あらすじ
まさかこんなことになるとは思わなかった──。日常に厭き果てた男が南の島へと旅に出た。ジャングルで彼は池に落ち、出られなくなってしまう。耐え難い空腹感と闘いながら生き延びようとあがく彼の姿はやがて、少しずつ変化し始め……。孤独はここまで人を蝕むのか。圧倒的筆力で極限状態に陥った男の恐怖を描ききる。緻密な構成と端正な文章が高く評価された、第16回日本ホラー小説大賞大賞受賞作「化身」ほか2編を収録。
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Posted by ブクログ
ホラーではないホラー大賞。
とある密林で、人知れず坩堝状の池に嵌って何年間も生きた男の話。
ソリッドホラーを期待したいけど、描写がやたらと綺麗で、恐ろしさを感じない。
環境に適応する中で、徐徐に身体が変わっていくことを、恐怖を煽らず書いているため、流れるように読めてしまう。一文の形容詞量も適切で、文章力の高さを感じる。
が、怖くないので星3つ。
ドラム缶と蟹の方が怖い。
Posted by ブクログ
最近のハードなホラーが好きな人には駄目だと思う。表題作のタイトルはグロテスクな描写や自分の体が変容する恐怖を期待させるが、そういうものは何も無い。描写力はあるがグロテスクでなく綺麗と感じさせるものだし、恐怖でなく楽しい感じだ。逆に、最初から楽しいものを期待して買うと表題作は楽しめると思う。他の二つについて。表題作で見られた発想の良さが少しでも感じられる第2編・3編を期待してたらあてが外れた。どこかで読んだようなありふれた話で、がっかりした。でも筆力は相当なものなので、安心して読める。文庫版で気楽に読むには良いかもしれない。
・「化身」
特殊な環境に遭難した主人公が、日々を生きる中、体が環境と生活に適応し、どんどん変容していく話。生態系の最下位にいた主人公が、その頂上にまで達する話で、楽しい。特に○○を食べるためにジャンプするシーンなどわくわくした。体が変容していくが、それに対する主人公の苦悩など一切無い。むしろ環境に適応してウェルカムと感じているよう。読み物としてのレベルは申し分ないが、日本ホラー小説大賞という肩書きは似合わない。設定だけはホラーであるが、ホラーとして進行していかない。というより、最初から読者を怖がらせようとすらしていない。
・「雷魚」
池に現れる「女の人」の話。少年の心はよく書けているが、ややありきたり。
・「幸せという名のインコ」
飼っていたインコが様々な<お告げ>をする話。オチは見え見えだが、最後のインコの言葉自体はなかなか面白かった。だが、これもよくある話。新しさはない。
今のところあんまり次を読みたいとは思わないが、「化身」に匹敵する怪作なら是非買いたい。