきちんと把握していて、知的な人柄である。
動画で彼女の出演した映画を観てみようと思う。
Posted by ブクログ
複雑な家庭環境で裕福とは言えない暮らしだったみたいですが卑屈にならず見栄も張らず、売れても天狗にならず、周囲から学びながら一生懸命生きてこられた様子がいきいきと語られていました。娘たちにもこんなたくましい人生を送ってほしいなと思います。たしかに何が彼女をこうさせているのかもっと知りたい。下巻が楽しみ。
Posted by ブクログ
楠木センセが影響を受けた本と紹介していた著書。5歳から俳優を続け、まともに小学校も行かせてもらえず、仕事に明け暮れた凄まじい半生を描いている。
しかし、丹羽宇一郎の「人は仕事で磨かれる」という著書があるが、まさにその通りで、寝る時間も十分に与えられないほどに、ずっと仕事に取り組み、また、一流の人々と交流を続けたからこそ、このような素晴らしい文章が書けるのだと思った。とても学校に行けなかった人の文章ではない。自分が恥ずかしい。
私はいつも、自分の人生を「おかげ人生」だと思い、今もそう思っている。まず、映画俳優の仕事は画家や彫刻家と違って、一人だけでは絶対にできない。だれかがライトを当ててくれなければ、だれかがカメラをまわしてくれなければ、私がいかに熱演しようとも画面には映らない。そんなことは百も承知だが、それをあえてここに書くのは、私が感傷的なのかもしれないし、お年のせいで涙腺がゆるんできたと言われるかもしれないけれど、人間は一人では生きることも死ぬこともできない哀れな動物だ、と私は思う。
私は中国のことわざにある「昼のために夜がある」という言葉が好きだ。苦労は苦労のためにするのではなく、明日という光明に向かっての下塗りだと思わなければ、とてもじゃないが無数の「恥」をブラブラぶら下げて生きてなどゆけるものではない。