あらすじ
太宰治賞作家が描く大人の恋愛群像劇。
人生経験を積んだ大人でも、恋愛だけは不器用なまま。太宰治賞受賞作家・錦見映理子が大人たちの恋愛模様を鮮やかに紡ぎ出す。
不倫の恋に破れ、勤めていた会社を辞めた元OL・万里絵は、知らない町で夢だった喫茶店を開き、ここで穏やかに暮らしていこうと決心する。そんな矢先、店に奇妙な男が現れ、サンドイッチに難癖をつけてきた。その男・虎之介は、商店街の一角にできたパン屋のパン職人。高い技術を誇り職人気質な男だが、こと女に関してはだらしがない。二度と恋はしないと誓った万里絵、夫に先立たれ久方ぶりの恋心に戸惑う早苗、夫の浮気を許し続ける伊都子。虎之介に翻弄された女たちの人生に予想外の転機が訪れる。太宰治賞作家が描く大人の恋愛群像劇。解説は中江有里さん。
Apple Books限定先行配信・有料小説ランキング1位、ブクログデイリーランキング1位、第2回「書店員が選ぶ大人の恋愛小説大賞」ノミネート、朝日新聞、日本経済新聞、NHKでも紹介された話題の小説が待望の文庫化。
※この作品は単行本版『恋愛の発酵と腐敗について』として配信されていた作品の文庫本版です。
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Posted by ブクログ
大人の恋愛って子どものときにするそれと何が違うのだろう。
若いから傷ついても大丈夫、歳をとってからの傷は治りにくいから…というようなことを早苗さんの友人の百合子さんが言っていたけれど、若くても歳をとっても恋に傷はつきもので、痛みの具合だって変わらないと思う。でもしなければよかったと思う恋は、多分ない。痛くても傷ついても傷つけても、恋は確かに成長させてくれる。この作品に出てくる女性は、周りの人からしたらバカだなあと思われるような人たちなのかもしれないけれど、解説にもある通り最後には波を乗り越えて笑い合っているのが嬉しかった。
Posted by ブクログ
久しぶりに一気読みした本。
発酵と腐敗、それは厳密には境界線はなくて、人が食べられるか食べられないかで判断されている、と以前農大の授業で聞いた。
人間関係、特に恋愛関係を発酵に例える、というのがすごく面白いな、と思った。
最初は別々の材料だったものが、少しずつ混ざり合って、一生懸命捏ねていくうちにやわらかくなる。こまめに休ませて、水分の調整をして、そうして綺麗に膨らませることができる。
水分が足りなくても、捏ね足りなくても、発酵時間が足りなくても、どれか一つが欠けると、それっぽいものはできるけれど、美味しいパンというのはできない。
何歳になっても、その時々のちょうどいい塩梅というものを見極めるのが難しくて、だから私も恋愛が下手なのかもしれないな。
きれいに膨らんでると思っていたものでも、実は腐敗だった、なんてこともあったりして。
嫌われるのがこわい。だから、持っているものをすべて差し出したくなってしまうんだ。
どうしても譲れない、そんな大事なものを作ろうと思った。
そうすれば上手に発酵できるんだろうか。
そんなことを思ってる時点でダメなのかもしれないけど。
Posted by ブクログ
そうか、発酵というのはキュンとしたりの気持ちが育ってうれしくてがんばろ!となったりだけど、発酵しすぎちゃうとドロドロな昼ドラ的な感じになるんだな。なるほどー!と妙に納得してしまった
恋愛小説だけど、大人めです。キュン的要素はあまりないです。でも不毛な恋をしている人にはかなり響くかもしれません