あらすじ
人の気持ちがわからない。人間に関心がない。コミュニケーションがとれない。勇太くんは、会話によって他人と信頼関係を築くことができない。それは母親に対しても
同じだ。でも母にとっては、明るく跳びはねている勇太くんこそが生きる希望だ。
幼児教育のプロとして活躍する母が世間一般の「理想の子育て」から自由になっていく軌跡を描いた渾身のルポルタージュ。子育てにおける「普通」という呪縛を問う。
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Posted by ブクログ
発達障害、特に自閉症の男の子と母の話。ノンフィクションで生まれたての頃から時系列で母の悩みが赤裸々に、とてもリアルに描かれている。
身近にいるのによく知らない発達障害。知らないということが恐れや不安につながると勇太くんのお母さんも言っていた。情報や知識こそが不安をなくすなら、この本を通して1人でも多くの人が理解を深めることが生きやすい世の中を作るのかなと思った。
Posted by ブクログ
「母親」の立場で読みました。
何度も理解し、納得し、自分なりの理解に引っ張られ、他の誰かと比較し、期待して、がっかりして、けれどその先で違う価値観と出会い、新しい可能性に開かれていく。
筆者である医師の見解も、興味深く読みました。
文庫化されたことで、さらに多くの人に届くといいな、と思いました。
Posted by ブクログ
★感想
勇太くんやご家族の気持ちを知ることができた。
ただそれだけだけど、心が動く。それが大事と改めて感じた。
優しい眼差しで、背景を想像しても
〇〇さんと同じ気持ちになりたくても
〇〇さんにはなれない、だからこそ。
障害者は、コミュニケーションを通して人間関係を築くことは難しい、
心が見えにくいなど脳の構造上、仕方ないとか可哀そうとかじゃない。
うまく言えないけれど、誤解を恐れずはっきり言うと、
障害がなく生まれてきた人のほうが、生涯を通して心も身体も圧倒的に自由。
自由な私が支える、寄り添うことは当たり前。
どうやったら今を穏やかに過ごせる?楽しいかな?を共に考え続けていく。
時に「なんで!?」と不思議に思ったり、感情的に苛立ってしまりしたら
謝る、次はそうならない私・環境設定、試行錯誤を繰り返していく。
★引用
・幸せってなんだ?
人生で一番大事なことは、
世話を焼いてやれる家族がいるかどうかだ。
Posted by ブクログ
自閉症を持つ子と、その母親について。
お涙ちょうだいではない。ほっこりエピソードも大してない。救いのない話でもない。かといって、全面的に救われる話でもない。
ただただ、障害児と生きるという、その生活、人生。そこで起こる困難や喜び、母子の変化を描いている。他の障害児を例に、障害児を持つ困難さや、障害児福祉の社会制度についても知ることができる。
文庫化にあたり、単行本からの5年間での変化も追記されている。当然のことだが今もこの母子が生活をしていることが、文庫本ではより強く感じられた。
子どもを持つと一度ぐらいは「この子には何か問題がないだろうか」と不安が頭をよぎる。「何があっても愛して育てよう」は、きれいごとだ。
親は子どもが生活できるようにする義務がある。それでも、できないことはできないし、辛いことは辛い。理想幻想を捨て、できることを探して、より良い道を探すしかない。
そう思えるようになるのが、本書の一番の救いだと思う