あらすじ
日本の化学界を牽引してきた偉大な科学者から21世紀を生きる次代への伝言
化学界の第一人者が膨張と拡大の二十世紀を振り返り、変革の時代を迎えた二十一世紀に必要な新しい文明の創生を提言。その際に不可欠な“複眼的視点で見ること”や、“東西文明の融合と調和”に、日本人が果たすべき役割について述べ、私たちへの期待を語る。
次代の日本人には、果たすべき大きな“使命”がある。
東洋には昔から、知足=「足るを知る。満足することを心得、不満を持たずに生きる人は精神的に富んでいる」という価値観があります。拡大を続けるその先に起こるかもしれない人類の悲劇を避けるには、この知足が鍵になるでしょう。拡大と知足という、相対する価値観を複眼的思考でもって調和させ、二十一世紀の文明をつくるのにふさわしいのは、矛盾を容認でき、共生に寛容な東洋的な考え方です。
私たち日本人も東洋の一国として、大きな働きが求められています。民主主義のはき違いで教育に問題を抱えたり、独創性の弱さが指摘されたりしますが、復元力をいう強みを持っています。二十世紀初頭には、学術・文化の面で世界的な活躍が多々見られた歴史もあります。この二十一世紀に再び、気力に満ちた時代を築き、調和の文明を創生するリーダーとなる使命が日本人にはあるのです。
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Posted by ブクログ
『複眼的思考の進め』は、異なる価値観の調整力としての複眼的思考の重要性を説く。また、セレンディピティや暗黙知と好奇心による閃き、効率化と探索のバランスが結果を出す上で不可欠だと示唆している。
Posted by ブクログ
○物事を両面から見る複眼的視点
調べてみますと、日本には複眼的視点を持った先人が少なからずいます。
その一人が、江戸時代中期の学者、三浦梅園(みうらばいえん)
梅園は、「条理学」という学問分野を独自に作り上げました。
○経済活動における複眼的視点
実業家の渋沢栄一は、「片手に算盤、片手に論語」として述べています。
○日本人が独創的な創造性を発揮するのに必要なこと
「セレンディピティ」:思いがけないものを偶然発見する能力
言葉の元になったのは、セレンディプ(現在のスリランカ、セイロンの古称)
に伝わるおとぎ話『セレンディプの三人の王子』
父王の命により旅に出た三人の王子は、幾多の困難にもめげずに知恵を働かせ
捜し求めていたものとは別の幸運を偶然にもつかんだ。
イギリス首相ロバート・ウォルポールの息子で、作家のホレス・ウォルポール
はこのおとぎばなしにちなんで、「セレンディピティ」(serendipity)という
言葉をつくりました。
○教育
日本の戦後教育の最大の問題は、複眼的な視点ではなく、自由だけ、
権利だけを主張する面が強すぎて、社会に対する責任や義務を置き忘れて
しまったことにあります。
⇒考えさせられる主張です。
Posted by ブクログ
母から借りた本の中にあり、自分では選ばないジャンルですが、読んでみたらとても面白かったです!
私は文系なので、理系の内容は…と先入観を持っていましたが、著者が恐らく本当に頭のよい方で、文章や表現方法がとても分かりやすかったため、少し視野が広がった気がします。
著者は量子学で大きな業績を残されており、重要なポジションも数多く経験されている凄い方です。その著者の思考法が紹介されていますが、ご自身の生い立ちなども含め、かなり読みやすく書かれています。
現在子育てをしていますが、自分の子どもをどう育てていくべきかという視点でも読み進めることができ、一定の解を得られた気がします。巷の育児書とは全く内容を異にしますが、子育て中のママさんにもお薦めしたいです!