あらすじ
青山キラー通り沿い。高度成長期に建てられた原宿団地。大都会のど真中に取り残されたオアシスのような集合住宅だ。住人もみんなどこか一風変わっている。変わってはいるが人間同士の絆や温かな心をしっかり持っているひとたちだ。不安や焦りを抱え生きる彼らの、おかしくて泣けて、ちょっぴり勇気をもらえる物語。
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Posted by ブクログ
青山キラー通り沿いにある原宿団地を舞台にした短編集。
原宿団地とは実在したのですね。
もちろんフィクションでしょう。
主人公は73歳の小曽根さん。
40代までアメリカで過ごした江戸っ子で、ベルギー人の奥さんと二人暮らし。
原宿団地の主として団地で起こることをすべて見ている。
小曽根さんが主人公になったり、脇役になったりして物語は進んでいく。
表題作『原宿団地物語』は団地の住民達が団結して落書き犯を捕まえる話。
タイガーマスクの仮装をすることで安堵感を得られる女性という存在が面白い。
バツイチの翻訳家との恋愛話もあり、唯一恋愛色の強い話だった。
『汚し屋』
ヴィンテージジーンズの贋作を作る売れない役者が主人公。
団地に住むホステスの部屋に転がり込んで、小曽根さんと出会う。
夢追い人のなんだかヒリヒリする話。
『ボールゲーム』
小曽根さん少年野球の監督になるの巻。
爽やか。野球が好きであるほど楽しめる。
ノー知識だといまいちかも。
『スイス式』
ハゲであることにコンプレックスを持つスイス人マッサージ師の話。
自虐と悲哀。
『原宿シロー』
亭主関白な夫を持つ専業主婦のお話。
一番ドラマチックなものの、こういう系統の話は好きではない。
『夢騒がし』
自分が人を殺した(妻を殺した)と思い込んでいる男の話。
精神ホラー的。
『天狗』
トンデモ系。
とつぜん現れた天狗に「願いをかなえてやる」と言われた40男が、とある願いをかなえてもらう話。
かなりしょうもないけど、オチはよかった。
『チョコレート・ペーストの日々』
小曽根さんがいじめられているらしき小学生と出会い、なんとか救う手立てはないかと考える。
小曽根さんの生活もちらり。
ほのかな恋愛テイストあり、
スポ魂あり、ホラーあり、不思議系もありで、いろいろなお話が楽しめる。
相変わらず文章がうまくて展開のメリハリも効いて面白い。
のだが、本作は小曽根さんのキャラがいまいちな印象だった。
小曽根さんは中身はアメリカンなおじいさんだけれど、物語の中ではとても70代には見えない。
70代に設定する必要性もさほどない。
だからあえての小曽根さんの設定に違和感があった。
そしてそれぞれの物語の登場人物、筋は悪くはなかったものの、もう一段階、全編につながりがあればよかったかなあと思う。
ちらっと別の話とリンクしたりする場面もあるものの、少し物足りなかった。
ちょっとパラパラしちゃった感。
もう一歩のカタルシスがないのが、凡庸な読後感。