あらすじ
人類vs気候変動 闘いの30年未来記
2025年、インドを未曾有の大熱波が襲い、2000万人の犠牲者を出す。
喫緊の課題である気候変動に取り組むため国連に組織された、通称「未来省」のトップに就任したメアリー・マーフィー。
つぎつぎと起こる地球温暖化の深刻な事態に対し、地球工学(ジオエンジニアリング)、自然環境対策、デジタル通貨、経済政策、政治交渉……ありとあらゆる技術、政策を総動員。人類の存亡をかけ果敢に立ち向かっていく。
〈火星三部作〉のキム・スタンリー・ロビンスンが描く、現代から2050年代までの気候危機をめぐる近未来SF小説。
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Posted by ブクログ
#未来省 近年の夏の暑さと来たら、この本の熱波の描写も本当にあり得るんじゃないかと思っちゃう
SF小説って現実世界への警鐘みたいな側面があると思っているんだけど、そう思って読んでみると「これは小説世界の出来事だから」って割り切れない、暑い日々でもちょっと肝が冷えるような気のする一冊です
それでも、人の持てる技術を注ぎ込み、解決に向かおうとする姿勢は、私の好きなSF「星を継ぐもの」を思い起こさせられたし、希望を書いた小説だと思います
あと解説めっちゃ漢字多くて内容が濃いので、解説読むのに結構時間かかりました
Posted by ブクログ
近年の気候変動対策の動きを見ていて、こんなふうに進めてもどうやったって気候変動止まらないでしょ?という諦念を感じ始めていた際に書店で目についた本書。
全く聞いたことのない出版社から出版されているが、著者を調べてみるとSFの名だたる賞を総ナメした書き手による最新の気候変動対策SFを大出版社に先立って翻訳した作品だった。
本書のすごいところは、多少楽観的に感じるものの、困難な気候変動対策の道を政治・経済・科学の積み重ねに裏打ちされた形で描き切っていることだろう。
本書を読んで、「気候変動を止める」という未来を思い描けないのは自分の想像力の限界によるものだと思い知らされた。
この通りに全てが進んでほしいとは到底言えないような未来絵図だけど、「これぐらいのラディカルな想像力がなければ気候変動は止められない、もっと未来を想像せねば」と奮い立たされるような作品だった。
なお、気候ものであってもディザスターパニック的な話ではなく、政治ドラマ的な要素が強いので、ハリウッド的なストーリーを期待する人にはおすすめできない。
Posted by ブクログ
SFだがノンフィクションのよう。地球温暖化対策は、一筋縄では行かないと痛感させれられる。銀の弾丸など無い。我々は充分に行動しているだろうと思っていても、客観的に見ればまだまだ不充分で、うだうだと現状維持と先延ばしをしている間に、人類というか文明が崩壊してしまうのだ。
Posted by ブクログ
話が盛り上がるわけではないけど、いろんなこと考えるきっかけになるし地球温暖化を実際止めるためのアイディアとして興味深いのがいっぱいある。
氷河のくだりとか硫化硫黄の散布とか、どの程度可能性があるのか?面白そうなので参考論文つけてほしい。
私はこのあたりの分野に詳しい方なので困らなかったけれど、これを解説無しで出すの?というような専門的な単語がいくつもあった。生息回廊とか何度も出てくるけどほとんど説明なかったと思う。ブロックチェーンについてはもっと深く調べてみようという気になった。
文章としてはかなり読みにくい。語り手が誰かはっきりしないし、抽象的な話も多い。言い回しがところどころ読み物として不自然で、英語で読んだ方がわかりやすいのではとさえ思った。文がもっと頭に入りやすかったら星5をつけたかもしれない。
Posted by ブクログ
気候変動をテーマとしたかなりの広範囲の教養をもとめられるSF. 最初に坂村健の解説を読むといいかもしれない。自分はサイエンスも経済学もすこしかじっていたのでなんとかついて行けたが、ここらへんがわからないと躓く可能性が十分にある。心して楽しんでほしい。
Posted by ブクログ
坂村健推奨の近未来SF
著者のアイデアの羅列で小説としての興奮感はいまいち。ただし冒頭のインドの熱波の描写は圧倒される。温暖化対策をなおざりにすると、こんな未来が待っていると思うと怖い。
良かったっと思うアイデア
・南極の氷河の進行を遅れさせるために、氷河の下の水をくみ取る
・貧富の差をなくすために、個人の年収の上限を最低額の10倍に規制する。
・ブロックチェーンを用いてお金の流れを見える化して税金逃れをなくす
・実力行使でダボス会議をのっとる
実現性の説明が足りないと思うアイデア
・狂牛病を流行らせて?牛肉消費を減らす
・ハーフアースプロジェクトで地球の半分を自然に返す
・カーボンコインを発行して環境に良いことにのみお金が回るようにする
ビットコインに価値を見出すならば、カーボンコインも有りかもしれないが、
環境に良いことの判定基準と判定する組織の維持が難しい。ここを掘り下げて欲しかった。
議論が必要なアイデア
・実力行使で環境破壊している企業経営者を脅す
・CO2を排出する飛行機を実力行使で撃墜する
Posted by ブクログ
何故、「環境省」ではなく「未来省」なのか?人間活動の制約=生存の基本、が地球環境空間であり、ここでしか生きていけないから。「生存」のためのプライオリティ付き政策集。世界中の政治家や政策担当者のための。ジオエンジニアリングから経済社会システム論まで。SFでありつつ後者に重点。斎藤幸平さんの著作を思い出します。金融資本主義から環境制約のためのコモンズとか。意識改革、勉強にはなるが、だいぶ冗長。文章は読みやすいけど、読み続けるのは正直しんどかった。とにかく、物理的に重い!
Posted by ブクログ
やっと読み終わった。
正直な感想。
後書きの、坂村健先生が、邦訳されてないので是非にと持ち込んだ企画らしい。
温暖化を中心とする環境問題に正面から切り込んでおり、海外では世界の名だたる面々が絶賛しているのだと。
初っ端、インドの熱波で、数えきれないほどの人が死ぬ。
そこで世界を環境悪化の地獄への道一直線から救おうとするのが、未来省だ。
勧善懲悪でなく、善悪で切り分けられるものでなく、リアルな世界をシミュレートしながら、話は「展開」する。
坂村先生も後書きで、欠点?はある、と言うように、リアルと言いながら美味しいところどりだし、明らかに一定の思想と国がお好きなのね、見えるところはある。
それでも読むべきだし、理系と文系分ける必要はないし、理系から文系にかけての幅広い知識が必要だから、日本で紹介されなかったんだよと坂村先生は言う。
だが正直、面白くないからじゃないかな。
環境破壊についての、かなり科学的で具体的なアイデアが示されているのは事実だが、所詮はフィクションでしょう。
その、作品としての、文学としてのところが面白くなければ、小説としていいとは思えない。
章が分割されすぎて、エピソードの羅列で状況を把握し辛く、三分の一くらい読み飛ばしても全く影響ないし、主人公のドラマが無駄でうざい。
若干の知的興奮はあるが、アイデア部分に過ぎない。
やっぱり、理系と文系の区別は、あると思いましたよ、先生。
別段、理系優位じゃありませんよ。