あらすじ
目の前にある現実は、問題ではなく、答えである。ここから、何を、どう、考えていけばいいのか――? 大きな自然災害にしばしば見舞われることが宿命づけられているこの国に生きる、われわれの文化的・社会的な特質と、「政治化」や「官僚化」によって起こった人災としての原発事故の根本にある情理を、鋭く深く論究する。
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Posted by ブクログ
さくっと読めて勉強になった。
・地球の歴史を一年とすれば、人類の歴史は大晦日の除夜の鐘が鳴るころ
・東北、関東、中部、近畿、中国という道州制の区分は、じつは本州が複数の島に分かれていた、二千年くらい前の地質時代の反映である。これらの「州」は、四国や九州と同じように、それぞれが別の島だった。(省略)人は自然という釈迦の掌に乗っていることを思うべきであろう。
・目の前にあるのは「解答」である。
・われわれは自然を見ることによって、複雑な問いへの美しい解答を見る。じつは解答だけを見ているのであって、問題自体をしばしば考えない。
・人生の解答とは、自分の人生そのものであって、それはなにか複雑な、ややこしい問題への解答なのである。(省略)わからないのは問題の方であって、人生のほうではない。
・「参勤交代」のススメ 養老さん
・原発事故による放射能汚染は、戦後日本の自然破壊の総決算である。
・池田「若い人たちの中には、それまでの生活にもともと閉塞感を持っていて、なんとなく気持ちが行き詰っていて、そこから抜け出すために、どこかですべてをチャラにしてリセットしたいと思っていたのもいたと思うよ」
・池田「これだけの大震災に遭っても日本人が冷静に行動しているように見えるのは、日本の集団主義のようなこととある程度関係がありますよね」「そんな整然としたところが他国の人たちから称賛されたりもしたわけだけれど、それは何も、日本人が他国の人に比べてずっと倫理的で道徳的であるというわけではかならずしもないと思うよ」
・池田「リスクを分散することがセキュリティになる」
・養老「関東大震災から九十年になる。大きな地震は、いつ来てもおかしくないです」
・養老「僕は、以前から、「参勤交代」をしよう、とも言ってきた。当会の人は田舎へ、田舎の人は都会へ、です。(省略)東京から避難民が出る事態になったら、それをいっぺんに受け入れる場所なんてありませんよ」
・養老「日本は輸出入を活発にしなければならないという考えは、ほとんどノイローゼに近いと思う。このノイローゼの根本にあるのは、やっぱりエネルギーですよ。石油を買わなければいけないという強迫観念があるからです」
・池田「人間だって、タガがはずれちゃった人間と、それじゃない人間がいるでしょう。グローバリゼーションを進めているやつというのは、タガがはずれちゃっている人間ですよ。それなのに、タガがはずれちゃったほうがスタンダードになってしまったというのは、おかしな話だね。だけど、多くの人はそれがおかしいと思っていない」
・池田「福島の双葉町の辺りの地図を見るとわかるけど、町(自治体)が細かくわかれているでしょう。(省略)国は、市町村合併をどんどん進めて、へんてこな名前の市とかをいっぱい作っておきながら、一方で、原発がある町については合併させない。そのほうがコントロールしやすいからだよね」「原子力施設を受け入れた自治体というのはカネ浸けになっている。ちなみに、青森県で一人当たりの年間所得が最も高いのは、日本原燃の核燃料リサイクル施設がある六ヶ所村で、なんと一千三百万円を超えている」
・養老「文科省は最大のガンです」
・養老「えねんるぎーを使えばそれだけ楽になるに決まっている。当たり前のことなんだけれど、そのことを普通の現代人がどのくらい理解しているか。やっぱり、生き方そのものを考え直さないといけないんじゃないか。いかに健全に縮小するかを考えた方がいいのではないか」
・日本の潜在資源として期待できるのは地熱、バイオマス(藻類)、メタンハイドレートの三つであり、さしあたってはこの三つの資源開発に全力を注ぐべきと思われる。
(感想)
ばっさりを物を言うお二人の話は、迷いがなくて気持ちよく入ってきた。しっかりとした知見に基づいた上での意見なので、なるほどと思わされること多々。お二人の哲学にも共感できた。自分も「自然をコントロールする側」の一現代人として日々を過ごしているなと気づかされた。
Posted by ブクログ
復興するときにどうするかについては、金だけ出して口は出さないというのが見識だ リスクを分散させるこtがセキュリティになる 現代社会の前提として、エネルギーの増加と経済の成長は完全に相関している