【感想・ネタバレ】ウクライナ侵攻とグローバル・サウスのレビュー

あらすじ

ロシアによるウクライナ侵攻。
この暴挙は明らかな侵略戦争にもかかわらず、アフリカやアジアなどのグローバル・サウス諸国の一部は、ロシアに対して明確な非難姿勢を見せず、欧米と一線を画す態度をみせている。
この分断は、グローバル・サウスのグローバル・ノースに対する不信感、さらには植民地主義時代から始まった西洋の軍事、経済による世界支配の終焉の表れなのではないだろうか。
ウクライナ戦争が浮き彫りにした、この大きな歴史的うねり・変化の深層を、ウクライナの戦場とアフリカ諸国の現地ルポを通して、NHK記者が立体的に描き出す。

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Posted by ブクログ

 ウクライナ侵攻以降、世界は混乱に陥っている。これにより、西側諸国を中心にロシアを徹底的に非難する。その一方で、アジア、アフリカなどいわゆるグローバル・サウスでは、ロシアの対応がまるで違う。このように、世界は分断化が加速している。そこで本書はアフリカ諸国に焦点を当てることで、なぜこれらの国々はロシアを非難せず、むしろ、ロシアに寄り添うのかを見ていく。
 本書にあるように、ウクライナは世界有数の食糧生産国で、とりわけ穀物は世界五大輸出国と言われるほど重要である。これが、ウクライナ侵攻によって、生産力は低下して、そのうえロシアが黒海を封鎖した影響で、食糧の高騰をまねいた。なかでも甚大な影響を受けたのがアフリカである。アフリカ地域の多くが植民地時代により、パンを主食とする習慣が身についた。つまり、アフリカの多くの人々にとって小麦は欠かせない。しかし、先ほど述べたように、輸出入の停滞で、小麦の入手が困難となり、そのせいで餓死する人もいる。
 それだけではない。過去の植民地支配から、近年では西側諸国を嫌悪する傾向が高まっている。実際、昨今では西アフリカを中心にクーデターが多発しており、親ロシア派の政権が誕生している。さらに、SNSの普及に伴い、西側諸国に関するデマが流されており、これまで以上に混沌とした状態である。そんな中、本書で紹介されたマリの政治家ボカリ・サガラのインタビューが印象深い。彼は、過激派対策が武力だけではないと説く。何よりも教育が重要で、その次に雇用が重要だという。

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2023年10月13日

Posted by ブクログ

ウクライナ侵攻後1年半後に出版されたため2024年現在よりも情報は古い部分もあるが、この進行を機に、世界の多極化、分断が始まりつつある認識は今も変わらない。なぜアフリカやラテンアメリカをはじめとするグローバルサウスはロシアに対して中立な立場をとるのか、米国の影響力はかくも小さいのか、著者の緻密な取材を通して欧米の植民地支配の歴史が大きく関係していることが分かる。世界の覇権は米国の手から遠に離れ、分断、多極化が進み、グローバル化の時代は節目を迎えているように思う。

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2025年05月10日

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