あらすじ
水村美苗氏(作家)、推薦!
河合隼雄物語賞、日本エッセイスト・クラブ賞
(『親愛なるレニ―』にて)受賞後、著者初の半自伝的「私小説」。
些細な日常が、波乱万丈。カリフォルニア・ニューイングランド・ハワイ・東京を飛び交う
「ちょっといじわる」だった少女にとっての「真実」とは。
透明な視線と卓越した描写で描かれるちょっとした「クラッシュ」たち。
【推薦コメント】
小さい頃のアメリカ体験が優れた資質に火をつけ、英語がもう一つの母語となった希有な女性――その瑞々しい筆で綴
られる思い出話は、おかしく、哀しく、そして驚きに満ちている。私たち日本人が日本人であることの意味をいかに
考えずに済ましているか、済ましていられるかを考えさせる。
――水村美苗氏(作家)
【目次】
ミリョンとキョンヒ
――The Plastic Wrapper
ある日、とつぜん
いなり寿司の発表
ピアノ・レッスン
ハイウェイの向こう側
こちら側の人間
Love, Always
――On Not Becoming Asian American
レベッカの肖像画
ブドウと水着
ニューヨークのクリスマス
On Being Interpellated as Asian American
The Chinese Boy
カシオの腕時計
山手線とナマチュウ
――On the Matter of Eggplant
詩人のキス
Kitchen & Bath
――On Becoming a Woman of Color
お向かいへのご挨拶
父とイチロー
続 私小説
――What I Write About When I Write in English
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
英語を巧みに操れると、それだけで強者になれたような気になるのかもしれない。
私は、もしかしたらそれを望んで最近英語を勉強しているのかもしれないと気付いた。
吉原真里さんは、この本で、自身の嫌な部分も正直に表現していると思った。
実際、人間は自分をよく見せようとするけど、「こんなこと思ってる人と付き合いたくないわ〜」と思うような書き方してあって、でも、人間てわがままで自分勝手なんだろうな。
正直に表すということはそれだけ誠実だということの証でもあると感じた。
Posted by ブクログ
著者の自伝的なエッセイのような,小説のような本。英語ができぬままに,中学生でアメリカに渡り,英語ができるようになるに連れて抱く,気持ちを素直に表現している。ただし,良いことばかりではなく,他者に対する苛立ちや諦めのような負の感情もちゃんと描かれている点が非常に面白い。大学院時代や大学教員となってからは大人の視点で,自分と他者を見つめ,日本とアメリカを見つめ,そして,日本語と英語で語ることを通して,得られた経験を赤裸々に語っている。海外留学経験がなくても非常に面白いが,経験があると,共感が生まれやすいのではないかと思う。
Posted by ブクログ
『親愛なるレニー』の著者であり翻訳者でもある、吉原真里さんによる自叙伝的私小説。そう!これはあくまでも“私小説”だから、主人公のMariが語ることがすべて実体験とは限らない‥のだけれど。いつ、どこに住んでいたかだとか、どんな属性の友達がいたかなど、ひとつひとつのエピソードにはリアリティが有って、同情したり感心したり。でも‥なんというかMari、優秀なんだろうけれども時々上から目線になるのがヤな感じだったり脇が甘くて危なっかしいところもあり。長く英語圏に住む身内も英語を話す時にはMariっぽくなるのは生存戦略なのだろうか。御本人は大学教授だけあって、話も上手でチャーミング。ポリタスの和田静香さんとの本書がテーマの対談もおもしろかった。
Posted by ブクログ
ハイウェイを超えた向こう側の中学まで一緒に車で通学していた同級生Rochelleと疎遠になった話や、クリスマスのニューヨークでのハプニングなど、気まずいエピソードが目の前に起こったようにリアルで、読後も苦く心に残った。
アメリカへの突然の転校、自分の意思でのアメリカ留学、いろいろなルーツの人と生活圏で関わること、など私が知らない世界を擬似体験できた。
Posted by ブクログ
「水村美苗氏推薦!」という帯とタイトルだけで手に取ってしまい、読み進めるごとに「英語との格闘ストーリーかな」という予想と期待が2/3くらいは早合点だったことに気づく。著者の半生かと思いきや、それも違い、「私小説」とな。
それでも私には決して見えることのないアメリカ社会の奥の奥、異文化とさまざまな人種のど真ん中で暮らす複雑さを疑似体験したような、得難い読後感。
Posted by ブクログ
読みはじめてすぐに、水村美苗さんの『私小説from left to right』に似てるなと思ったら、それを意識して書かれたものだった。
この本も自伝的要素のある小説である。それは読めばわかるが、タイトルと表紙の絵と著者のプロフィールから、英語やアメリカ生活を描いたエッセイかなと思ってしまうのが、惜しい。(出版社の方でわざとそうしたのかもしれない。)
水村さんより若いのでアメリカのハイスクールや大学にも様々なルーツや背景を持つ人がたくさんいる。しかし、思春期にいきなりアメリカの現地校に入れられ、何を言われているのか全くわからずバカ扱いされたり、数学は日本では苦手な方だったのにアメリカではトップレベルと言われたりといったところは似ている。
自分はprofessorなのにエルサルバドル移民のjanitorの男性から言い寄られたり、配送業者のサモア人男性から友達になってくれと言われたり。差別はいけないと思いつつも、でも自分が白人女性なら彼(ら)は同じことをするだろうか、と悩んだり。そういう体験はないが、その気持ちは想像できる。
同じアジア人出っても、それぞれの過去は決定的に違い、ベトナム人の恋人にフラれる話も切ない。
父と疎遠のまま死に別れたところは、もう少し何があったのか書いてほしかったけど。
作者が水村さんにシンパシーを感じるのも尤もだと思う。お二人の対談も読んでみたいし、『親愛なるレニー』も読もうと思った。
英文のところは読ませる気あるのか?字が小さくて背景が暗くてめちゃくちゃ読みにくく、途中から飛ばしてしまった。もっとちゃんと読めるようにしてほしい。あと表紙はウィリアム・モリスにすべきだった。横書きにすべきだったと。
Posted by ブクログ
そこまで赤裸々に書かなくても…と思わないでもないが、全体的にはよかった。
自分の経験と重なることもあり、懐かしかったり共感したり、改めて考えたりしながら読んだ。
英語部分が読みにくい!意図的にチャプターブレイクの紙みたいなデザインにしてあるようだが、せっかく興味深い内容なのに、そして筆者の伝えたい話なのに、こんな扱いで載せるなんて!