あらすじ
父親から下町の駄菓子工場を継いだ素人の娘。老舗旅館の女将を継ぎたい、トランスジェンダーの息子。障碍者を雇用する会社で、仕事に、人間関係に悩む新入社員。祖父の農場を継ぐという息子を心配する父親。なにかを「継ぐ」にはトラブルがつきもの。それでも前の世代から何かを引き継ぎ、次へ伝えようともがく人々を描く、連作短編集。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
どんな場所でどんな人物がやりとりしているのかがありありとイメージできる素晴らしい文章力。解説の最後が「ドラマ化されるような気がする」と締めくくられているが、まさにすでにドラマ化したものを映像として鑑賞した読後感。6つの作品全てに引き込まれて、こんな薄い本読んでたんだっけ??というくらい不思議な感覚。
人物の自己評価と他者からの評価への戸惑いも魅力。主人公に入り込んで読んでいると、「そうか、そう思われていたのかこの人は」となる。人が相手に与える印象、関係性、またその変化など、人はあくまで人を介して自分というものを作りあげていたり、知ることができるのかなと思った。直接的にあえて言葉にしなくてもできていなくても自分が思っている以上に自分の思いが周囲に伝わっているということなんだろう。だからこそ、思い悩み、何が大切なのか、どうすべきか言葉にならないことでも真っ直ぐ自分自身と向き合うことが人間として大切なんだろなと思う。一つ一つのことに向き合うことのできる人間でありたいと思う。時には感情的になることも、すぐに結論を出せないこともあるけど、考えて行動して少しずつ変わっていく。それが人生なんだろうな〜。その変化が、リアルな中に夢がある素晴らしい作品でした!!
Posted by ブクログ
表紙の黒髪でひとつしばり、
白いパーカーでこちらを見つめる女性が気になり、
さらにタイトルが気になり手に取りました。
-------------------------
守りたいのは、
伝えたいのは、
「思い」だ。
お金も事業も
人間関係も、
トラブル続出!
理容店、
駄菓子工場、
チョーク会社、
酪農家、
老舗旅館、
サラリーマン――
継ぎたい、伝えたい人々の、
切ない思いに胸が震える
6編の”あと継ぎ”連作短編集!
-------------------------
一作目の「後継ぎのいない理容店」は、
まだ読み始めだからか展開が速くて、
自分の気持ちが追い付けないかも…と不安になりましたが、
「女社長の結婚」で、
あれ思っていた感じと違う、
ちょっと好きかもとなり、
「わが社のマニュアル」でも、
そっか、そういうこともあるし、
会社は一人で成果を出さずに
多数で成果を出す場所だよなと温かい気持ちに。
ここで、この作者どんな方と思い、
表紙裏の著者紹介を見たら、
「女による女のためのR-18文学賞」大賞受賞と。
そこで一瞬興奮しました。笑
だから好きなのか!って。
私の大好きな豊島ミホさんを輩出した文学賞。
信頼しかないです…!笑
そのままの気持ちで「親子三代」を読み、
酪農の厳しい現状や、
胸が苦しくなるような場面、選択もあり、
通勤途中に泣きかけました。苦笑
「若女将になりたい!」では、
身体は男性でも心は女性の主人公が、
女将(母)に認めてもらえるよう奮闘する話です。
個人的に好きだったのは、「サラリーマンの父と娘」。
色んな業界、会社を見てきて、
最後にたどり着いた本作。
親子の関係、相手を思う気持ち、
社会人になって、仕事をすることで分かり合う、
通じ合うこと。
私も30過ぎてから、
父と仕事の話をするようになりました。
家業、仕事、継承すること。
そこには必ず人の感情があって。
読み終わったあとの読後感が良かったです。
田中さんの他の作品も読んでみたいと思います。
Posted by ブクログ
「後継ぎのいない理容店」理髪店の息子が介護職に進んだ訳は父親のシャンプーがきっかけだった
「女社長の結婚」麩菓子工場の娘が父の死去で跡取りになる決意、そして結婚も決意する。
結婚相手がものすごく素敵
「わが社のマニュアル」障害者雇用が盛んな会社に途中入社した健常者、マニュアル無しで試行錯誤しながら自分なりに相手との距離を決められるようになる
「親子三代」牧場を負債とともに相続するべきか悩む、都会に出て成功した息子が、自分の息子の仕事との間で揺れ動く
「若女将になりたい!」
トランスジェンダーの息子を受け入れ、今の女将との間に立つ血縁関係は無い父親
「サラリーマンの父と娘」定年間近な父親と、異動に悩む娘。娘を見守る父親の、手探りながらも愛のある心遣いで、娘はサラリーマンの宿命を受け入れ成長していく
あとを継ぐ、継がない、どちらも大変な決断だけど、最後のパターンは一般的な継ぐとは異なる、同じ職種ならではの大きなアドバイスのようなイメージ。
女社長の結婚、が一番好き。