あらすじ
明治後期の北海道の山で、猟師というより獣そのものの嗅覚で獲物と対峙する男、熊爪。図らずも我が領分を侵した穴持たずの熊、蠱惑的な盲目の少女、ロシアとの戦争に向かってきな臭さを漂わせる時代の変化……すべてが運命を狂わせてゆく。人間、そして獣たちの業と悲哀が心を揺さぶる、河﨑流動物文学の最高到達点!!
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Posted by ブクログ
12/23早読み、〜12/31 じっくり読めた
いのちの凄み、人間の業
こちらも素晴らしい作品でした…
熊として生きられず人間として生きてみようとした熊爪
動物を狩るシーン、鹿、熊、うさぎ
直木賞の選評にもあったが、グロいとかを通り越して、芸術的な描写に思えました
女の熊のように子を殺されないがため(解釈)熊爪を殺した、隻眼の陽子
熊爪に執着し、面倒を見る、のちに没落した主人と、無感情から一気に退廃的な嫁
ただただ職務を果たす爺医者が好きだったな
前半はとても純粋に面白かった。野生味溢れすぎ、鹿の解体も、熊との対決も、町の人たちとの交流も
後半、どんどん崩壊に向かい、熊爪が大怪我をし陽子への執着と赤毛の熊との接触で決定的に人間としてやってはいけないことをしてしまう(獣姦?)
おぞましさと共に哀愁が増していく
陽子と所帯を持つが、最後、殺されることを受け容れる。死ぬ時は今なのだ、と
子どもを殺されそうになった陽子が獣のような夫を殺したと解釈した。確かにこの結末は男性選者には理解し難いかもしれない
Posted by ブクログ
'24年 第170回直木賞。初読み 河﨑秋子さん。
面白いかどうかは別なんだけど、すごい本を読んだ気がする。
直木賞も納得なのだけど、純文学のようでもあった。
明治初期、北海道白糠町の猟師 熊爪。来歴はほぼ不明。人との関わりは獲物を最低限の金品に換える時に下山する程度。野生のヒト科ヒト属ヒト。
生死を賭けた猟師と羆の戦いの物語かと思ってたら全然違ったw
第二部とも言える、町から貰った陽子の出産育児を通して描かれる後半に、熊爪というヒト⇒人の生命の哲学が。
目の治療をした場面と、赤毛を仕留めた後の射精が非常に印象的。「見えるのに見ない、楽に生きられるのにそうしない」「理解できない、面倒臭いものを遠ざけたい」この気持ちはよく分かる。
熊爪の最期の選択は生物 ヒトとしての父性でもあったような気もする。
突き詰めると、一皮剥けば獣も人もほとんど同じで、寧ろ熊爪の方がずっと人としての大事な物を持っていたのかもしれないな。
Posted by ブクログ
第170回直木三十五賞
血生臭く、力強い作品だった。
タイトルの「ともぐい」の意味、ラストの展開をどう受け取るのかを言葉にできず、色んなレビューを読んでみた。
そんな中、「己が負けた相手に食われ死ぬのが自然の摂理」という内容の一文を見つけて腑に落ちた。
太一を助けたくだりから
→1人で生きてきたつもりが熊爪自身も負傷し人の世話になる
→赤毛との対決で死ねず自分は獣でも人間でもない半端もんだと思う
→温もりを求めて陽子と生活を始める
→陽子は母として生きる決意をし、熊爪を殺して出ていく
の流れが秀逸だと思った。
ラストで殺す必要があったのか?と思わなくもないけど、人にも獣にもなれず遺伝子を残す役目を終えた熊爪を殺したのは陽子の優しさもある?、、、いや、ないか。
熊のオスとメスは繁殖期だけ一時的に一緒にいるけど、子育ては母クマが単独でするらしい。
また、母クマが子を守るためにオスと戦った結果殺してしまうこともあり得るとか。
もしかして、直前に熊爪が胎児がどうなろうと知ったことかと嫌がる陽子を力づくで犯したことも関係あるかも?
いづれにせよ、陽子の生き方は母クマそのものになってしまった。
人も獣も殺しあう。
犬だけが従順に熊爪を裏切ることなく助けてきたのに、熊爪は便利だから連れているだけで「犬」としか呼ばない。愛着や感謝を感じる描写が全くなかったのが辛かった。
熊との対決は長く、義父のエピソードは薄く感じた。
グロテスクな描写は不快だった。
星3.5
Posted by ブクログ
2023年下半期の直木賞作品。
何か想像していたのとは違っていたが、物語の迫力に押されっぱなしだった。
熊との戦いだけに限らず、自分の人生を考え、生き、死んでいった。
山に生き、山で死ぬ。ピークを過ぎるとどう死ぬのかを考えるのはわかるとして、こういう結末になるとは想像だにせず、直木賞にふさわしい深さと人生観だと思った。
Posted by ブクログ
想像もつかなかった猟師の世界を赤裸々につづっていた。大自然の中で生きる男の生き様。街の生活と小屋の生活が対比されていたが、自然の中が行きやすい熊爪は、街で生きる女に命を絶たれた。
Posted by ブクログ
明治後期、人里離れた山中で犬を相棒に狩猟をして生きていた熊爪。ある日、血痕を辿った先に負傷した男をみつける。男は冬眠しない熊「穴持たず」を追ってきたというが…。
熊爪の生活、「穴持たず」「赤毛」との戦い、不思議な少女。緊張感のある山での生活だけでなく、里の変化が不気味で怖い。熊だけではなく人間も怖い。
Posted by ブクログ
明治後期、北海道の奥山。獣のように生きる猟師・熊爪は、熊との死闘や人との出会いを経て、「自分は何者か」という問いに向き合う。
自然の中で生き抜く研ぎ澄まされた感覚が凄まじい小説だった。
熊爪は猟師の養父に拾われ、山で暮らす術しか知らない。街との関わりは、獣の皮を売るために馴染みの商店を訪れる程度。判断基準は自分や山の生き物の観察から得たもので、人間よりも獣に近い。
ある日、熊に襲われた男を助けたことが転機となる。見捨てなかったのは、自覚はなくとも養父に助けられた経験が影響したのだろう。その後、穴持たずとの闘いで最強の熊・赤毛と遭遇し負傷する。人間社会で助け合う経験を経た熊爪の思考は、人間らしい悩みに満ち始めた。
炭鉱夫への誘いもあったが、彼の最終的な判断は獣のそれであり、赤毛との死闘に挑む。赤毛を倒し、自分が死場所を求めていたと悟る姿は、人間にも獣にもなれない哀れさを帯びていた。
その後、人のぬくもりを求めて盲目の少女・陽子を攫い、擬似家族のように暮らすが、穏やかな生活はしっくりこない。死場所を求めて熊に挑むような男が、道理に外れた行いをしてのうのうと生きられるはずがない。
やがて、道理外れの象徴のような陽子に命を奪われ、熊爪は本望だったのだろう。近代化の進む日本で、彼なりの幸せな最期を迎えたのではないか
Posted by ブクログ
前半の描写が生々しく、とても惹き込まれた。自然界に1人で生きている逞しさに、尊敬の念があったんだと思う。熊爪が負傷して徐々に弱々しくなったあたりから、胸の高まりも静かになっていった。復活することを期待していたが、どんどん人間らしくなる姿にがっかりした。人間は一度傷付いたらそこで終わりなんだろうと。熊爪も結局はオスで、自分よりうんと弱いメスに殺されて終わり。金は必要な分だけあればいいという熊爪だったけど、そういうところは本能の赴くままなんだなと。結局は人間だった。