あらすじ
セイディはMITの学生。ある冬、彼女は幼い頃一緒にマリオで遊んだ仲のサムに再会する。二人はゲームを共同開発し、成功を収め一躍ゲーム界の寵児となる。だが行き違いでゲーム制作でも友情でも次第に溝が深まっていき――。本屋大賞受賞作家による最新長篇
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Posted by ブクログ
面白くて550ページ一気に読み進められた。
プログラミングやゲーム作りなどの天才たちの物語を読むのが好きで、この作品もすぐにハマった。
全体的にフェミニズムやジェンダー、人種、障害、そしてインターセクショナリティといったものに関する描写が多く、それらに関心のある方にもお勧めできる作品。
特に婚姻制度についての言及やセイディの態度、セイディとサムは一度も恋愛的な関係にならなかったけれど、お互いに誰よりも深く結びついていたことがすごくよかった。
作中に出てくるゲームはほとんどやったことがない(名前は知っているのも多かった)くらいゲームには疎いけどとても楽しめたし、セイディとサムが作ったゲームをプレイしてみたいと思った。特にソリューションが気になる!
サムがセイディに素直に自分の足の状態や辛さを打ち明けられていたらと思ってしまった。それでも希望が持てるラストで、二人なら支え合ってこれからもゲームを作り続けてくれるはず。
Posted by ブクログ
読んだ読んだ。自分がゲーム好きということを差し引いてもおもしろかった。どこまでいってもややこしく面倒くさい二人+αの話。このαの存在がまあ大きいのだが。
主人公たちが社会的にはとんとん拍子に成功していくおかげで、前述の面倒くささやあれこれの悲劇があるにもかかわらず、ストレスなく読み続けられる。ところどころに未来の話を差し挟んでおくやり口は、興味を持続させたり先の展開に期待させたりという意味ではそこまで有効だったようには思えない。ただ、「再会」を反復するラストシーンは文句なしに美しかった。
それにしてもお国柄や時代、若さのせいもあると思うのだが、ドラッグの扱いが軽ぅい……。
Posted by ブクログ
我らが奈須きのこは、ある対談でこんなふうに語った。
「「RPG」ジャンルの場合は、「世界を旅して、最後に世界の終わりを見る」ことが重要です。そのRPGの終わり……ひとつワールドエンドを見届けるために、その世界の中で物語を作らなければなりません。」
RPGに限らず全てのゲーム(そして全ての物語)は一つの世界を作り上げている。それがモノクロであれ数分で終わるものであれ、何らかの秩序と結末が用意されている。
だからサムがセイディのために作り上げた「パイオニアーズ」は究極の愛情表現だろう。愛する一人のために世界を作り上げるなんて、今まで読んだ本の中でとびきりロマンチックだった。
そして結末を迎えたプレイヤーは、まるで夢から覚めるように現実に向き合える。
現実に生きるためには、現実を一度忘れなければならないんだ。
サムに感情移入しすぎて辛かったけど、多分ゲームを作り上げた時点で「愛」に気付いたんだろうなぁ。愛を与える(「愛している」と伝える)ことに臆病だった少年が、ようやく言えるようになったのは単純だけど綺麗な構成だった。
『書店主フィクリーのものがたり』に勝るとも劣らない名作でした。オススメです。
Posted by ブクログ
面白かった!
30年という長い時間軸だけれど、自分の世代と重なっていることもあり、物語の中に自分がプレイしたり知っているゲームや、時代背景が出てきたのも楽しく読めた要因かもしれない。
自分の幼少時代にもこの物語の主人公達のような同世代がいたかもしれない、と思いを馳せたり想像を巡らせてしまう。
私自身はそこまでゲームをやり込んだタイプでもないし、詳しいわけではないけれど充分に楽しめる一冊だった。
長編だけど飽きることなく、読み終わったときはもっとセイディとサムのこれからを読みたい、という気持ちになった。
この2人の関係性は、間違いなくソウルメイト、絆、運命、そんなふうに言えると思う。人生でこんな関係性が結べる相手と出会うって凄く素敵だし幸せだと思う。
Posted by ブクログ
お仕事小説かと思いきや、二人の男女の人生の話だった。しかも恋愛ではない大いなる愛で包まれた友情の話。
ずっと最強だった二人が壊れてしまう様はとても辛かったけど、すごくリアルで一冊に人生が詰まっていた。いつの間にか読ませてしまう不思議な本。映像化にも期待してます!
悔しいのはこれが日本で生まれなかったこと、ゲーム産業では屈指の名作ソフトを産んだ国なのに、この小説は日本では生まれないんだろうなと思う。でもいつかこんな小説が生まれる国になることを願って。
Posted by ブクログ
愛こそ全て。
愛さえあれば足りる。
その荷が溝(轍)と釣り合っているなら。
荷は
愛の重さ。
訳者の後書きより。
良い訳者だった。他の作品も読みたい。
ライフアフターライフのように、ゲームで何度も死んだら生きる。輪廻転生
人を絶望から守るのは、遊びを求めるその心なのかもしれない。
Posted by ブクログ
サムとセイディの関係性は、一体何と位置付けられるんだろう??
もはや友達以上恋人未満でもない。家族でもない。ただの同僚にしては関係が深すぎる。
一番近いかなと思いついたのは、幼なじみからコンビになった漫才師。友達という関係だけじゃないし、コンビだと仕事の同僚以上に距離が近い気がする。サムとセイディはそこにもう一つ愛情がのっかるけどね〜複雑〜
そんなことをモヤモヤ考えつつ、個人的には全体的にあまり刺さらなかったなと思っている。
サムとセイディが特殊な関係ということはわかるけど、マークスとセイディがくっついたのはいただけなかった。
サムが傷つくって容易に想像できるじゃん!!なんでよりによってそこがくっつくんだよ…。
そもそも大前提、サムとセイディがめんどくさすぎた。サムは自分のこと隠しまくるし、セイディはなんかずっとわがまま言ってるし…
会社にいたら周囲が手を焼くスペシャリストタイプ。絶対一緒に働きたくない。
たしかに二人の関係性は貴重だし尊いし特筆すべきなんだろうけど、あまりにも自分とタイプが違いすぎて気持ちが入り切らなかったなぁ…残念。
一番印象的だったのはマークス。
彼は、ゲームについて「無限の生まれ変わり、無限の贖罪の可能性」であり、「プレイを続けてさえいればいつか勝てるという希望だ。敗北は一時のものだ。永遠に変わらないものなどこの世にないんだから」(p461)と語った。
でも、人生ってゲームとは違い、ライフは一つしかない。リスタートできない。
それを体現したのが、ゲームは続けいればいつか勝てると言っていたマークス自身であるという点に震えた。
(あくまでも個人的な解釈なので、作者は本当は違う意味合いで書いたのかも)