あらすじ
〈「クレヨンしんちゃん」や「ちびまる子ちゃん」の家族はもういない。〉
父の不在、母のワンオペ育児と家事──。日本の家族の現実は過酷だ。
それでも多くの人が、「家族」を大切なものと考えている。
低い出生率と世界一進んだ高齢化、ひとり親世帯の貧困率の、さらには同姓を強いられる唯一の制度を持つ現代の日本の家族とはどのようなものなのか。
本書は、日本とイギリスの家族を調査、比較しながら、日本の家族の実相を探る。
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「ひとりでも生きられるようになってきた現代社会において、それでもなお人が〝家族〟を形成するのはなぜなのか?」
父が仕事で不在がちでも、ワンオペ育児と家事で女性たちが疲弊しても、意外にも今でも多くの人が、「家族」を大切なものと考えている。
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保守派が目論む自助を担う器ではなく、フェミニズムが忌避する女性を閉じ込める檻ではなく、一人ひとりが自由で、かつ頼り合える家族をどのように作ることができるのか。
社会学者たちが自らの体験を踏まえながら家族のこれからを語る。
《社会学者が分析する日本の家族の実像。日本の未来も、少子化対策も、ここからだ!》
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【目次】
■まえがき
■序章………幻想の家族像を捨てる[品田知美]
■1…………家族像の輪郭──生活時間の変化から[品田知美]
■2…………生活の充実感をもたらすものは何か[高橋幸]
■3…………リビングという空間──住まわれ方の日英比較[野田潤]
■4…………「郊外」から考える──「家族」と「幸福」の物語[水無田気流]
■5…………家族生活の意味論──日本とイギリスの価値意識[品田知美]
■終章………離れても共にいても家族[品田知美]
■調査概要
■座談会……日本の家族像を点描する[品田知美×水無田気流×野田潤×高橋幸]
■あとがき
■引用文献
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Posted by ブクログ
前情報なしに手に取ったため、思っていたよりきちんと研究色の強い本で面食らった。が、興味深いトピックが多かった。
"「子どもを持つ」、「育てる」、「過ごす」をすべて同じ人に一致させようとする力学が働く限り、誰もが子どもを産む状況は想像しがたいが、このような厳しい環境のもとで、あえて子どもを持つ選択をした親に大切に育まれた人びとが次世代の社会を作るなら、近未来社会の価値意識には意外なほど急速な地殻変動が起きる可能性はあると思う。"
日本では男女での家事育児にかける時間の差が5倍以上ある、というデータは、自分が子育てしていても実感するところ…
自分の子どもは男女両方いるが、どちらも家事はできるようになってほしいし、理系文系偏りなく学んでほしい。自分がエンジニアをしているから余計思っているのはかもしれないが、周りで子育てをしている人でそう思う人はそれなりにいる印象。
そういう人がさらに増えれば、ジェンダーでの役割分担も、自分たちの子供が成人する頃あたりまでに急速にかわるのかもしれないとも感じた。
あと、イギリスみたいにホームパーティーしないといけないような風潮は自分に向いてなさすぎるとも感じてしまった…
どの国も子育て環境に関しては一長一短って感じかなとも思った。
Posted by ブクログ
家族で食事を共にできない日本。 社会学者の品田知美氏ら4名の共著による家族論。
日本とイギリスとの家庭に関する意識調査、比較が面白い。
(韓国および)日本の男性は有償労働の時間が諸外国の中では突出して多く、家事労働の時間が極端に少ない。日本の家庭は父親不在が普通で、母と子で「家族」となっている現状がある。母が無償労働(≒家事)の多くを担っており、負担に感じている部分が多い。ただしガーデニングやペットの世話など、日本では趣味と考えられているものがイギリスでは家事(無償労働)と捉えられるなど、家事の時間を多く取れることが生活にゆとりをもたせることにも繋がっている可能性がある。
イギリスの家庭では他の家族を家に招いてホームパーティーを行うことが多い、そのためか、リビングの風景には子供の私物は殆ど見られない。一方で、日本ではリビングに子供の私物が当たり前のように置かれている。これは国民性の違いもあると思われるが、日本では休日は家族が共に過ごすための時間を取るのが精一杯で、他の家族を招いたりする余裕がないという要因も大きい様に思われる。
公私は日本では闘争となり伝統的に公が私より優先(すなわち男>女)される。一方でイギリスは公私分割社会。